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僕は山田に愛されたかったし、市川は僕を追い越していった


「僕の心のやばい奴」

正直の話すと僕はこのアニメを一話切りした。

市川という主人公が痛すぎる。

そんな理由で切った僕の思いの裏には自分の黒歴史が思い出されていた。
僕は特別なのではないか?

そんな傲慢さと少しの自信過剰を黒く塗りつぶしてしまったのが今の僕だ。

僕は山田に愛されたかった

どうせこの主人公のことでも好きになったモデル×巨乳×高身長×美少女との一方通行の恋愛と少年漫画特有の下ネタを描いた高木さんの何番煎じなのかわからないくらい使い古されたネタの作品なのかと思っていた。

しかし明確に山田というヒロインが市川というキャラに好意を寄せていく過程がしっかり描かれている。

市川も僕も自分を愛するのが得意ではない人種だと思う。それは十数年生きてきた積みあがっている積み木の上にたどり着いた結論だ。そんな市川の積みあがったものを総評して山田は恋をした。ずるいよ。そんな自分を好きになってくれた山田を市川は好きになった。ずるいよ。

ここまで見たらもう再生する手は止まらなかった。僕は山田に愛されたかった。いやあの時の自分を肯定してほしかったのだ。

だから最初に羞恥心を抱いた主人公を同じ優しさを持っている主人公を愛してくれた山田に僕はやられたのだ。そして僕は山田に愛される市川を求めてアニメを再生し続けた。僕は誰かに僕を肯定してもらった気になれたのだ。

山田が市川に好意を向けていく過程には幸せすら感じていた。そのくらい僕は市川に自分を憑依させていた。こんなことほとんどなかったのに。主人公に感情移入する必要なんてないと思っていたのに。

市川は僕を追い越していった

一期も後半を迎えてくると少しずつ市川が成長していることに気づいてくる。市川が山田に好意に気づき始めたのだ。きっかけはきっと手を放しても掴んできてくれたからであろう。欲しかったゲームも仲のいい友達も手放した市川がついに手放したくないものを手に入れたのだ。

誰かに好きになってもらえるってどれだけ幸せなことなのだろうかといつも僕は思う。でもそれを認めるだけの強さすら僕は持っていない。ボディータッチが多いとかLINEの返信がちゃんと帰ってくるとか遊びに誘ってもちゃんとOKが来るとかそんなわかりやすいヒントですら疑いを持つ人間なのだ。相手は本当にただ優しい人間なのではないかと。そうやって嫌われる数パーセントの確率を恐れてその幸せを投げ捨てることを許容できるくらい僕は弱くて脆い。

だからこそ一人が好きだって理由をつけてフィクションに逃げる。フィクションはいつだって僕を好きになってはくれないけど傷つけても来ない。そして一人の寂しさだけはちゃんと埋めてくれる。だから僕はアニメを観るし、小説を読むし、映画も観るし、ドラマも観る。だけど市川はそんな僕を追い抜いて山田の方に走っていった。

最初はあの時の僕と同じだったはずなのに、痛かった僕だったはずなのに、最終回の最後市川は僕の見えない世界までたどり着いてしまった。

少しずつカッコよくなっていく市川を見ながら「先に行かないでよ」と思いながら僕は二期を観続けていた。一話で感じた痛い昔の僕はもう市川の中にはいない。ちゃんと自分を認められた強い人間だ。

皆僕に優しくて僕だけ皆に優しくない

なんで皆僕の言う事を聞いてくれるんだよ。こっちから連絡しなくても遊びに誘ってくれるんだよ。やりたくもないゲームでもやってくれるんだよ。僕に嫌悪を向けてこないんだよ。

皆が優しくなければいいのに、っていつも僕は思ってしまう。
ただ僕が好きなだけならいいのにって思ってしまう

答えを聞く勇気もない癖に
認める勇気もない癖に

僕は山田に愛されたかったし、市川は僕を追い抜いて行った。
僕も少しだけ変わってみようと思う。

敬具 映画楽しみにしてます。

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