220311 エチゼンクラゲとあたし

ある瀬戸内海の小さな島の漁港。

島一番の美人の舞は漁師の祖父と2人で暮らしていた。

ちょうどその夏は、エチゼンクラゲが大量発生していた。
漁に出ても、網にかかるのは大量のエチゼンクラゲ。
島の漁師たちは困窮していた。

舞たちも例外ではない。
収入を絶たれた舞と祖父は、細々と内職を続けて生活をしていた。

『すまんなぁ...島一番の美人の舞に、団扇の和紙張りの内職なんかさせて...』
『良いのよおじいちゃん、島一番の美人のあたしでもそれくらいするわよ』
『でものぉ...もし島一番の美人の舞が怪我でもしたら、と思うと恐ろしくてのう』
『大丈夫よ、島一番の美人のあたしよ?少し怪我したくらいで、男たちは幻滅しないわ。』

ゆらゆらゆらゆら

エチゼンクラゲはあたしと似ている。

島一番の美人のあたしと...





と言う意味不明な短編を、中学の国語の時間に書いた。
(実際はもっとしつこく長かった。)

僕は当時の国語の先生が『舞』と言う名前だったので、
舞を島一番の美人と呼び続ける、この小説を面白いと思って書いていた。

意味不明ながらも、この短編はクラスメートには好評で、
僕がこの『エチゼンクラゲとあたし』を発表した時はクラスが大いに沸いていた。

DJ冥利に尽きる反応だった。


しかし、数週間後、他のクラスの女子が僕に話しかけてきた。

『あんたマイちゃんのことかわいいっていう小説書いたんやろ?? キショ〜!』

なんのことかわからなかったが、話を聞いてみると、
僕はすっかり忘れていたのだが、同級生の中に『舞衣』と言う女の子がいたらしい。

僕の『エチあた』は噂が噂を呼び、周りにまわって、
親交のない同級生の女の子を褒め尽くす短編ということになっていた。


それは確かにキショいわ。

いや......

キショいか...

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