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部屋が散らかっているのはそんなにダメなの?
僕は部屋を整理するのが苦手です。前回も書きましたが、僕が『まだ結婚できない男』の主人公・桑野と全然違うポイントのひとつです。これまで整理術みたいな本を読んだこともあったし、部屋の片付けにトライしたこともあったのですが、いっこうにうまく行きません。
しかし一方で、「そんなに整理整頓が大切なのか?」という気もするのです。部屋が散らかっていて困ることがあるかというと、そんなにないのです。たまに「あの本どこだっけ」と探すことはありますが、基本的には支障なく生活できています。それよりは部屋が散らかっていることが自分のダメさの表れのような気がするという心理的な問題の方が大きい気がします。
そんなとき出会ったのがこの本です。「クリエイティブと日課 KEEP GOING」(オースティン・クレオン著)。
(※写真左は原書。この本はレイアウトやデザインが原書と同じになっています。比較しやすいので英語の勉強にも便利です)
この本はクリエイティブに生きるためのヒントが色々と書いてあるのですが、特に片付けに関して書かれた部分に感銘を受けたので、今回はそこに絞って紹介します。
散らかっていてもいいんだ!
この著者は「僕は散らかっている状態が好きなんだ。散らかっている状態をわざと作っている」と言います。その理由を次のように説明します。
「創造性とはつながりだ。そして、すべてのものを本来あるべき場所に収めていたら、つながりは生まれない。新しいアイデアは、モノとモノの意外な組み合わせから生まれる。そして、意外な組み合わせは、モノが本来とは違う場所にあるときに生まれるものなんだ。」
「生産性と創造性を同一視するのは間違っている。2つは同じじゃない。いや、むしろ2つは反比例することも多い。生産性が低いときほど創造力が膨らむなんてことはよくある。」
確かにクリエイティブな仕事は、ぼんやりと考えたり悶々と悩んだりという時間が結構多い仕事です。そういう状態は客観的に見るとサボっているように見えます。しかしそういうときこそ脳の中で重要なことが起こっているのであって、創造にとって必要であることは僕も身をもって知っています。
ぼんやりと考えたり悶々と悩んだりという状態のときには、周囲には本や資料などがきちんと片付いているより散らかっていた方が創造性が膨らむということでしょう。(これはあくまでクリエイティブな仕事の場合で、経理の仕事をしている人が机が散らかり放題ではまずいのかもしれません)
整理するのは「迷ったとき」
しかし著者は絶対に整理をするなとは言いません。考えに行き詰まったとき、その状態から逃れる「建設的な先延ばし」として整理は有効なのです。確かに僕も整理は苦手と言いながら、仕事からの逃避として整理を始めることがあります。
こういうとき、脳がリラックスして何か新しいアイデアが浮かんだり、埋もれていた何かを発見したりできると著者は言います。
「僕が整理するのは部屋をきれいにするためなんかじゃなく、すっかり忘れていたけれど今なら使える何かともういちど出会うためなんだ。」
本を整理しようとして、つい手に取った本を読みふけってしまうことがあります。整理という目的が停滞してしまうので、それは一般的にはダメなことされています。しかしこの著者はむしろそれを奨励しているのです。
散らかった部屋は「外部脳」
ここからは僕が思ったことです。
「外部脳」という考え方があります。単純な例では、メモ帳は頭で覚えようとしても忘れそうなことを、書くことによって脳の記憶を補完するもので、外部脳の働きをしています。考えを整理するために図を書いたりするのも、視覚的に見える形にすることで考える行為を助けるもので、図を書いた紙は外部脳と言えます。
そう考えると、散らかった部屋もある種の外部脳と言えるのではないでしょうか。その混沌とした中から、忘れかけていた何かと再会したり、何かと何かが出会うことで新しいものが生まれたりするのです。これはまさに脳の中でいつも起こっていることで、散らかった部屋がそれを助ける働きをすると言えます。
雑然と本棚に並んでいる、読んだけど中身は忘れた本たちも、立派な外部脳だと言えるのかもしれません。