非凡と平凡

キザな言い回しはひかえたいところだが
上を見れば空が見えて、下を見れば地に足がついている。
当たり前でいつも通りで普通なのが非日常的な出来事の後にはありがたく思えたり、虚しく感じたりする。
しかしそれは一時的なもので毎日を繰り返していくとまた薄れる。
環境とやらに馴染んでいく、自然体へと戻っていく、平凡な日常を過ごしていく。

私は彼女と夢の様なひとときを過ごす為の最高のデートプランを計画した。
一時も無駄にすることなく時間の流れに合わせて動いていく二人の足取りは軽かった。

鈍行列車に飛び乗り、1時間半もの時間を移動しても二人でいればあっという間だった。
海沿いにある水族館についた。
彼女にとって初めての水族館デートだった。
手を繋ぎ、色々な生き物を見ては二人で向き合って笑って楽しんでいた。
2時間近く居たはずの水族館も体感時間は10分ほどだったろうか。
海岸沿いを散歩して、海の見えるイタリアンで昼からワインを飲んで次の行き先について話していた。
次に辿り着いたのは中華街。
食べ歩きデートと行きたいところではあったがあいにく二人とも胃袋と都合が合わなかった。
食べ歩きを翌日に変更してまずは今回のメイン、高級ホテルへ。
市街地を一望できる高さを誇るこのホテルは彼女にとって考えられない程夢の中だったらしい。
無邪気に笑って、眺める景色をずっと見ていた。
本当にシンデレラになったみたいだと喜んでくれる彼女を見て嬉しかった。

夜を迎え、次は小洒落た和食屋へ。
少食な彼女があんなに美味しそうに食べるのを初めて見た。

そしてあの景色を夜景に変えてどう彩っているのか二人で楽しみにしながらワインを買った。
それは本当に感動的でドラマや映画の様なひとときだった。
なにをしても絵になる二人だけの光景は思い出と言うよりも夢物語に近い。

こんなデートの後に戻る日常は、本当に平凡で私には虚しくて仕方がない。

【彼女もまたシンデレラの様に時計の針を迎えた】