長期投資における半導体株の魅力
◆足元の半導体市況
世界半導体市場統計に8月の世界半導体売上高は、前年同期比28%増となり、今年最高の伸び率を示した。また、10月9日発表の半導体受託製造大手のTSMCの9月売上高は40%増となり、8月の33%増から改善した。
一方で半導体製造装置大手のASMLは15日に発表した7-9月決算では、中国向け販売減速によって受注額が市場予想の半分に留まった。それを受けてASMLの株価は16%安、16日の日経平均株価は、一時800円下落するなど大幅安となった。
◆選別される半導体株
好調な決算のTSMC、不調なASMLの明暗を分けたのが、売上高に占める中国の割合だと思われる。ASMLは、今回の決算時点での割合は47%と高水準であった。そんなASMLの決算を受けてエヌビディア株も下落したが、結局17日に4か月ぶりに最高値を更新。その背景にあるのは、前回決算時点での売上高に占める中国の比率12%という安心感かもしれない。特に、11月に迫る米大統領選が意識される中で、「もしトラ・・・対中半導体輸出規制強化」といったリスク中で、半導体株の選別が進みやすいと考えられる。
◆半導体株を支えるAIはバブルか?
選別される半導体株を支え、けん引するのが「AI」だ。今後、AIは様々な局面において活用が進み、それに伴って半導体の需要が増加することが期待され、エヌビディア株価は上昇を続けている。そんな半導体株を含むAI関連銘柄に「過熱感」「バブル」を指摘する声も少なくない。
では・・・ITバブルを例に「バブルまでの道のり」を見てみると・・・
(下表参照)
一概に「AIバブル!今でしょ!」とは言えないかもしれない。
AIバブルと言いながらも、まだその中核である「オープンAI」は上場しておらず、ITバブルのPER100倍と比較してエヌビディアの30倍台はかなり割安である。
ただ、バブルではなく短期的な過熱感、それを冷まさせる政治リスクや地政学リスク等には注意が必要だが、今後インフレ率が低下による利下げ期待と景気悪化には大幅に上げた分は利下げに余裕のある米国株式市場を忘れてはいけない。利下げが連続して進む中で、上表の④へ向かっていくのかもしれない。
◆長期投資における半導体株の魅力
19世紀のゴールドラッシュで最も富を得たのは「金を掘った人ではなく、ツルハシ⛏を売った人だった」という話を参考に
長期投資における半導体株の魅力を考えると・・
『21世紀のAIバブルで最も富を得たのは「AIを作ったり、活用した企業ではなく、半導体を売った企業だった」』になるかもしれない。
具体的には、自動運転・ロボット等様々な分野でAIは活用されると思われ、それには必ず半導体が使用される。
逆に使用されなくなるのは・・「人」ということも忘れてはならない。例えば、店長1名バイト3名の年間1億円の売上あるコンビニにおいて、バイト3名の代わりに24時間フル稼働の人型ロボットを1台導入したらどうだろうか?おそらく売上は変わらないが、店の利益は増えることになる。ちなみに、テスラは人型ロボットを500万円弱で販売しようと開発・計画している。
長期投資における半導体株の魅力とは・・・・
「自動運転・ロボット等様々なところでのAI普及による高い成長性」と「AIに仕事を奪われる危機への備え」かもしれない。
インドのような人口ボーナスが期待される国への投資に加えて、AIを使って少ない労働力(人がいらない)で多くを稼ぐ新しい時代への分散投資を考える必要があるかもしれない。