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サーチャーが持つべき7つの特質④~自己のリーダーシップ力への自信~_コラム040
はじめに
このコラムは事業承継先のサーチ活動を続ける筆者が、日々感じたことを徒然に記録するものです。サーチファンドについて体系的に知りたい方はこちらをご覧下さい。
サーチ活動のための7つの条件?
スタンフォードGSBによる「サーチファンド入門(A Primer On Search Funds)」に、「How Do I Know If A Search Fund Is Right For Me?(どうすればサーチファンドが自分に向いていると分かるか?)」という一章がありますが、そこでサーチャーに求められる特性が7つが挙げられています。
4つ目の今回は④Belief in one’s leadership ability(自己のリーダーシップ力への自信)です。翻訳し辛くてヘンな日本語になっていますがご容赦ください。リーダーシップというだけでなく、自身のそれを信じることですが、どういうことなのか詳しく見て行きましょう。
①Attention to detail(細部へのこだわり)
②Perseverance(忍耐力)
③Ability to build relationships and networks(人間関係構築力)
④Belief in one’s leadership ability(己のリーダーシップ力への自信)
⑤Willingness to seek, and heed, advice(アドバイスを求め、耳を傾ける意欲)
⑥Flexibility(柔軟性)
⑦Adaptable and modest lifestyle(融通が利く質素なライフスタイル)
信頼を得たいなら自信のほどを見せろ?
本文にある解説された箇所からそのまま抜粋してみます。
サーチャーCEOは、自分には企業を繁栄に導くことができる能力があるのだという揺るぎない信念がなければなりません。資金調達、投資先探しから、経営の実務におけるあらゆる場面で、なぜ自分が企業のトップに立つとしてやっていけるかどうかを問われます。投資家は資金調達の際にサーチャーの自信を試しますし、仲介業者のお眼鏡に叶わなければ紹介してもらえません。そしてそれは事業を譲渡する側の売り手に関しても同様であり、従業員は承継の際に新しいリーダーの自信のほどを求めます。
なるほど。
「自分には企業を繁栄に導くことができる能力があるのだ」と示すべき人々とは、前回の投稿で言及した「人間関係構築力」におけるステークホルダーそのままですね。
関係者との良好な関係を構築することと、そうした方々に「自信のほど」をみせること。何となく同じようなことにも思えますが、どう違うのか。
あなたには投資する価値がありますか?
文章はこのように続きます。
サーチャーには、長年の経営者としての実績がないからこそ、すべてのステークホルダーから信頼を得るために、本物の説得力のあるメッセージを伝える必要がある。
サーチファンドの投資家を念頭に置きつつ、その他の関係者も全員が投資家であるという感じで捉えられています。
「投資」を考える上で、その他の金融資産(株式とか国債など)と比較してみます。
例えば個別の上場銘柄ならその企業が作成したIR資料があり、既に取引されている株価からPERなどの指標をみて売り買いを判断するでしょう。ETFの買い手は月次レポートと目論見書に目を通すでしょうし、債権なら利回りが重要な指標になるでしょう。
このように投資すべきか否か適切な判断ができる情報を、投資をしてもらう側が提供することが様々に義務付けられています。
ではサーチファンドはどうか。事業承継先の未上場企業に対し、投資実行前にはDD(デュー・デリジェンス)と呼ばれる財務、税務、法務など様々な角度から査定が行われます。
専門家によるDDの結果が投資するかどうかの判断基準になるので、その点では問題ない気もしますが、そもそもそれ以前に投資家はサーチャーCEOその人に活動費として投資しています。その活動費の投資はどう判断するのか。
サーチャー本人をみて判断する以外にない
スタートアップの起業家なら開発中のプロダクトを見せることもあるでしょうし、創業メンバーの個々のスキルと結束力をアピールすることもあるでしょう。
しかしサーチャーには自分しかいません。自分という人間そのものが売り物です。過去の職歴も参考にはなりますが、しかし一般的にはサラリーマン経験はあまりアテにならないと言われます。
PEファンドの投資先に新社長を外部から招聘するときにみられる傾向ですが、ほぼ全員が社長経験者です。社長になるには社長経験が必要なのです。「では、社長経験が無い人はどうすれば良いの?」という疑問が浮かぶと思いますが、それにはいまの企業で我慢して出世する道しかないです。今すぐ肩書が欲しいなら、脱サラして自分の会社を法人化すればOK。日本において起業するかサラリーマンで出世する以外に経営トップに就けるルートがないのはそういうことなのです。
いずれにせよ、投資家に対して「なぜこのサーチャーに資金を投下するのか」という判断材料が、他の金融商品などに比べれば信頼できる情報はかなり限定的です。特にサーチ活動を開始する前はそうです(承継先が決まればその企業の事業内容やキャッシュフローが参照されますので状況は変わります)。
必須要件である経営者経験が欠落している自分が経営者として相応しいということを、どのようにして説得するのか。
自信があることをアピールするのが精いっぱい?
ここでスタンフォードGSBの執筆者たちは「自信」「信念」が必要なのだと唱えている訳です。
ファクトが無いから自信満々で相手を丸め込む。
本当にそんなこととが出来るのか、かなり怪しい感じがしますが、世界で最もサーチファンドの事例をみてきた人たちが言うのですから、ここは話半分で聞いておくくらいで良いでしょう。実際にサーチャーCEOに数多く接していて、そうした属性の所有者がサーチャーとして成功する確率が高いという根拠が、執筆者たちにはきっとあるのでしょう、本論文ではそこまで詳細には語られていませんが。
「私たちは(企業というより)あなたに投資しているのです」
これは実際に㈱サーチファンド・ジャパンの経営陣や関係者から何度か言われた言葉です。大変有難いと同時に身が引き締まる思いです。
売り物が自分自身である、もしくはスキルと経験を総合した人間に備わっている何かであるという点では、ソフトスキルを売りにする経営コンサルタントと共通点があるようにも思えます。しかし、依頼主からフィーを貰って業務委託される経営コンサルタントに対し、サーチファンドの投資家はあくまで投資ですから、投じたお金が返って来ないリスクを孕みます。
最後に誤解のないように言い添えておくと、単に自信満々というだけでは実際には難しいと思います(当たり前ですが)。それがある程度はうかがい知れる職歴が必要です。特に現在の日本でまだサーチファンドは黎明期であり、投資基準もかなり厳しめだと思います。
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