シュートエリアから見えるNBAチームの特徴
現代バスケではシュート効率が非常に重視される。期待値の高いシュートを積極的に打ち期待値の低いシュートはできるだけ打たないようにどのチームも戦略を立てている。その戦略が最も表れると思うのが「シュートエリア」だ。今回はシュートエリアのスタッツに注目してみる。
スタッツの見方
NBAのスタッツはnba.comの公式スタッツページで見ることができる。いろいろ載ってるのでぜひ。
今回はこの中のTeams Shootingのスタッツを紹介していく。1試合あたり〇〇フィートから何本シュート打っていてそれがどのくらいの成功率かのデータだ。フィートは分かりにくいのでDISTANCE RANGEをBy Zoneにしてエリアごとのデータを表示させる方が見やすくておすすめ。
エリアごとの表示にしたとき、左から順に制限区域、制限区域以外のペイントエリア、ミドルレンジ、左コーナースリー、右コーナースリー、その他の3ポイントのスタッツが並んでいる。
効率が良いと言われているエリアが制限区域とコーナースリーで、効率が悪いと言われているエリアがミドルレンジと制限区域以外のペイントエリアということに注目すると各チームの特徴をデータから捉えやすくなると思う。
また、このスタッツを見るときに意識することは「実数値」ではなく「リーグ順位」だと考えている。実数評価は基準次第で評価が変わっちゃうので相対評価で他のチームより多い少ない、成功率高い低いを目安にしたい。
では実際にスタッツを見ていく。今回は特徴がはっきりしている2つのチームを見てみる。
ヒューストンロケッツの例
スーパー3ポイントチーム、ロケッツを見てみよう。
分かりやすいようにスタッツとリーグ順位をまとめておいた。
表の補足をすると、試投数のリーグ順位はトップ10なら赤字、ワースト10なら青字にしてある。
エリアごとの期待値はそのエリアで1本シュート打った時に何得点が期待できるかの数字(これは自分で計算しました)で1.000以上なら赤字、1.000未満なら青字になっている。
この表からどういうことが分かるか。
まず目立つのはやはり3ポイントだろう。全てのエリアで試投数がリーグ1位だ。また、3ポイントの中でもコーナースリーになると成功率がグッと上がることも分かる。
このデータから、その他3ポイントのエリアでシュートを最も打つのは厳しいマークを受け続けるハーデンだから成功率が低めなのかも、など仮説を立てられる。
では2ポイントはどうだろうか。ミドルレンジでの試投数がリーグ最少である。ペイントエリアに目を向けると制限区域ではリーグ8位とそこそこ多く試投しているのに対してその他では途端にリーグ最少だ。
この試投数をエリアごとの期待値と照らし合わせてみよう。
(ここでもう一度同じ表の画像を貼っておきます)
赤字と赤字、青字と青字がきれいにリンクしている。期待値の高いエリアの試投数が多く期待値の低いエリアの試投数が少ない。つまり、
徹底的に期待値の高いシュートにこだわっている。
このデータがロケッツが超データ主義のチームと言われる最たる所以だと思う。究極の効率を目指すとロケッツのようになるのかもしれない。
サンアントニオスパーズの例
ロケッツとは対照的なチーム、スパーズを見てみよう。今度もスタッツとリーグ順位を表にまとめておいた。
試投数は3ポイントと制限区域がかなり少なくなっている。一方ミドルレンジとその他ペイントエリアでの試投数は多い。見事にロケッツと逆だ。おもしろい。
成功率に注目してみる。3ポイントの成功率が高い、ということは試投数が少ないからといってスパーズの3ポイントをナメていたら痛い目を見るかもな、といったことを考えることができる。
エリアごとの期待値と照らし合わせてみよう。赤字と青字、青字と赤字が互い違いだ。期待値の高いエリアの試投数が少なく期待値の低いエリアの試投数が多い。つまり、
期待値にそこまでこだわっていない。
ただ、当然あえて期待値の低いシュートを選んでいるというわけではない。じゃあなぜこのようなデータになっているのか。それは、
スパーズは選手のプレースタイルを大事にしている。
ということだと思う。
スパーズのエーススコアラーはミドルレンジを主戦場とするデマー・デローザンとラマーカス・オルドリッジ。2人のプレースタイルをまず尊重した結果、自然と期待値の低いミドルレンジの試投数が増えた。
シュートエリアでは非効率的に見えるスパーズのオフェンスだがオフェンスレーティングはリーグ11位。普通に高い成績。名将グレッグ・ポポビッチの手腕だろう。
どっちも正解?
ロケッツとスパーズを比較した結果、データ重視のロケッツと選手のプレースタイル重視のスパーズとで対照的なシュートエリアのデータになっていることが分かった。ただどちらのチームもオフェンスレーティングで上位の成績を残している。正解は一つではないようだ。
最後に
今回、シュートエリアのデータから各チームのオフェンスの特徴を読み取れることが分かったと思う。何を重視する戦術なのか、どのエリアでのシュートが得意なのか苦手なのか、ではどういうディフェンスがこのチームには効果的なのだろうか、など深く考える手がかりをこのデータは教えてくれる。ぜひ注目してみてほしい。
今回は以上です。
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