サーチャーに必要な3つの資質(3/3)_貪欲な学習者_コラム010
はじめに
このコラムは事業承継先のサーチ活動を続ける筆者が、日々感じたことを徒然に記録するものです。サーチファンドについて体系的に知りたい方はこちらをご覧下さい。
ハーバードが考えるサーチャーに必要な3つの資質
前回に続き、Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー(2018年5月号)掲載の「買収型起業に成功する法」(リチャード S. ルバック、ロイス・ヨドコフ著)で語られるサーチャーに必要な3つの資質についてみてみましょう。(※1) 今回は「意欲的な学習者であること(最も重要)」です。
資質①: 自信と説得力
資質②: 粘り強さ
資質③: 意欲的な学習者であること(最も重要)
学習する前に、まずは自分の弱点を自覚すること
これは実際にサーチ活動をしている私自身非常に実感している点ですが、改めてその言及個所を抜粋してみます。
最も重要と思われる資質は、意欲的な学習者でなければならないことである。買収先を探している間はずっと、馴染みの薄い業界、セクター、企業について猛スピードで学習しなくてはならない。興味深いターゲットを見出したら、その企業が手掛けるビジネスについて知識を蓄える必要がある。そしてオーナー兼CEOになった暁には、全職能に関する専門知識を習得して好奇心を絶やさず、業務を通じて成長できるし、またそうすべきだと自覚することが必要だ。(前掲書より抜粋)
サーチャーに求められるスキルや経験は、まずいくつかの業界へ精通していること、候補先のソーシング、対象先のビジネス構造を把握したり財務分析ができること、オーナー経営者や投資家へのプレゼン力や交渉力、そして当たり前ですが投資実行後の経営力など、ビジネスにおける360度方面から腕試しをされるような感じです。
しかし、全方位に得意技を持っている方はなかなかいないのではないかとも思います。例えば私自身は、候補先のソーシングに加えて、そもそも企業買収の経験がほとんどありません。前職でIM(インフォメーション・メモランダム、自社を買い手に売り込むための資料)の作成を請け負ったことがあるくらいです。「そんな状態でよくサーチャーが務まるな」とご指摘を受けそうですが。
この点を自覚していために、サーチ活動スタートはかなり最初は慎重でしたし、㈱サーチファンド・ジャパンという心強いアクセラレータからの支援があってこその現在の活動です。
そして弱点を補強すること
とはいえ弱点ばかりではサーチャーは務まりませんから、この不得意分野を補強しなくてはなりません。
そこで学習力というか素直にガンガン吸収する資質が求められるのだと思います。
ビジネスにおいて常に学び続けることは一般論として誰にとっても重要なことですが、サーチファンドという総合格闘技的な仕事だからこそ、必然的に不得意分野が少なからず露呈してしまう→自分でやるからこそ不得意のままで放置できない→だから学ぶしかない、ということなんだと思います。
私の弱点は、何と言っても候補案件のソーシング力(営業力)とM&Aプロセスの経験のなさ(かなり致命的!)を補強しなくてはなりません。この連載は基本的にサーチャーさん向けに書いているので、こんなことをしているよりも1件でも多くコールドコールした方が良いのです(でもこの連載は続けようと思っています)。
最後に、この論考の本編ともいうべきHBR Guide to Buying a Small Businessから同じポイントに言及している個所を抜き出してみたいと思います。
Learning can be hard. You must be willing to make mistakes as you test your emerging understanding—even if the mistakes cost you your own time and money. (...) If you are curious and intrigued by business and humble enough to recognize where you need to grow, you’ll love this challenge. If not, you’ll be miserable.
(意訳)学習には困難が伴います。中途半端な理解しかないものにトライして失敗することを ー例えその失敗があなたの時間とお金を奪うものだったとしてもー 進んでやらなくてはなりません。(中略)ビジネスに対して好奇心旺盛で、自分の弱点を謙虚に認識できる人ならば、きっとこのチャレンジ(=サーチファンド)を気に入ることでしょう。そうでなければ、惨めな結末になるだけです。
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