県境またげば違う国
以前大阪と東京の違いについて簡単に書かせて頂いたことがあったのだが、冷静に考えて、こんなにも小さな島国の中の直線にしてたかだか約400kmごときの距離で、こんなにも文化やら言語やら人柄やらが変わるもんかねと、今となってはそれがごくごく当たり前となった日常にいささかの疑問を抱いた。
いやまあ気温であるとか、そういったどうしようもない環境からくる生活習慣の違いに関してはもちろん納得はいくのだが、全員が全員そうではないというのは大前提として、例えば沖縄の人が時間にルーズであるとか性格がのんびりしているだとか。
本州から離れた位置にあろうが、人柄自体が本州の人間と大分異なったものになるという事実が不思議でならないのである。
穏やかでキレイな海に囲まれているからなんて理由だけでは全く納得がいかない。だって沖縄めちゃめちゃ台風来るじゃんとか思ってしまう。台風めちゃめちゃ来る地域に住んでいたら、むしろ危険に対して常に気を張るような人柄が増えるのが自然な考え方ではないのだろうか。逆に、あまりにも台風が来る為に、ちょっともう気にしてたらキリねえなという考えから今のような穏やかな人柄が生まれたのだろうか。
どちらにしろ、100歩譲って時間にルーズになる必要は全くないはずではないだろうか。何度も言うが全員が全員そうではないというのは百も承知のうえである。
そんなこと今さら言っても仕方のないことであるし、そもそも文句を言っているわけではないのだが、家庭によって性格や人柄が変わるのは至極当然のことであっても、地域によって変わってくるという事実には簡単にああそうですかとはならない。
とは言っても、この事実が変わるわけでもないし変わって欲しいわけでもないので、本当にふと思ったことを言っているだけなのだが、この事実に基づいて考えると、そりゃ外国と日本なんてまるで違うに決まっているかと、矛盾しているかもしれないが国内の地域性の違いから学んだ不可思議を武器にすると、もっと大きな尺度の問題に関しては簡単に府に落ちるのである。
僕は英語が全く喋れないし、まずそこまで外国人の方と絡むこともないので、これこそ一概に決めつけることなど出来ないのだが、周りにいる外国人の要素を持つ方と接してきた結果を前述の考えと照らし合わせてみると、なるほどこれは仕方のないことであると納得することが出来るのである。
まずは帰国子女と呼ばれる方々。
お寿司屋さんでバイトしていた時に一緒に働いていた上村さんという帰国子女の女性がいたのだが、彼女が1週間程のアメリカ旅行から帰ってきたときのこと。
営業中にアメリカの思い出をたくさん話してくれた彼女は、その代わりに少し困ったことになったと言うのだ。
日本語がパッと出てこなくなった
アメリカに行ったことは1度もないのでわからないが、帰国子女とはいえたかだか1週間でそんな状態になるものなのかという感情を圧し殺しながら営業へと戻る。
すると彼女はお客さんの注文を受けた後、頭を抱えながら僕の元にやってきて、
今注文受けたんだけど、なんだっけあの鶏肉を油であけだやつ
と質問を投げかけてきた。
まさかとは思ったが、
えっ…鳥の唐揚げのこと?
と返すと、
イエスイエス!テンキュウ!
と、僕が彼女のマイナンバーカードをホームレスに売り捌いてもギリ対等にはなれない程のストレスを与えた後、彼女は、今日はもう日本語は無理かと微笑み最後の質問を投げかけてきた。
今日だけフライドチキンて呼んでもいいかな?
いいわけないのである。
そもそも調理法が違うのだから。あと寿司屋だし。
ただこれに関しても、大国アメリカの自由さから、細かいことを気にしなくなった人柄なのだと、しぶしぶながら納得することは出来た。
また、同期の元ゲオルギー吉川という帰国子女芸人にも同じことが言える。
僕らがまだ組み立ての時の新ネタライブでのこと。
初めて一緒になる先輩も多い中、なかなかネタが出来なく全く余裕がなかった僕らは、先輩に対しての挨拶を完全に忘れていた。
すると、どうやら先輩の、お前らの同期挨拶しないなといった話を耳にした吉川は、良かれと思って僕らにその事実を伝えにきた。
君たちさ、折角先輩と絡む機会が出来たんだから、悪いことは言わないから先輩への挨拶はちゃんとした方がいいよ
ここまではぐうの音も出ないくらいの正論なのだが、問題はその後であった。
先輩も君たちのこと、あいつらめっちゃ気持ち悪いなって言ってたよ
確実に伝えなくていい事実である。
その先輩が言っていたとしても、挨拶とは関係ない事実を伝える必要は全くないのだ。
だがこれも、細かいことを気にしない外国の風潮を考えるとどうにか納得がいくのである。
そしてハーフ芸人というくくりにカテゴライズされる芸人さんからも、所謂日本的な考えでは辿り着かないような言動を見せる場面が見受けられる。
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