ありがとう、スクールアイドルミュージカル
スクールアイドルミュージカルを観た。その感想。
12月13日の夜、一人のオタクが突如タイムラインで騒ぎ始めた。どうやらラブライブシリーズスピンオフのミュージカル「スクールアイドルミュージカル」が面白いらしい。ラブライブシリーズはアニメを見た程度の知識しかないが、ほう、どんなものかと、次の日の公演分がまだ販売していたので、軽い気持ちでチケットを買い、新国立劇場へと向かった。
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お、おもしろい!!あれもこれも何もかもが新しく、でも確かにあのアニメだ。あらゆる場面に驚きがあり、劇場を出る頃には何よりも先に感想を伝えねばならないと思った。よって、今から書かれることは、タイムラインで教えてくれたオタクへのお返し、或いは濃いオタクの方々に向けた実際どうなん?という問いかけである。
1.好きなとこ
お母さんズ
共感の受け皿が大人側にもあって嬉しい。群像劇の中に大人が含まれてるのいいよな…。ライブパートで二人が出てくるとこも好き、大盛り上がりだった。
幼なじみ
説明不要
演出
キラリキラ〜♪と桜女学院が踊っているステージにルリカが一緒に立っているシーンから始まって、夢であることが分かって日常に戻るあのシーン、なにあれ…
最後の椿咲花のライブのシーン。時間が止まって、アンズが葛藤の後にステージに駆け上がる演出、そんなことしていいの?
2. これはラブライブなのか?
これがすごく気になる。
主人公は誰か?
観劇前、この関係図を見て、どうも本作はダブル主人公で、メインの矢印はど真ん中の「出会い」だと思っていた。ラブライブらしくはないが、ガール・ミーツ・ガールか、楽しみだな〜、と。しかし、蓋を開けてみれば、主人公は椿咲花女子高校の椿ルリカに寄っていて、思っていたより従来のシリーズのストーリーをなぞっていたように感じた。
伝統と革新
伝統を重んじる椿咲花女子高校に通う椿ルリカの振る舞い、カリスマ性、性格はもうどっからどう観てもラブライブ主人公だし、憧れの存在がいて・無名からアイドルを目指し・強い幼なじみと共に・廃校を救う、のはいずれもラブライブであり、本筋は正に伝統的な「ラブライブ!」のミュージカルだった。
一方で、革新を目指す滝桜女学院サイドでは、今までは描かれてこなかった、憧れの存在側にもスポットが当たっており、追いかけられる側のプレッシャーというもう一つの軸が、正に「ラブライブ!」シリーズにはなかった新しい風=革新、だったように感じる。
この意外性、つまり、ラブライブじゃないだろ、と思ってたら思ったよりラブライブだった、でも新しいラブライブでもあった、というのが、初見でとても面白かった。
3. ライブパート
カーテンコールスペシャルステージと称して、ライブパートが存在している。予習をしなかったのもあって、正直ライブパートにはあまり期待しておらず、なんとなくキンブレを振るのだろうなと思っていた。が、その予想は覆された。
ああ、私にも与えられた役があったのですね
面白かったのが、舞台に用意されているのは、紆余曲折あって結成されたアイドルグループの初披露ステージであり、その上で演者は公演を行い、観客はそのお客さんである、という点。ステージから客席に向けてパフォーマンスが行われる以上、観客は初ライブを応援するファンを演じる必要があり、それによってミュージカルは完成するのである。なんて素敵で優しいライブなんだろうか。観客には、キンブレを振る明確な理由が与えられるのだ。
よく考えてみれば、ライブ自体は今まで上映されていた劇と何ら変わらず役を演じているだけで、観客は真顔で観ていてもいいわけである。にもかかわらず、役を演じなければならない気持ちになるあの仕組みは、演劇ならではだし、初めてメタフィクションの仕掛けを持ったゲームを遊んだ時の感動に似ていた。スクリーンと舞台は似て非なるもので、演劇が元々メタフィクションな性質を備えているというのは聞いてはいたが、身をもって実感した。
成長実感ライブ
アイドルの成長を描いたアニメとキャストによるライブの間に壁があった今までのシリーズと異なり、ミュージカルではキャストによる成長物語が展開され、成長後のキャストによるライブが行われる、しかもそのフィクション空間に観客も存在できる、というのがとても面白かった。どの形態よりも、入り込みやすいんじゃないかと思う。フィクションを2次元、現実を3次元とするなら、2.5次元という表現はとても的を得ていると思う。
…どうなんですかね?
おわり