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#259オヤジのエプロン 迷子③
つづき
タクシーで警察署に到着したのは
21時を既に回っていた
薄暗い警察署には数十人の警察官がいた。
"すみません 迷子になった息子を迎えに来ました"
"お名前は?"
"〇〇の父です"
こちらの部屋にどうぞ と入り口付近にあった部屋へ通された
ドアを開けると中には警察官と息子がいた
"おっ!ずいぶん長い散歩だったな"
第一声はこんな感じだった
たが 息子は照れているのか?疲れ切ってしまっているのか?
明後日の方向を見て 少々怒り気味な雰囲気だ
そして沈黙の中
軽い手続きと見つかった状況など説明があった
事の経緯はざっとこんな感じ
来年入学する中学校(徒歩20分)に1人で行ってみようと向かう
↓
到着後 すぐ近くに親と一緒に
行く比較的広い公園がある事に気づき行ってみる
↓
ここまで来たからもう少し先に歩いて見ようとする
↓
しばらくすると観覧車のようなものが見える
↓
少し焦り土手沿いを引き返す
↓
喉が異常に渇いていることに気づいて公園を探すが見当たらない
↓
次にコンビニを探すが見当たらない
ようやく見つけたコンビニの店員さんは外国人だったのでニュアンスが通じず 次に見つけたコンビニで必死にアピール そこで店員さんが水をくれる
↓
その水がなくなったら公園を探し水を補給 歩いている人に道を訪ねようとするが みんなヘッドホンをしているため素通り
↓
再び土手沿いを歩き見慣れた高い建物を発見 橋を渡る(実際は家に帰るには橋は渡らない)
↓
辺りは薄暗くなり ようやく止まってくれた人に"自分の街に帰るのと 祖父の家(家から4駅先)の駅に行くのとどちらが近いか?"を聞く
ここからだと祖父の家に向かう方が近いと知らされる(残り徒歩1時間位)
↓
長男は財布も携帯も何も持っていないので 心配かけないために 祖父の家に着けば連絡してくれると判断 また歩き始める
↓
しばらく歩き団地や住宅街等に突入
完全に迷子
そしてようやく見つけたコンビニで必死のアピール だがパニクっているせいで伝わらず 店を出てその場で座り込む
↓
一部始終を見ていたウーバイーツのお兄さんが声をかけてくれる その場で警察に連絡
↓
無事お巡りさんに確保
こんな感じ
そこのコンビニから祖父の家までは残り1キロ位の場所だった
しかし歩いてきたことの無い場所なので実際たどり着くのは無理だったと思う
かなりの距離を歩いたせいで長男の太ももは股ズレで真っ赤になっていた
帰りのタクシーを待つ間
相変わらず ブスッとしている息子に
何か飲む?っと聞く
ようやく口を開き
"コーラ"
コーラなんて飲めたかな?と思いつつ警察署の自動販売機で買う
プシュっと開けたコーラをゴクゴク飲む姿をみて大人になったな〜と少しセンチな気分に浸る
それから帰宅できたのは1時間後
足音で帰って来たことを気づいた妻は
息子に駆け寄り
抱きしめて
"何処に行ってたの?心配したんだから!"
と息子の頭をグシャグシャにしていた
まるで映画のワンシーンを見ているようだった
後日談
それから2週間位して "今度は迷わないように祖父の家まで歩きたい"と言うので3時間かけて一緒に歩いたほんの何週間前の"オヤジの大冒険"をあっという間に飛び越えた "息子の大冒険"であった
(オヤジの大冒険より)