沙花叉クロヱは1月26日に死ぬ
vtuberの卒業は、vtuberの死です。
僕の推しについての吐露です。
ファンにとっては、という意味ではなく、沙花叉本人にとっても、これから沙花叉を好きになるかも知れなかった誰かにとっても、そうでない誰かにとってもそうである、絶対的な死です。「人に覚えられている限りはその人は生き続ける」というのは、気持ちの持ちようの問題で、事実としてvtuberとしての沙花叉クロヱは、1月26日に死んでしまいます。
ぼくはまだ受け止めきれていませんが、少なくとも確かなことは、長いようで、短い、短すぎる一つの人生、「3年」という長さの人生を自ら終える、あなたの大きな決意を──どうしても理解できないながらも──受け入れるしか、ぼくには道がないということです。
3年、中学校や高校で、ぼうっとしていたらいつの間にか過ぎ去ってしまっている時間。そんな短い時間に、あなたはどれほど普通の人が経験できないようなことを経験し、達成したことか! どれほど多くの人の生活に、笑顔を咲かせたことか! どれほど多くの人にとっての救いであったことか! どれほど多くの人にとっての憧れであったことか! その歌声でどれほど多くの人を魅了してきたことか! ああ、このまま続けていたら、どれほど多くの素敵な景色が、世界があなたとあなたのファンを待っていたことか!
僕は3年間、あなたを陰ながら応援し続けてきました。割れんばかりの声援とおびただしい注目に満ちたホロライブという、多くの人にとっての憧れの舞台から敢えて降りてしまう決意をしたあなたの、……土台のない荒地から、途方もなく長い旅への第一歩目を踏み出そうとするあなたの運命を、(僕のような臆病者には、考えるだけでも寒気がするほど恐ろしい、新しい旅を始めようとしているあなたを)、ぼくは静かに見ています。
ぼくには、新しいあなたを、沙花叉クロヱであると知っていながら応援することなどは、薄情と言われても、どうにも白々しくて出来っこない! 白々しい、それともむなしいという方が当たっているか。むなしいんです。僕は巨大なむなしさを胸に抱えながら、心いっぱいにあなたを「応援」できる気がしない。
しかし、遠くからずっと見ています。多分、多くの人にとってこのむなしさは共通。この悔しさは共通です。どれだけ明るく送り出すふりをしていても、そして、どれだけあなたの新しい挑戦を応援しているように見えても、その根底には共通のむなしさがある。僕にはそれが恐ろしい。苦しい。悲しい。なにより悲しい。
暗黙の了解という、白々しさ。ファン同士で目配せをし合い、悲しげに唇を歪めるように微笑む、そのむなしさ。考えるだけでも悲しい。耐えられない、胸の表面を焼き尽くすような、鋭いつらさ悲しさだ! 「これがあたらしい沙花叉クロヱなんだ」と呟き合う、その下腹をえぐるような気まずさ、痛々しさ、つらさ。
あなたの死骸が埋められた場所から、綺麗な花が咲くか、それとも誰からも忘れられてしまい、めちゃくちゃに踏み荒らされてしまうか、どっちに転ぶかを、固唾を呑んで見守るような、むなしくて、不安で、なによりも悔しい気持ちで、私はあなたを静かに見ています!
(いや、忘れられてしまうよりももっと悪いことだって起こりうる。あなたが悪意に打ちのめされることだって十分に起こりうる。それだけに、僕は自分のことではないのに、ほんとうに恐ろしいのだ)
僕の胸はいま、ぼくたちの応援の量では足りなかったのか、という悔しい思いで張り裂けそうです。
どうか、あなたが多くの人に愛されますように! この場所においてあなたが愛されていたのと同じぐらい、新しい場所でも多く、深く、激しく愛されますように!! そして、あなたの周年放送直後のこよりの言葉を借りれば、「holoXは沙花叉が辞めても、いつまでも5人でholoXだから、戻りたくなったら、いつでも戻ってきていいんだよ」!!!
あなたの……、「沙花叉クロヱ」という名前の、「沙花叉クロヱ」という現象の、「沙花叉クロヱ」という生命の居場所は、あなたの「死後」もずっとここにあり、ここ以外には絶対にあり得ません。いつでも帰ってきてほしい。つらくなったらいつでも、……気まずさを押し殺して、たとえば元同期の肩をちょんちょんとつついて「ひさしぶり」と声をかけ、ハグをし合い、一通り近況報告と思い出話をした後に、「今から戻ってきてもいい?」と聞いたっていい。彼らは、涙目に、「うん」と頷くだろう。たとえば、一人での活動に苦しみ、思い悩み、後悔の海に溺れるような悔し泣きの涙に濡れる日々が続いたとしたら、いつでも元同期を頼りにするがいい。彼らは、常にあなたの「仲間」だから。そして、彼らがそうである限り、ぼくたち「沙花叉クロヱ」のファンもあなたの味方だ。僕たちはみんな、あなたの帰りを待っている。
holoXは、ホロライブはいつでもあなたの帰りを待っている。
どうか数年後のあなたを待っているものが後悔でありませんように! 新しい死ではありませんように!
ああ、思い出す。adoさんがあなたの歌声が好きだとTwitterでツイートした日のこと。本当に好きでなければ、聴いていなければ言えないような、具体的な内容で、あなたを誉めていた日のことを。
あなたのお風呂嫌いネタをadoさんが知っていたことを知ったあの日のことを。僕はあなたを応援してきてよかったと心底思った。これからも同じように応援し続ければ、もっといろいろな人から、いろいろな場所から注目されるはずだから、この調子で応援し続けよう。僕はそう思った。
悔しい。悲しい。悔しい。どうすれば良かったのか?
何をクヨクヨ言ってももう遅い。あなたの未来について神様と、あなた自身に願っておこう。
あなたの選択が、どうか、間違いではありませんように!
そしてもし間違いだったとしても、ここにはあなたの居場所がいつまでも変わらずにあるということを、あなたが決して忘れませんように! 決して! 決して!
いや、間違いだったとしても構わない。この選択を間違いにしてはならない、ホロライブを辞めてまでこの選択をしたのだから、必ず成功しなければならないという考えが将来重荷となって、あなたを責めることが、どうか、どうかありませんように! 間違いだったとしてもいい。忘れてほしくないのは、ただ一つだけ、帰る場所はここにあるということ!!!
どちらにせよ、あなたの人生が愛で溢れていますように!!!!!
それにしても、僕が観測し得ないあなたの人生の幸福を願う白々しさ、苦しさは本当に耐え難い。息も詰まるほどに。そう言えば、沙花叉クロヱ、あなたは僕にとって、デビュー配信から追い続けて卒業まで至った最初のvtuberになってしまった。会長の時でさえ、デビューは見ていなかった。
あなたの配信が好きだった。あなたの声が、歌が好きだった。あなたの話を聞くのが好きだった。
今までありがとう。