【松戸は単なる目的地ではなく、自分自身が踏み出すこととなったアートの旅路の出発点】LONGSTAY Program 2016 + Comeback 2019|プリン・パニチュパン
LONGSTAY Program 2016
SHORTSTAY Program 2019
その他いくつかのプログラムを通じて、PARADISE AIRでの滞在を経験したタイ・アメリカ出身のアーティスト プリン・パニチュパンから、2019年度のイヤーブックに寄せられたメッセージをご紹介します。
アーティスト・プロフィール
旅そのものとなった目的地
私が松戸の地に最初に降り立ってから、三年以上の月日が経ちました。松戸は、私をいつも呼び戻してくれる目的地であり、巡礼のように何年も通う場所でもあります。江戸川沿いを散歩したり、田中屋で天ざるを食べたり、マハメルコーヒーでシングルドリップのコーヒーを飲んだりする度に、地元に戻ってきたような居心地の良さを感じるのです。私の心を掴んで離さないのは、この街の持つ気風なのでしょうか。それとも、拠点とするアメリカとタイとを行き来する際に、日本がちょうど良いトランジットポイント(乗り換え地点)だからでしょうか。はたまた、気持ちよく迎え入れてくれるPARADISE AIRのスタッフや、訪れる度に出会う世界中から集まったクセ者揃いのアーティストたちなのでしょうか。理由はなんであれ、三ヶ月間のLONGSTAY Programは結局三年間のそれとなり、そしてもしかすると、(30年にも及ぶ?)超ロングステイ・プログラムになるような気もするのです。
いくつかのアーティスト・イン・レジデンスに参加してきましたが、PARADISE AIRのことを他の人に話すときはいつも、元ホテルだったパチンコ屋さんの上で三ヶ月滞在制作できる場所なのだと説明します。特に私が大好きなのは、部屋ごとに設けられた様々なテーマや、5階のラウンジに残る解体された壁の跡、そしてJunpeiがしつらえたDIYの家具や照明器具です。この「身の回りにあるものを最大限に活用しよう」というスタンスが、無限大の可能性やクリエイティビティを生み出す豊かな土壌を作り出しています。例えば私たちは、2019年の7月に「A Second Look」というポップアップショーを企画しました。これは、偶然にも同時期に出会うことになった7名のアーティストたちから成る展覧会でした。
このようなレジデンスプログラムがもたらす様々な効果——街の文化が活性化すること、地元のアーティストと海外からのアーティスト双方が受け取る影響、そしてプログラムやスタッフたちが体現する流動性——を実感したことで、私もそれに感化され、故郷にも自分でレジデンスプログラムを設立することにしました。つまるところ、私にとって松戸は単なる目的地ではなく、自分自身が踏み出すこととなったアートの旅路の出発点だったのです。
プリン・パニチュパン
(翻訳:田村かのこ、佐藤慎一郎 / 写真:加藤甫 2019)
原文(英語)はこちらからどうぞ。
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