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学芸員女子大生のキロク📖ルイーズ・ブルジョワ展_森美術館

2025年1月19日(日)までだったため、すでに終わってしまいましたがかなり衝撃を受けたのでキロクしようと思います。

森美術館へと続く階段から見る天井

まずこの展示の副題は「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」。

行く前のイメージは厳しい環境の中でもブルジョワが力強く生き抜いた背景をもとに生き生きとした活力✨をもらえるような展示でした。

しかし実際に展示を目にした感想は「よく素晴らしかったなんて言えたな…めちゃくちゃ荒れてるじゃん…」といったものでした。

副題の引用元である晩年の作品

まず本展示のアーティストについて説明しますね。

ルイーズ・ブルジョワ(1911-2010)は第一次世界大戦、第二次世界大戦の2つの大戦を乗り越えてきました。厳しい時代でありながら、比較的裕福な家庭に生まれ育った彼女。

ではなぜ作品を見ただけで一来館者が「荒れている」と感じたのか。

それは、彼女の幼い頃のトラウマや家族に対する複雑な感情を荒々しいと感じるまでに直接的に表現していたからです。

第一次世界大戦後、彼女の父親は家庭教師と不倫しますが母親は沈黙を貫きました。そんな中母親は20歳で病死し、ブルジョワも自殺を図りますが父親に救われます。

この作品は腕や耳、頭部など本来1つであるものがバラバラになっており彼女が不安定な心理状態であったことがわかります。正直序盤ですでに辛かったです。

《かまえる蜘蛛》(2003)

蜘蛛は母性を象徴するモチーフであり、獲物に飛びつく準備をするような姿勢をとる蜘蛛は子供を守る側面と、危害を加える者に対して攻撃する暴力的な側面という、母性の相反する側面を表現している。

美術手帳

正直この部屋に入ってゾクッとしました。奥のスクリーンでブルジョワが叫びにも似たような歌を歌っている映像が流れていたからです。歌のような叫びなのか私にはわかりませんでしたが、それほど彼女が精神状態を作品へ昇華させる能力が高かったことがわかりました。



私はいつも展示を見るときに「この展示はどのような趣旨で企画され、何を伝えたいのか」を考えるようにしています。

しかし本展示のメッセージは考える間もなく向こうからダイレクトにやってきました。

「作品で表現しないと家族を攻撃してしまいそうだった」と語る彼女の痛々しさは実は共感する人も多いのではないでしょうか。

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