あれから

結婚する事になった。
相手は9つ上の大人。
私みたいな人間は子供扱いされて相手にすらされないと思っていたのに。

私には二つ直しなさいと言われた事があった。
①自分に都合良くごまかさない
②酒に飲んでも飲まれるな

残念ながらこれが私の全てかと言わんばかりに直す事が難しかった。
何か言われればごまかして、酔えば酔うほど酒は進んだ。

『一度ならず二度までも...』
妻は呆れ果てた顔で私を見下ろした。
私が目を覚ましたのは病院のベッド。
昨晩の最後の記憶は気持ち悪すぎて始発のホームで...

『すまん...』
この頃もう謝る事を挨拶としていた。
何かあれば衝突し、衝突する度に先に折れるのは私。
何故ならそれで丸く治るから。
ただ、そうして積み重なっていく見えないストレスはこうして自爆を生んでいた。

頭が酷く痛むだけ...
『お大事に』
看護婦からの言葉は普通、ありがとうと感謝するものなのにその時私は看護婦からの配慮すらも皮肉られた気になった。

壊れていた。
何か必要な物がそこにはなく、必要とされてるか探る毎日を過ごしていた。
これもその反動なんだと自分を正当化する事すら出来ない。
自分を押し殺す事が秘訣だなんて結婚を控える奴に口走った自分が嫌になる。

最悪な朝。
気分も身体も全てがグロッキーだ。
翌朝は会話を交わさずいつもより三本早い電車へ乗り込んだ。
職場の喫煙所で何本タバコをふかしただろう。
やるせなさと少し背中を丸くした自分が情けなかった。

順調だった仕事にもストレスは降りかかり始めた。
割りに合わない仕事が増えては自分にしか出来ない仕事だと言い聞かせた。
夜遅くに帰宅しては出迎えすらされなくなり
暗い我が家の明かりを付けて出来合の惣菜を缶ビールと食らった。

想像していたドラマの様な家庭像なんて
ブラウン管の向こう側の世界でしかなく
それを創造出来なかったのも自分がきっと
大人になりきれず弱い人間だからなのだろうと
妥協し続ける毎日が家に帰宅する気を失せさせていく。

【彼女は彼とどんな家庭を築いているだろう】