中学に向かう エリカ。
いつものクロスバイクに、バックパックを背負っている。
ほとんどの同級生が、カバンを持って通学する。
弟も同じ中学。
私は3年生。
そういえば、高校どうしようか?
夏休みに入る最終日に、先生からも言われた。
「あ〜 エリカ。高校どうするの、
お父さんは何て言ってる。
今の成績だと、私立しか無理だ。
ま、近くの商業高校もあるけど、
夏休み明けに決めないといけないからな」
と言って、去っていた、その後ろ姿が、語っている。
『ま、オレには関係ないけど・・・』
そう、関係ない。
学校の階段を駆け上がり、3階の 美術室 に駆け込む。
入ると、先生が絵を描いている後ろ姿が目に入る。
「先生。 これ、昨日できたんや。みてみて」
と言って、【グー】の形にほられた、
高麗石(コウレイセキ)を手に持って見せる。
「お〜。いいね〜」と言って、そっと エリカの手 から彫刻を持ち上げて、
しげしげとみて、触って、感触を確かめている。
数分、ガマンするエリカ。
先生は今まで見たこともない笑顔で エリカ を見ながら言った。
「これは、すごい。
力強いね。
それに、暖かさと冷たさ の両方が伝わってくる感じ・・・」
と、うなずく先生。
何回もうなずきながら、そっと、エリカに返す。
ものすごく大切なものを両手で包むようにしながら。
そして、「な、 エリカさん これ、今度の市民展示会に出そうよ。
きっと、みんな関心する。
間違いないな」
と言いおわるかどうかのあいだに、すぐに向きを変え、画板に向かう先生。
エリカは、どうしようかと悩むが、2秒で決めた。
『出す』
さ、タイトルをどうしようか???
と悩みながら、美術室から、無意識にでて、クロスバイクに跨った。
まだ、彫刻を手に持ったまま。
ふと、【グー】 を見ながら、少し胸が高まった。
さて、タイトルは何にしようかな???
――――続く