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メタノールナイツストーリー14 Blue

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第十四章 リア充は爆発しない

「感謝の印に、本名教えてくれないかなぁ?」

 それまでの夜叉女のような闘い(というより、一方的な殺戮だったが)とは似つかない表情と態度で、女アサシンは僕に迫ってきた。

「は! え!? あの、僕の?」

「他に誰かいるぅー?」

 つ ーーーっと、僕の鳩尾から顎までを人差し指で撫でる。

 いや、柚葉がいるけどね......

 僕の左腕を胸に抱きとめ、かなり小柄な体で見上げるように、少し潤んだような瞳で、女アサシンは僕を見つめる。

 もにゅっ♡

 僕の左腕は、アサシンの胸部装甲に完全に埋もれている。

 いやしかしなんですかこの質量は......圧倒的じゃないかッッ!!

 メタストは、オクトパスのハードウェアスペックをフルに活用した初のコンテンツであることもウリの一つだ。没入感の高いゲーム体験もさることながら、オクトパスが持つエコー機能を使った簡易頭部スキャン機能により、性別の詐称がほぼできない仕様となっている。主に『眉弓』と言われる部分で男女を判別しているらしいのだが、更にメタストは、アカウント作成の際、『アカウント登録キット』という無料配布のキットで頬裏の唾液と組織のサンプルを取った上で、いまどき郵送という方法で運営に送り、引き換えに認証パスが、これまたいまどき郵送で届くという徹底ぶりだ。つまり、メタスト内に『ネカマ』は存在しない。遺伝子とか骨格レベルの話なので、トランスジェンダーな人とかはこの限りではないけど。

 目の前のこの魔乳さんも柚葉も、ほぼ間違いなく生物学的な意味での『女』というわけだ。なにこのラノベ。発売日に店ごと買い占めるレベル。

「あ、僕はた------」

 蠱惑的な雰囲気に呑まれ、僕の口がふわふわと言葉を紡ぐ。アサシンのスキルにチャーム(魅了)なんてあったっけ?

「待て!」

 ふわふわした空気に冷水をブっかけるような冷えた声に、一気に我に返る。

「こんな簡単に本名教えるってないでしょ。たかが一回助けられたくらいであんた信用しすぎ。ちなみに、本名聞くのはどうかと思うわよ」

 柚葉からの一般メッセージのテキストが、僕の1m程前の空間に表示される。

 一般メッセージは、受け取った本人以外にも、有効視認範囲内(約6m)のキャラクターには見える仕様だ。僕の左腕を乳間に挟んでしなだれかかっていたアサシンの女が、それを見て小さく

「......チッ」

 と舌打ちをする。うーん、色々とダダ漏れてるなぁ......

「私、リードルって言うんですぅ。パーティに入れてもらってもいいですかぁ?」

 変わり身も早い。なかなかいい性格をしているようだ。

「お断りするわ」

 柚葉は応えた。うん、まぁ、そう言うと思った。

「あ゛ァ!? なんで! 助けてあげたじゃん!!」

 わーい、なんか剣呑な空気

「それについては感謝しているし、さっき多少なりとも埋め合わせはしたでしょ? それにね、あなたを手放しで信じるには、ちょっと薄弱な理由よね」

「どういう意味かしら?」

「あなたがあの連中とグルである可能性を疑っている、という意味よ」

「はァ!? PKペナルティつけてまで助けてやったのに、何その言い草!!」

「頼んだ覚えはないわね」

「うわ! 性格悪ッッ!! あっそ、じゃあいい。別にあなたと同じパーティーである必要もないし…...」

 ちら、と、上目遣いに意味ありげな瞳を僕に投げかける。

「あなたのパートナーさん、コミュ力に難があるわね。 ね、アタシに乗り換えない?」

 バチーンと音がしそうなウィンクをかましつつ、アサシン系女子は僕をスカウトした。

「ストレージ共有に、ちょぉーっとレベルの高い狩場での用心棒、お望みなら……夜のお相手もしてもいいけど、どう?」

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