220309 溺れた経験
うどんが好きだ。
特に柔らかいうどんが好きだ。
昔からデストラーデ家では関西風の柔らかいうどんが食卓に上がっていた。
確か小学校低学年の頃、僕は母方の祖母に連れられ、つるとんたんへ行った。
つるとんたんとは、大阪と東京を中心に展開する、ちょっと"良い"うどんのチェーン店だ。
僕はきつねうどんを頼んだ。
大きな椀に盛られたきつねうどんは、すごく美味しそうだった。
ズルズルズル
腰の強いうどんで口の中がいっぱいになった。
当時の僕はかなり驚いたのを覚えている。
堅い
うどんが堅い
今思えば小学生にとっては確かにコシが強すぎるうどんかもしれない。
噛んでも噛んでも、小さくならないうどんに口の中がいっぱいになった。
僕は誇張なしに、つるとんたんで溺れてしまった。
口をパンパンにしながら苦しさに泣き出す僕。
『デスちゃん、おうどん嫌いやったの?』
祖母は心配そうにこちらを覗き込んでいたが、僕は黙って泣いていた。
これ以降、僕はコシの強いうどんが好きではない。
嫌いとは言わない。
でも少なくとも好きではない。