There is shadow where there is light.(光あるところに影あり)
家が近いからという理由で頼まれた物を買いに近所のお洒落なスイーツショップ(お菓子屋)に行く。
店に入ると、内装は言わずもがなお洒落で、小粋なマダムとかOLだとかが意気揚々と並んでおり、全体的に化粧臭い。もちろん店員も全員ケバイ。
そんな中に憤然と並ぶ俺。髪の毛はボサボサ、服はヨレヨレ。全体的に小汚い。他の人に倣って、お菓子を手に取ってみるも、何か全体的に間違えている感が否めない。
なので、「おお、俺は素晴らしい程に浮きまくっているな」と一人思っていると、前方に俺と同じ位の年齢の風采の上がらぬ眼鏡のサラリーマンを発見する。
間違いない。こいつのが浮いている。
俺の私服はファッションかもしれないが、こいつのスーツは制服。
俺のブーツは本革かもしれないが、こいつの靴は合皮。
俺の無精髭はお洒落に見えるが、こいつの髭は剃り残し。
俺のボサボサの髪は無造作ヘアだが、こいつの七三はただの割合。
そうニヤリと心の中で謳ったのも束の間。よく見ると、そいつは小袋をなんだかたくさん買っていた。色んなお菓子が詰め合わせられた小袋をたくさん。
いやちょっと待て!何それ!
もしかして、時期的に、お前まさか!?
バレンタインのお返し、とでも言うつもりですか?それ?え?
いやおかしくない?お前はそんな物を買う顔じゃない。絶対おかしい。
しかもなんでそんなたくさん買うんですかコラ。お前ふざけんな。なんかムカツク。なめんな。バーカバーカ!
余りに不条理なので、モヤモヤしながらその顛末を友人に話すと
「おそらくそれは会社などで、代表で買い出しに行かされた人じゃないだろうか?」との素晴らしい意見を賜る。
つまりそれは、毎年毎年職場で女子社員等にどうでもいいチョコをバラ撒かれ、そのお返しを一々考えたり買いに行ったりするのが面倒だと常々思っていた野郎供がホワイトデーを前に一致団結。
各々必要な数を言い合い、ジャンケンかなんかで決定した代表者が適当にお洒落な菓子をドカっと買い出しに出かけてきた、という状況だ。
なるほど!
そうに違いない!
ただ、俺の見立てだと、多分こいつ自体はひと欠片もチョコを貰ってない。
つまりジャン負けなどでは無く、先輩とかにパシらされただけだと思う。
そして立て替えた代金をちゃんと徴収できるかに関しては、五分五分と睨む。