カエルの子はカエル、カエルの親もカエル。じゃあ、風の親は風か?
エヌ氏は、川の堤防で風に吹かれていた。春の気持ちよい風だ。部屋で扇風機の風を受けるのとは大違いだ。そういえば、この風はどこからくるのだろう?あっちのほうに大きな扇風機みたいのがあってそこからくるのだろうか?童話の北風と太陽みたいに、なにかふぅーっと吹く何者かがいるのだろうか?どうしても知りたくなって旅に出た。
西へ西へ。どこまでも西へ。風は相変わらず吹いているのだが、それを発生させている”何か”にはなかなか出くわさない。
「もっと遠くのほうにいるのかな」
さらに西へ西へ。どこまでも西へ。あたたかい風だったのが、いつの間にかひんやり冷たい風に変わってきた。かなり遠くまできたが、まだ風の親には会うことができずにいた。
エヌ氏は一度不思議に思うと、とことん突き詰めるタイプだった。何とかして風の元をみてみたい。風をイメージして、ふと、昔みた宇宙もののSFを思い出した。そういえば、宇宙船のハッチを開けると宇宙空間に向かって「風」が吹いていたような。あの風はどこから生まれたのだろうか?宇宙船の中に巨大な扇風機は無かったな。うーん、、、。
宇宙船の中には大気があり、気圧もある。外にはなにもない、気圧もゼロ。山の高いほうから低い方へ川の水が流れるように、大気も気圧が高いほうから低い方へ流れる。ということは、風って結局、”大気の流れ”か。そこで、今の気圧配置と風向きを比べてみると、じゃじゃーん、ぴったり合う!なーんだ、風の親は風ではなかったのか、気圧差で生じる”現象”であって、「風」というものが実在して存在しているわけではないのか。