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インディアン・スパサラダ─ターメリック=ウコンの潜在力を日常に
小学校時代の給食に「インデアンサラダ」というのがときどき出た。スパゲッティと野菜(玉ねぎやにんじん)を、マヨネーズとカレー粉で和えたもので、好きなメニューの1つだった。
「インデアン」というのは、もちろんカレーの本場インドのことなのだが、当時の小学生は、西部劇に登場する羽飾りをつけたアメリカ先住民=インディアンを頭に浮かべた。そのころの西部劇ではインディアンはいつも悪者で、白人のヒーローに撃ち殺される運命にあった。白人が先住民を虐殺した侵略者であったことを映画が描くのは『ソルジャー・ブルー』(1970年、日本公開は翌年)を待たなければならなかった。
話が脱線してしまった。インデアンサラダのことだ。家庭でカレーをつくるのに、固形のルーを使うことが多くなったけれど、自分でつくるときは、少し本場風になるようにコリアンダー粉、クミン粉、ターメリック粉を別に加えている。だいぶ前になるが、インド料理店のシェフ(インド人)を呼んでの料理教室に参加したとき、この3つのスパイスをかなり大量に入れると、本格的な風味になることを知った。それまでも市販の固形カレールーにこれらを足してはいたが、振りかける程度。インド人シェフは、数人前の分量に大さじ2杯ずつくらいを水で溶いて入れていたのである。ちなみに先に水で溶くのはダマになるのを防ぐためだ。
いまも固形ルーを使ってはいるが、それは規定の分量の半分程度にして(2人前なら1かけ)、スパイスを足して風味を出すようにしている。理由はもう1つある。減塩だ。市販のカレールーはかなり塩分が多いのである。
使う固形ルーを半分にすれば単純に塩分量も半分になる。玉ねぎも1個みじん切りにしてじっくり炒めることでうま味と甘味が出る。さらに夏なら庭でとれたトマト、冬なら水煮トマトも煮込む。固形ルーが半分でも味は十分に濃い。ここまでやるなら固形ルーを使わなくてもいいんじゃないかと突っ込まれそうだけど(笑)。
カレーに色と風味を与えるターメリック=ウコンは、ショウガ科に属し、根茎を干して粉末状にしたものが利用される。原産地のインドでは古くから栽培されており、インドの伝統医学アーユルヴェーダで紀元前から薬用に用いられていた記録があるという。ターメリックの色素成分はクルクミンというポリフェノールで、抗炎症・抗がん作用について数多くの報告があり、がん治療薬として注目されている。ほかにも、肥満、メタボリック症候群、2型糖尿病、アレルギーや自己免疫疾患、うつ病、アルツハイマー病などに効果が認められたという報告がある。クルクミンには腸内細菌に働きかけその多様度を上昇させる働きがあり、腸管バリア機能を健全に保つことに役立つようだ。ただし、日本医師会は「食事に含まれる量では安全と思われるが、クルクミンの過剰摂取や長期にわたる摂取は消化管障害を起こすことがある」として注意喚起している。ほどほどがよく、摂りすぎは禁物ということ。
スパゲッティは有機全粒粉小麦と水だけでつくられたものを使っている。全粒粉小麦には食物繊維やフェルラ酸などのポリフェノールが含まれる(=取り除いていない)。これらもまた腸内細菌叢のバランスを保つのに役立つ成分だ。玉ねぎ、にんじんには食物繊維、ビタミン、ポリフェノールもたっぷりだ。庭のプランタに植えたイタリアンパセリの根本に、少しだけ青い葉が縮こまっていた。わずかだがそれを刻んで彩りにする。冬のパセリは鮮烈な香りと味がする。
●レシピ
<インディアン・スパサラダ(2~3人前)>
① 玉ねぎ 中1/2個
② にんじん 中1/3本
③ イタリアンパセリ 少々
④ 全粒粉スパゲッティ 50g
調味料
レモン汁 大さじ1
マヨネーズ 大さじ2
ターメリック 小さじ1
ガラムマサラ 小さじ1/2
塩コショウ 少々
A ①はスライス、②は千切り、③は荒くみじん切りにする。
B スパゲッティを1/4に折って熱湯で規定の時間ゆでる。
C ゆで上がったスパゲッティのお湯を切り、熱いうちに玉ねぎ、にんじんと混ぜ、調味料を加えて全体をよく和える。
D 最後に③を加える。
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