お稽古について

 お稽古って一口に言うけれど、何して過ごすかは、劇によって少しずつ違いますし、考えてることはもっと違います。「うるしの沼」のお稽古について。古典やる時とかひたすら台詞の事を考えてます。古典ってなんであんなに台詞が莫大なんでしょう。1ページしゃべったら相手が一行返してきて1ページ返す、なんてホンの時は1日中台詞暗記してました。大昔は音響効果も照明効果も無いから台詞で全部説明したなんて話をなんかで読んだ記憶があります。僕が古典を演った時も薄暗い、足元だけ(くるぶしから下のみ)うっすら照らす照明の中で台詞大量に発したんですけど、なんか時空が歪むような、妙な陶酔感がありました。今の劇とはちょっと違う面白味や興奮が在ったんかもしれません。考える事が劇によって違うっつっても、ベースは同じで。手持ちの材料で、どうやって最大の効果を得ようかという事を考えます。僕は1演者で参加するのがほとんどなので、稽古場での材料といえば、もらった役のセリフ、直接絡む共演者、直接絡まない共演者、と言ったところでしょうか。まず目をつけるのは直接絡む共演者です。相手がめっちゃオモロいお芝居してくれると、僕もそれに乗っかってより高いとこに行けるんで、どうすりゃ面白く演ってもらえるかを考えます。意見も言ったりしますが、それは相当気心知れてから、そもそも意見を言われるのを好まない人もいるんで、いきなり直接的な事は言わない様に気をつけてます。今回のホンは割と不親切というか、説明が少なかったり、前提の提示が無いまま会話に入ったり、受け答えが最小限だったり、普段演ってる劇場の感覚で演技するとお客様に伝わらないんじゃねえか、といった懸念があるんで、台詞の粒立て方とか、台詞発するまでの間合いとか、受けて台詞発するまでのリアクションとか、歩き方とか動線とか、色々細々普段と違う気配りで組み立ててます。相手役の振りの台詞を自分の受けの芝居でより明瞭にしたり、自分の台詞の置き方で受け台詞を際立たせたり、台詞無いところリアクションや動きについて距離感図りながら何をするかどこまでするか、みたいな事を探ってお稽古しております。ある程度お稽古進めてお互いの手の内や演技の趣味趣向が分かってきたかなーってなったら、話し合いのタイミングが来たなと判断します。相手のお芝居に干渉する訳です。(もちろんそういうのを好まない人も居るんで。そういう時は全然違うアプローチをします。)お稽古が進んでるんで、今このタイミングで台詞発してるけどこっちに少しずらしたらどうなるかしら?とか、この場所であの一連やり取りしてるけど、こっちとこっちでやったら、とか、今こういう設定でやってると見えるんだけどもっと偏らせたらこうなるんじゃないの?、とか。でやってみて、相手も僕も演出も気に入ったら採用、惜しかったら少し変えてリトライ、ダメだったらダメだったねごめんなさい、を繰り返していきます。昨日のお稽古で思ったんだけど「偏る」って大事だなーって。キャラクターも時間の使い方もタイミングも、漫然と作ると観ても分からないものになってしまうんじゃないかなと。メリハリというか偏りというか、作為を存分に、でも気づかれない様に自然に注入しなきゃならんなあと。「偏り」で言うと、台詞の言い方は偏らせまくります。これは稽古場でなくても考えられるので、家だったり移動中だったり、スマホ触るタイミングで脚本のファイル開いては書き込みしてます。間を開ける位置とか、台詞発する前に息呑むか息吸うかとか、「、」で台詞を切るか切らないかとか、このワードの前で一間空けようとが、台詞頭に「えー」とか「あー」とか入れようとか、この台詞の前半分と後ろ半分入れ替えた方がいいんじゃない?とか、なんか言いにくい、書き換えたろ、とか。小声で台詞を発しながらファイルに鉛筆ツールで書いたり消したりしていく訳です。これも「偏り」ですね。自分だったり相手や場所含む状況にフィッティングしていく訳です。役に自分をフィットさせて行きながら、台詞を役である自分にフィットさせていく作業を行います。「偏り」です。こうやって作った台詞プランですが、稽古場ではバンバン捨てて行きます。特に短い台詞の応酬だと、相手役の台詞の発し方や呼吸、距離感位置関係諸々の影響受けて、ほぼプラン通りにはいきません。でも、事前に作った「偏り」は残ってるので、そこを拠り所にアドリブで台詞を受けて発します。動きも変わります。全部捨ててその場で1秒位で考えて変えていきます。こうやって新たな「偏り」が付け加わり、お稽古を繰り返すうちに「偏り」が積み重なって、「そういう人」と言うのがカタチになっていきます。←今ココです。昨日のお稽古から急に楽に動けるようになりました。ずっと重く押さえつけてきた重力の様なものが消えていました。「そういう人」になったんかなーと思いました。
 莫大な台詞があるお芝居ならば、台詞が入り切ったときに感じる解放感の様なものを、昨日感じた訳です。
 いやいや、正直台詞全然覚えてないやんスマホ見ながらお稽古しているやないかい!と、冷静に考えると自身、全く安心出来ない状況なんですが。
 もう一回、台詞入りきったタイミングで解放感を感じれると思うと、こりゃあお得ですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?