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サーチャーにとっての年齢と経験の関係_コラム004
はじめに
このコラムは事業承継先のサーチ活動を続ける筆者が、日々感じたことを徒然に記録するものです。サーチファンドについて体系的に知りたい方はこちらの連載を御笑覧下さい。
45歳という年齢の立場
この連載やSNSでもたびたび言及している年齢についてお話します。先に結論を申し上げると、サーチファンドでは本来年齢は関係ないはずですが、特に日本において経験やスキルを求めると自動的に年齢が上昇しがちである、ということです。
私は現在45歳のオッサンです。同い年の中には、一般の民間企業で大きな責任を負ってチームを率いている方が沢山おられます。
なかには会社を自分で創業された方、上場を達成された方、大手の日本企業なら本部長や執行役員になっていらっしゃる方、外資系企業ならパートナークラスに昇進して活躍されている方も沢山いらっしゃる年齢です。
一般的には出世の登竜門と言われる課長クラスに昇進できるラインを過ぎたあたりでしょうか。今後は課長への昇進可能性が、時間とともに一気に下降する頃だと思います(大企業にいたときの私の感覚です、間違っていたらすいません)。
話をサーチャーに戻すと、勤務先での肩書はあまり関係ないのではないかと思います。肩書がもし重要なら、課長より部長、部長よりは執行役員と上位職にあがるほど適性もあがるはずですが、海外のサーチャーを見る限り、サーチャーへの適性と企業内での肩書や出世とはあまり関係がないように見えます。
曖昧な書き方になるのは、日本ではまだまだサーチャーのサンプル数が少なくて、この論点を言い切れるだけのデータがないからですが、日本でもサーチファンドが広がればもう少し明確に語れると思います。
中小企業の何でも屋さん?
私の業務委託契約先である㈱サーチファンド・ジャパンが設立されたとき、日本経済新聞に以下のような記事が掲載されました(2020年10月8日付電子版)
記事のタイトルが「MBA取得者を中小社長に」となっていたことに対し、SNS上では「MBA取得者(のような頭でっかち)に中小企業の経営ができるのか、社長といったって現場の泥臭い仕事が多いよ」という趣旨の意見が散見されました。
このコメントについて少し考えてみたいと思います。
そもそも、㈱サーチファンド・ジャパンも、株主である日本政策投資銀行も、MBAホルダーに対象を絞っているわけではなく、この記事の記者さんが分かりやすいと思って「MBA」と添えたと思いますが、それはそれとして。
前半部分の「MBA取得者(のような頭でっかち)に中小企業の経営ができるのか」について、MBA取得者に中小企業の社長がつとまるのかどうかは、個人の経験や資質によるものであり一概には言い切れないと思います(筆者はMBA非取得者です、念のため)。
これに限らず、MBAに意味がある/ないという議論もあまり建設的ではないと思いますので、前半部分はここで終わりにします。
問題は後半部分。
「社長といったって現場の泥臭い仕事が多いよ」というのはその通りです。私はコンサル時代に2社の中小企業の取締役(1つは外食チェーンの常勤取締役、もう1つは運送会社の専務取締役)をつとめ、両社とも社長の直下でお仕えしましたが、三現主義(現場・現物・現実)が極めて強い仕事ばかりです。指示して後はお任せというようなことはほとんどありませんでした。
経験を積もうと年齢も上がる?
とはいえ、現場仕事ばかりしていて良い訳でもありません。やはりマネージャとしてのな経験も大事。恐らくこれが望ましいだろなと思うのは以下の3つです。
① PL責任者として事業成長を追求した経験
② 出来れば新規事業開発や赤字事業立て直し、海外駐在や子会社への幹部出向など、より難しい局面の事業責任者であれば望ましい
③ 起業やスタートアップ間もないベンチャーで経営幹部を務めたことがあればさらに望ましい
簡単に言えば、難しい局面で責任を負ったことがあることでしょうか。「肩書きは関係ない」と言いながら、なんか矛盾していますね。要は修羅場に近い経験があるほど良いということだと考えています。
これが1事業や1企業だけでなく業界をまたいだものであれば、スキルの再現性が高いことの証明にもなりますので尚可といったところでしょう。
また転職の際などにいわれる「チームを率いた経験」みたいなものは、①~③の何れかでリーダーを務めていれば、一定の経験はあるとみなして問題ないと思います。
結局、年齢よりも経験とスキルの中身
サーチファンドは元々若手(20~30歳代)の人向けの仕組みです。しかし若ければそれで良いという訳ではなく、投資を実行して経営執行で結果を残せるだけの力量を備えていなくてはなりません。
ここにジレンマがある訳ですが、年齢が若いと経験が不足しがち(人によりますが)、経験を追い求めると年齢が上がりがち、このバランスをどうとるかが、サーチャー本人というよりも投資家にとっての悩みだと思います。
で、この議論を突き詰めていくと、事業承継後に再現できるスキルと経験の中身次第だという結論になります(こちらで言及したハラの据わり方みたいなのは大前提として)。
それが備わっているのならば年齢は本来関係ないはずです。
もし年齢に関係があるようにみえるとすれば、日本企業で①や②を経験するまでに10年以上かかることが多いので自動的に年齢が上がってしまうのだと思います。
米国のサーチャーの平均年齢は30歳前後です。米国の方が出世が早いということもあるのでしょうが、ケース資料などを読むと実際はサラリーマン経験が数年くらいの人が大半です。言い方は悪いですがド素人に社長を任せるのです。
こんなことを私が申し上げると、完全にブーメランで「サラリーマン経験が何年あっても社長には関係ない、お前も同じくド素人だ」と言い返されるのがオチです。社長を経験された方ほどそう仰います。本当にその通りなのだろうと思います。
米国ばかりがスゴイと言いたくはないですが、経営者経験は早いに越したことはありません。30歳でCEOとして事業承継してじっくり10年経営してもまだ40歳。いまの私より5歳も若いわけです。
一度CEOを経験して一回りした40歳と、CEO未経験の45歳の私とでは、力量も世間の評価も比べものになりません。
時間がかかるかも知れませんが、いつか日本に30歳のサーチャーCEOが誕生して欲しいと切に思います。以前の連載に書いた通り、この仕組みが日本に定着することに個人の成功を超えた意義があると考えているからです。仮に自分一人が成功例になったとしても問題解決にはなりません(勿論自分の結果を出すために全力で頑張ります、念のため)
しつこく繰り返しますが経営者経験は早くから積むに越したことはありません。とはいえ理想からかけ離れたいまの現実において、まずは45歳のオッサン・サーチャーとして結果を出さないことには誰も協力してくれないだろう、そんなことを考えながら日々活動しています。
まとめ
■サーチャーには本来適切な年齢はないはずだ、あるとすれば日本のサラリーマンが事業責任を負うのに時間がかかり過ぎるからではないか
■厳しい局面での事業責任を負った経験はある程度は必要、それが海外駐在や子会社出向、あるいはスタートアップなど複数経験して再現性がみえれば尚可
■しかしCEO経験は早いに越したことはない、日本にも30歳代CEOが誕生する仕組みとしてサーチファンドには可能性がある
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