【しをよむ088】草野心平「春のうた」——のどかな景色とかわいいカエルさん。

一週間に一編、詩を読んで感想など書いてみようと思います。

草野心平「春のうた」

石原千秋監修、新潮文庫編集部編
『新潮ことばの扉 教科書で出会った名詩一〇〇』より)

冬眠から覚めたカエルさんの詩です。
かわいい……! 

みずは つるつる。
かぜは そよそよ。
ケルルン クック。
ああいいにおいだ。

からは、たっぷりと栄養を蓄えた雪解け水のにおいがします。
すべすべ、つるつるの泥のかがやき。
まだ飛び跳ねられるほどに体がほぐれてはいませんが、
そのぶんのんびりした気持ちで空を見ながら歌を口ずさみます。

なんとなくですが、この詩はトノサマガエルで思い浮かべています。
小さくてかわいいけれど、思慮深そうなイメージがあります……よね。
カエルにもいろいろいますが、この子はきっと日本の田んぼや池に昔から住んでいる種で、
「ケルルン クック」という高めに聞こえる鳴き声から推理すると比較的小さめな個体です。

カエルの視点は土に近くて、進むほどに草、花、水、と景色がめくるめくように変わっていきます。
陽射しがまぶしくて目がしぱしぱしたり、湿った全身の皮膚から春のにおいをくらくらするほど感じたり。

田んぼとの結びつきが強いためか、カエルってキャラクターとして愛されていますね。
鳥獣戯画とかけろけろけろっぴとか。
レインフォレストアライアンスのマークにも、スマートなカエルのシルエットが描かれていますね。
カエルにはちょっと失礼ですが、口がおおきくてユーモラスな見た目ということもある気がします。

ちなみに、私もカエルは好きです。
日本に生息している種ならやっぱりニホンアマガエル、
海外の種ならオモチャみたいな色のヤドクガエル(特にコバルトヤドクガエル)、
なんだかムイッとしたお顔のアメフクラガエルがお気に入りです。
アメフクラガエルは、ペットにすると「カエルを飼っているのか土を飼っているのかわからない」といわれるほど出てきてくれないそうですが……。

さらに詩から離れていきますが、
静岡に Kawazoo というカエル園があるそうです。
行ってみたい行ってみたいと思いながら、まだ叶っていません。
姉妹施設の iZoo もおすすめです。こちらは爬虫類・両生類専門館です。

それでは、台風も発生しているこの最近、みなさま無理をなさらずお過ごしください。

お読みいただき、ありがとうございました。
来週は山村暮鳥「一日のはじめに於て」を読みます。

当面、サポートいただいた額は医療機関へ寄付させていただきます。 どうしても稲見晶のおやつ代、本代、etc...に使わせたいという方は、サポート画面のメッセージにてその旨ご連絡くださいませ。