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尾瀬のミニ観察~第13回~

前回は、「ミズバショウの花」を紹介しましたが、今回は「コオニユリの雄しべ」についてご紹介します。

(13)「コオニユリの雄しべ」

 夏、湿原でコオニユリのオレンジ色の花が咲くと、キアゲハが訪れて蜜を吸い花粉を運ぶ。
 雄しべは、ゆるい曲線を描いて花の下にのび出た花糸の先に、濃いオレンジ色の花粉を出す葯をT字形つけている。その葯はゆらゆらと揺れやすく、電気掃除機の吸い込み口のようだ。掃除機の吸い込み口が床に平らに接するのと同様に、葯はチョウの羽が触れたとき、ピタッと羽に接して、粘りの強い花粉をつける。私は「これはチョウ汚し機だ」と言っている尾瀬ヶ原が最も美しいのは雨の日だ。そして植物たちは晴れた日とは違う振る舞いを見せてくれる。

筆者紹介
田中 肇(たなか はじめ)
フラワーエコロジスト
専門は花生態学
著書は「花と昆虫がつくる自然」(保育社 尾瀬の花の生態を多く取上げた)、「花の顔」(山と渓谷社)ほか多数

(2012年1月発行「はるかな尾瀬」より抜粋)

次回は、「ヒメシャクナゲ」についてご紹介します!