困窮してみた No.2.5.〜ヤムチャポジションで生きていくという覚悟〜
今回起こった出来事を告白するにしても、これまでの生き方から脱却し、新しい生き方を考えるにしても、邪魔になったのは、旧来の『男らしさ』や、『男というシステム』の、強すぎる洗脳だった。
保守とリベラルを行ったり来たりしてきた(そして未だにフラフラしている)ものの、基本、どちらかといえばリベラルで、『男は□□であるべき・女は○○であるべき』という「べき論」が本当に大嫌いで、ジェンダーフリーを標榜していた僕の中にさえ、「それ」は根深く存在していた。
・家計の主たる稼ぎ手でなければならない。
・「上昇」を志向せねばならない。
・図太く強く、護る側の存在でなければならない。
・稼ぐお金の額=その人の価値
こういった旧来の「男らしさ」に自分が囚われていることを認めること。
まずは、その段階から始めなければならなかった。
これは、「自分はジェンダーによる役割の固定に否定的だ」と自認していた自分にとって、そうできていなかった自分を認める=これまでの自分を否定するところから始まる作業となり、大変な苦痛を伴った。僕は嘘をついていました、と、認めなければならなかった。
弱い自分を認めるということ、「弱くていい」と自分を赦すことを、「甘え」と一喝する向きもあるけれど、それは自分がこの世界で『ヤムチャである』ことを認めることでもある。
『ラクでいい』と割り切るのは、簡単なようで、割と難しい。
プライドは捨て時が肝心ではあるけれど、とはいえ捨てきれない尊厳もある。
ことに、「男」というシステムの中で生きてきた人間にとって、自分が戦力外であることを認め、積極的な経済的貢献を行わない(行えない)、ヤムチャ(非戦闘員)ポジションで生きていくということ、更に、プーアルやウーロン(保護対象。国や自治体の支援を常時必要とする状態で生きること)ポジションも想定しなければならないのは、屈辱的であることは否めなかった。
いま現在の僕は、『ギリギリヤムチャ、下手こいたらウーロン』という状況なので、なるべくウーロンポジは避けたいなぁと思いつつ、最悪そうなっちゃったら、速やかに福祉に繋がれるよう、社協とのつながりを残してある。
ヤムチャだろうがウーロンだろうが、それでも生きていかねばならないのだ。
種としての淘汰は致し方ないとしても、個としての自分の寿命はもう少しありそうだし。
『育児中だ』、『介護の必要な家族がいる』、『心身の問題がある』
等々、生産世代の中でも、様々な理由で、残業を含む長時間の労働ができなかったり、就労自体が難しい人も、結構多い。
団塊世代の要介護率が上がっていけば、その割合は更に上がっていくだろう。
政府は「介護は家で」「子育ては家で」を原則としたがっているようだが、仕事とそれらとの両立はどう考えても不可能だ。
総務省統計局の、平成30年7月31日の労働力調査の基本集計の資料によると、日本の就業者数は、約6687万人。
同じく総務省統計局の平成30年7月1日の段階でのこの国の総人口は、約1億2659万人。
半数弱の約6000万人は、非就労の非戦闘員ということになる。
そこには、リタイア世代や学生生徒のような、生産を終えたorこれから生産するプーアル・ウーロンポジの者もいれば、否応なく『故障してしまった』個体も存在するはずで、『働かざるもの食うべからず』論を過剰に振りかざすならば、国民の半数を切り捨てるお話になる。
これから必要とされるのは、ヤムチャがヤムチャなりに、自分の食い扶持くらいは無理なく稼いでいける仕組みや、保護対象であるプーアルやウーロンが、肩身の狭い思いをしなくて済む社会であって、ヤムチャに悟空や悟飯なみの働きを求めたり、界王様やカリン様を前線で戦わせるような無茶をさせたり、あまつさえそれを「根性」なる謎の理論で乗り切らせようとする愚を再生産せず、より柔軟なお金の稼ぎ方≒働き方や、それぞれの立場をリスペクトできる『空気の醸成』にほかならないと思う。
僕の周りには、僕自身やおよめさまを含め、病名の有無問わず、何らかの精神疾患をお持ちの方や、障害者手帳をお持ちの方が多い。
この2〜3年程、とみに思っているのが
たかだか「生きる」程度のことのハードルが、なんでこんなに上がってるんだろ?
ということだ。
『野生生物はもっと過酷だ』、『戦時中は生きるのに必死だった』、『途上国は〜』と仰る方が時々いらっしゃるけれど、我々は野生生物ではないし、現代は戦時中ではないし、本邦は衰退しかけているとはいえ、まだ一応先進国だ。
モノもサービスもほぼ極限まで有りあまり、技術革新によって『必要な』労働は逓減の一途をたどっている。
人が人として生きる上で避けられない生老病死の『苦』は仕方ないにしても、わざわざ国民総出で、『一億総ガマン大会』『一億総空気読み大会』みたいなこと、もうしなくてもいいんじゃないだろうか?
この妙に息苦しい『空気』を換気してやったら、死ななくて済む人も増えるんじゃないだろうか?なにより僕自身が、もうこの『空気』の中でやっていくのに疲れてしまった。
ということで、僕は『べき』の呪縛を解き、ヤムチャを目指す覚悟を決めました。