初恋、焼き上がりました
こんにちは!親子丼です。あっという間に秋ですね。やっと涼しい!
今日は私の心がまだ卵時代だった思い出話です〜。
私が初めて好きな人が出来たのは小学5年生くらいのことである。
当時周りにいた女の子は私より早熟で、自分は誰が好きだ、とか、好きな子と仲良くしているクラスメイトはライバル視することがざらにあった。
私にも体育の時間、運動神経の悪い私を助けてくれたり、悲しんでいる時に声をかけてくれたりする人を素敵だなと思うことはあった。自分の中に芯があって、兄弟が笑いものにされたら庇う姿も素敵だと思ったり、他の人と仲良くしないで欲しいと思ったりもした。
男らしい!カッコいい!となっても、それが「好き!付き合いたい!」に直結することはなかった。
卒業してから、私は女子校で6年間を謳歌した。その間、ふと「私は彼のことが好きだったのでは?」と考えることもあった。もう一度会いたい、私にはその人がいちばん良いのでは、と思うことすらあった。
念が通じたのか、20歳のとき偶然、彼に会うことができた。
一緒に居合わせたコンサート会場で、相手から声をかけてくれた。ロマンチックな展開である。急なことで私も慌ててしまい、連絡先を交換しそびれてしまった。その後、知人づて交換でき、ゆっくりごはんに行くことになった。
ごはん当日。6年分散り積もった、美化された記憶と壮大な期待は、果てしなく大きい。それを抱えて電車に乗った私は手汗をかき、心臓がバクバクであった。
よく使う地元の駅での待ち合わせも、いつもとは違った。そこから道中と、席に着いても、思い出話をしていた。変わらないものは、変わらないんだな。心の天気、快晴。
だが、空白の6年を話すうち、雲行きが怪しくなってきた。私は女子校でのびのび育った一方、彼は進学校でうんと苦労をしたそうだ。滑り止め入学のため、優秀な学友に囲まれて自己肯定感が下がり、全く自分に自信がなくなっていたのだ。好きだったものも、当時とはすっかり変わってしまったように見えた。
私は憤慨した。私が大好きだった彼の自信ある素朴な一面を打ち砕いた学友や、担任の教師に。でもそれが彼の実力だと言えばそれまでだ。それに私が変わった、と思った彼のその一面は、私が勝手に美化したことにより盲目となっていただけで、もともと彼にあった一面なのかもしれない。
そういう経験やセンスが磨かれ、より心が繊細になった、今の彼は形作られていた。
私と彼の前では、その間じゅうじゅうと、お好み焼きが焼かれている。当時の淡い恋心、未来があるかもしれないという期待、現実を突きつけられた悲しみ、受け止めきれない困惑。色々な感情という具材が、ないまぜになって、私の心がじっくりと火を通されながら焼かれている。
ふつふつ湧き上がる感情の熱さなのか、鉄板の熱さなのか。とにかく熱気がすごい。
でもそれは、彼も同じだったのかもしれない。
「もんじゃも頼む?」と聞かれた。「それはいいかな」と断った。なんとかまだ形作られているお好み焼きから、ドロドロのもんじゃになったら、もう堰が切れて、良くないものまでだだ漏れてしまいそうだった。
いっそのこと、ひっくり返したお好み焼きがぐちゃぐちゃに崩れてしまえばよかったのに。
でもその日食べたお好み焼きは、どれも綺麗に焼かれて、お腹がいっぱいになってしまった。
彼は私の想像より、ずっと心がオープンだった。帰り際、「本当は好きだったよ」と言われた。お酒も入っていたから、私も心を打ち明けようかと思った。でも過去は過去だし、その過去と今の間に、「変えられないもの」がお互いに根強く植えつけられていてるのを、無視できなかった。その芽を伸ばして、それぞれ生きていくのだと、強く確信した。
種を植えた鉢が同じでも、同じ太陽や雨を受けるわけではないのが人間なのだ。
そしてこれが、大人になるということなのだ。
話を最後まで聞けば、私以外にも好きな人はいたようだったし、うん、現実はそんな感じだよね。
丁寧に21時過ぎには帰され、「帰ったら連絡して」と言われたので連絡を入れながら、きっとこれから彼は恋人に困らないだろうなと思った。私も気持ちを打ち明けるのが礼儀だと思って、LINEを打ちながら言おうか迷ったけれど、やめた。世の中、なんでも言えば良いというものではない気がした。心配には及ばないが、彼にはあなたぴったりの、未来を歩んでほしい。と強く願い、連絡をしたためた…。
「…おーい!気持ち伝えろよ!」と、思って下さる心の優しい読者の方もいらっしゃるかもしれませんね。ありがとうございます。
でも、今のところ私の答えとしては、初恋はちゃんとしまっておくべきだと思っています。無闇に進めて汚したくないし、大切にしてきたからこそ、そっとアルバムにして、大人になりたいという気持ちなのです。
秋頃の話だったので、夜長にピッタリなぐだぐだと長い思い出話をしました。
この文をもって無事、火葬できました。物騒な言い方!笑
心に留める思い出をお守りしにて、いつだって新たな出逢いに期待できるよう、親子丼を煮詰めていきたいですね。
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