サーチファンドは海外ではどのように普及していったのか(2/4)_コラム016
はじめに
事業承継サーチ活動を通して日々感じたことを徒然に記録しています。他の連載も含め以下のマガジンにまとめていますので宜しければ御笑覧下さい。
45歳で挑む経営者キャリア サーチ活動日誌
45歳で挑む経営者キャリア サーチャーの徒然コラム
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英国以外の国はどうか~イタリアのケース~
出展:International Search Funds – 2020 - IESE Business School
英国に次いで今回はイタリアです。IESEのStudyではイタリアのサーチファンドは4件積みあがっています。
ここで参照するのは2021年5月に掲載されたイタリア語のネット記事です。直近の事例なので、上記のStudyの4件には含まれていないかも知れません。
アンドレア・トゥディーニとフェデリコ・ラティーニという2人のベインアンドカンパニーの元コンサルタント二人が立ち上げたサーチファンドです。
わずか2か月で56万ユーロ(約7,300万円、1ユーロ=131円)のサーチ活動の調達をしています。2020年のパンデミックの初期段階ではかなり苦しんだイタリアですが、1年経過してサーチファンドについては投資家も資金拠出を歓迎しているということでしょうか。
以下ではこのペアの言葉を、かなり長いのですが引用します。ここで語られていることはイタリアだけでなく、どの国のサーチファンドにおいても非常に参考になると思うからです。また、イタリア語訳はGoogle翻訳を使っていますが、自分でチェックが出来ないので(イタリア語が分からないのでw)少し違う表現があるかも知れませんがご容赦下さい。
“i capitali raccolti serviranno a finanziare la fase di ricerca di una pmi da acquisire e gestire attivamente con un’ottica di lungo termine. Il nuovo search fund si è dato fino a 30 mesi di tempo per individuare il target giusto, che sarà indicativamente una pmi con un enterprise value compreso tra i 10 e i 30 milioni di euro e un ebitda compreso tra 1-,5 e 5 milioni, un’azienda finanziariamente stabile e attiva in un mercato frammentato con capex basse. Molte delle pmi italiane che rientrano in questi canoni offrono prodotti e servizi di elevatissima qualità, ma negli ultimi anni sono state messe alla prova dalle sfide imposte dalla globalizzazione, dalla digitalizzazione, dalla rivoluzione green e dalla pandemia. In aggiunta, in Italia stanno emergendo per numerose pmi sfide legate al ricambio generazionale”.
(意訳) 今回調達した資金は、中小企業サーチ活動を使途とし、長期的な視点で運用して行きます。この新しいサーチファンドは、30ヶ月以内にターゲットを見つけることをゴールとし、企業価値1,000万から3,000万ユーロ(13億円~39億円)、EBITDAが100万から500万(1.3億円~6.5億円)の細分化された市場において事業を展開している財務的に安定した企業で、設備投資額が少ない企業を想定しています。これらの基準に当てはまるイタリアの中小企業の多くは、非常に質の高い製品やサービスを提供していますが、近年ではグローバル化、デジタル化、グリーン革命、パンデミックなどがもたらす課題に直面しています。さらにイタリアの多くの中小企業では、世代交代に関する課題が浮上しています。
彼ら二人がサーチファンドの過去の成功事例をよく研究していることが分かります。「細分化された市場(ガリバーがいない市場)」「財務的に安定している」「設備投資が少ない」というのは、サーチファンドの教科書通りのターゲット属性と言えます。
また近年のグローバル化によって様々な課題に直面している企業や、世代交代の課題を抱えた企業に、若さとやる気がある2人の企業家が参画して企業を再成長へ導こうという目論見は、サーチファンドの誕生趣旨そのものです。
こうして考えてくると、米国→英国/スペインと渡ったサーチファンドが時間を経て、イタリア国内に入り、しかもセオリーをしっかり踏まえたファンドレイズの実績が積みつつあることがうかがい知れます(だからといってイグジットまでが約束されている訳では全くありませんが)。
セオリーに即した伝統的スタイルのサーチファンドが(たとえ1例に過ぎないとしても)生まれる背景には、様々な情報やインフラがイタリア国内で整っているのだと思います。しかも僅か2か月で約7,300万円の資金調達という実績。こうした事例が突然変異的に生まれるはずはなく、恐らくイタリア国内の彼らの周囲でもこうした事例が徐々に生まれているのだと推察します。
IESEのグラフをみると、イタリア以外でもドイツやフランスでも過去数年で複数のサーチファンドが立ち上がっています。個別案件の詳細はもう少し時間をかけて調べればわかると思いますが、それはまた別の機会に取っておきたいと思います。
ぶっちぎり先行の米国以外でインターナショナルに広がっているようですが、この先の5年くらいの間にどこまで広がりを見せるのか、10年経った時に各国でどれだけの件数が積みあがっているかは蓋を開けてみないと分かりません。
次回は欧州以外の国の状況もみてみます。