いまの日本にサーチファンドが必要な理由_サーチファンド活動日誌②
はじめに ~この連載のねらい~
2021年5月に脱サラして事業承継先の探索活動(以下、サーチ活動)をはじめました。現在進行中の活動を記録することで、「サーチファンドって何?」という方やこれから始めようと検討している方に、参考情報を提供するのが目的です。
日本における事業承継の存在意義
黒字廃業も多いと言われるオーナー経営者の高齢化と後継者不足。こうした企業を引き継ぐことが出来れば、地域の優良企業を残せるだけでなく、経営を目指す人材にまたとない活躍の場をつくることにもなります。
改めて、ETA=買収型起業という考え方について。
そもそも起業とはゼロ・スクラッチから始めるものだとイメージされますので(私もそう考えていました)、違和感を持たれる方もいるかと思いますが、サーチファンドはETAを肯定的に捉える考えがベースにあります。
ゼロからでなくても、既存企業をオーナーから受け継いで新オーナーになるのなら、それはそれで1つの「起業」ではないかということです。
日本の現況(オーナー企業の引退で承継が急務な状況)から考えると、このタイプを「あり」だとすることには、社会的にも意義があると思います。
日本の民間企業の大半を中小企業が占めており、多くは創業家が株式の過半を保有するオーナー企業です。日本の繁栄を支えてきた存在として賞賛されることもあれば、「数が多すぎる」と指摘されたり、低い生産性の元凶のように言われたりもします。
賛否どちらの立場に立つにせよ、日本経済がふたたび活気を取り戻すためには、全国の各地の中小企業群が強い経営リーダーのもとで独自性を磨き、従業員が生きがいを見出して働くことが必要であることは、多くの方が賛成してくださると思います(当然ですがゾンビ企業を延命させるという意味ではなく)。
近年のスタートアップの隆盛と比べると、全体でみれば数や経済規模では圧倒するはずの中小企業群の扱いは依然として低いままであるという印象があります。
こうした状況を鑑み、優良企業が廃業するくらいなら自分が経営を引き継いで残したいと考える人は少なからずいます(私もその1人です)。しかし、企業を継いでほしい側と継ぎたい側をつなぐ仕組みは長らくありませんでした(※1)。
この問題を解決できるサーチファンドが日本に仕組みとして定着することに貢献できるなら、それは一個人の成功を超えた意義があると考えたのです。「仕組みとして定着する」という部分が大事で、仮に自分一人だけが成功例になったとしても、それでは問題解決にはなりません。しかし、まずは自分が当事者として実践しなければ仕組み化など到底無理だろうと考えてスタートしたのがいまの活動です。
この活動をしていると「そんなに経営者になりたいのなら、スタートアップすれば?」とよく言われますが、サーチファンドだからこそ解決できる日本の問題があると思ったというのが踏み出した理由です。
この連載の全体構成~サーチ活動の4ステップ
次回から具体的に私の活動について描いていきたいと思いますが、どのようなステップで進むのかを予め概観しておきたいと思います。サーチファンドは大きく4つのステップに分かれます(※2)。
今回の私の活動は下のアクセラレータ型です。通常のサーチファンドにおけるステージ1=活動資金の調達のパートがアクセラレータとの契約になります。
ステージ2の期間を「?」としています。実はここを通常型よりも短くできるはずだと考えたのがアクセラレータ型を選択した大きな理由の1つです。
先回も同じことを書きましたが、12~24ヵ月というのは長過ぎます。投資実行の目途が立たないまま最大2年の活動を続ける自信が私にはありませんでした。
日本のサーチファンド定着のカギは?
本当はステージ2を「6ヵ月で完了!」くらいに言い切りたいのですが、まだ実験中なので「?」としています。
日本でのサーチファンド定着のためには、ステージ2を短く走り抜ける方法を確立できるかどうかにかかっています。米国のサーチファンドの20~30%が投資実行できずに終わるのもステージ2を乗り切れないからです。
そのためには、投資候補企業へアクセスがしやすいこと、DDや事業プラン立案を素早く確実に実施できること、LBOローンが組みやすい環境があることなど、いくつかの要因が揃わなければならないのですが、いずれ別の回で詳述します。
そして、現時点でこの連載で書けるのもステップ2までです(私はまだ3と4を経験していません)。すべてが完了した暁にはこうした活動の詳細にも触れてみたいと思います。
次回の内容
次回は、ステージ1のA「サーチャーになる覚悟を決める」です。
活動の中身を早く書きたいのですが、ここに至る経緯も後々のご参考になるかと思いますので、そういったお話を致します。
まとめ
サーチ活動日誌目次
①サーチファンドとは何か
②いまの日本にサーチファンドが必要な理由
③私がサーチャーに挑戦するまでの経緯
④アクセラレータからの支援が仮決定する
⑤自分にあった業界を探す?
⑥サーチファンドにとって良い企業とは?(その1)
⑦サーチファンドにとって良い企業とは?(その2)
⑧事業仮説を練る
⑨オーナー社長と面談・交渉する
⑩市場分析/データ分析をする
⑪意向表明書を提出する
⑫デューデリジェンスを行う
⑬買収価額を算定する
⑭最後の交渉~譲渡契約締結
⑮経営に参画する~Day1を迎えるまで~
※目次は今後変更の可能性があります
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※1:これまでは親族間承継(例:父親→長男や娘の旦那さん)がほとんどであり、第3者への承継には資金(=オーナーから株を買い取るのに必要なお金)の確保が難しく、個人保証の問題(会社が銀行から融資を受けるためにオーナー個人が連帯保証人になること)も障害となっていました。「実子が継いでくれないから廃業」のようなケースが多いのもこのためです。また個人保証問題への対処には近年こちらの動きがあります。
※2:通常のサーチファンドの活動期間はスタンフォードGSBの2020 Search Fund Studyを参考にしています
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