【しをよむ104】辻征夫「学校」——正しいずるやすみのしかた。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

辻征夫「学校」

(田中和雄編『ポケット詩集』(童話社)より)

おかしみと気怠さが漂っています。
おふとんにうつ伏せになって「もうやーだー」って言っているような。
枕を抱えて、足もパタパタさせているかもしれません。

そうなんですよね、大人だってもうやーだー、って駄々こねたいことあるんです。
以前に使っていた『教科書で出会った名詩一〇〇』では出てこない作品です。
だって学校の先生がずる休みするお話なんですもん。

ゆうべからおなかが痛くて
医者へ行くから今日は休むと電話をかけた
もちろんおなかは痛くないし医者にも行かない

という書き出しからじわじわおかしいです。「もちろん」て。

語り手の先生が勤めているのは中学校くらいかな、という気がします。
庇護から自立への第一歩目にいる生徒たちを相手にして、エネルギーが切れたのかもしれません。

あああなんだかほんとうにおなかが痛んできたよ
だんだんずるやすみではなくなってきたみたいだけど
とにかく今日は行かないよ
ぜったいに行かない 登校拒否だ

というのもなんだかじわじわきます。
ずるやすみじゃなくなったんならそんなに行かない決意を新たにしなくても。
ひらがなも多いし、「ああ」じゃなくて「あああ」なのもポイント高いです。
だるさがものすごく伝わります。
大人になると駄々をこねなくなるんじゃなくて、駄々のこね方が回りくどくなるんです、きっと。

それから話は急展開(というほどでもないですが)を迎えます。
なんと娘さんもずるやすみ仲間に加わることに。
自分もずるやすみ真っ最中だった手前、強く言えなかったんでしょうね。

で、ふたりで散歩に行きます。
平日昼間の電車や街って、なんだかいつもよりすかすかした感じで面白いですよね。
いつもなら働いている、勉強している時間にあてどもなくフラフラするの。

最後の娘さんとの会話で、娘さんのほうがちょっと大人びて見えるのがいいですね。
帰り道にファミレスに寄ったりアイスを買い食いしたりしていてほしいです。

しみじみと、これを読んだのが年末休み中でよかったと思いました。
普通の日曜日だったら、明日出勤するのが嫌になっていたところです。
大人の全然しっかりしていないところをゆるゆると見せてくれて、
有休を取ってお外でだらだらしたくなってしまいました。

お読みいただき、ありがとうございました。

来週は大岡信「虫の夢」を読みます。

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