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働いて得た財産
9月末で三年半勤めた職場を
辞めることにしました。
辞める日が近づくにつれ、
色々な想い出がよみがえり、
時々寂しい気持ちになります。
私の職場は惣菜を売る小さな店で、
店頭で販売する他、一般の人や
一人暮らしの高齢者に市からの委託で
お弁当を届けることもしています。
先日、久しぶりにお弁当の
配達をしたのですが、
少し会わないうちに、
高齢のお客さんたちが
以前よりも痩せていたり、
認知症が進行していたり、
少しづつ少しづつ様子が
変化していることを実感しました。
「ずっと顔を見せなかったから
辞めてしまったかと思ったわよ」と
常連のお客さんに言われました。
「店の厨房に入って作る事が
多くなったので」と、以前にも
説明した事と同じことを言うと、
初めて聞いたように「そうだったのね、
安心したわ」と返してくれます。
「親の時間」で培った聞き合う方法を
学んだ成果でしょうか、私に色々な事を
話してくれる人もいます。
耳を疑うような、壮絶な人生を
おくってきた人もいます。
ある人は「まだ生きてるぞー」と
玄関から離れた寝床から
起き上がれずに叫びます。
「生きてくださーい!」と私が言うと
ゲラゲラ笑って「おう!がんばるわ〜」
と返してくれます。
また、以前配達した時に、
呼び鈴を押しても出て来なかったので、
留守と思い、玄関のドアノブに
お弁当を入れた袋をかけておきました。
そして、翌日また配達に行くと、
前日のお弁当がまだドアノブに
そのままあったので、お客さんが
通う介護施設に連絡をして安否確認を
してもらうという事もありました。
その結果、家の中で倒れ、
その人は、誰にも知られずに
亡くなっていた事がわかリました。
日本の高齢化社会の現実を
身近に感じた瞬間でした。
配達の人が、玄関ドアを閉めるとき
「明日もまた参ります」と言う挨拶を
頼りに生きている人が沢山います。
お弁当を一つ手渡すだけの、
ほんの短い時間の関係なのに、
優しい言葉をかけてくれたり、
庭の畑で採れた野菜を
用意しておいてくれたり、
家の鍵をどこに置いたか忘れて
一緒に探し回ったりと、
お客さん一人ひとりに、
想い出が沢山あります。
色々辛いこともあったけど、
働いたからこそ得られた
財産もたくさんありました。
まきちゃん