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快楽殺人者の言い分

快楽殺人者は言った。
俺は俺以外の人間全て生きているように感じられないんだ。
それは俺にとって実際に生きていない。
でもそれは俺が自分の鏡を観ているからだ。
俺は俺しかいない世界に生きていることを知っている。
君が俺に「殺すな。」と言うならば俺に人が生きていることをわからせてくれ。

僕は彼に言った。
あのな、人間を良く観察し給え。
自分が味わいたいだけの為に動物を生きたまま解体して好きなだけ貪り喰らって喜んでるじゃないか。
それが人間が生きているってことさ。わからない?
動物がどんなに苦しもうとも自分の欲望の為に動物を殺し続けて生きる。
それが生きている人間だ。

殺されゆく動物たちは、頸動脈からどくどく流れてくる熱い自分の血に噎せながら君と同じこと想ってるさ。
これが”生きている人間”なのだろうか。ってね。
「これが、人間か。」
そう想ってるに決まってるやろう。
君は家畜か。人間に惨殺される家畜と同じレベルのことしか考えられないのか。

君は人間じゃない。人間ならば何故人間を殺したくなるんだ。自分の欲望の為だけに。
自分勝手に生きるのも程々にし給えよ君。
君は家畜だろう。人間ならば、自分が良く生きる為に、自分の快楽の為に、どうして人が殺せようか?
人は生きたいと叫んでるではないか。人が殺し続ける家畜と同じようにね。

快楽殺人者は言った。
俺は人間じゃないのかあ。納得が行く。
俺は人間じゃないし、実際にやっぱり生きてもいないんだろう。
俺は生きている価値なんてないと想ってるよ。人間を殺すことを何とも想えないからね。
俺と同じに、人間は生きる価値がないんだよ。
生きる価値がないとわかってるから、

虚しくて動物を殺し続けてるんだ。
動物が発している「殺されたくはない。」って気持ちがわからないんだ。
本当にそれがわかってたなら、殺さないさ。
俺ももしそれがわかるならば、それさえ俺が知ることができるならば、もう人を殺して生きることをやめられるだろう。
この大罪を積み上げてゆくこと

をやっとストップさせられるんだ。
でも俺はそれは無理だろうと想っている。
どうやって生きてもいなければ人間でもない俺がそれを知ることができるんだ。
無理な話さ、俺は絶望的に虚しい存在だ。
だから今から君を殺しても良いだろうか。
俺は今、屠殺人の気持ちで、君を家畜としてしか観ていない。

僕は彼に言った。
まあそう焦るなよ。もう少し考えようではないか。
僕は生きている喜びがある。その証拠に、もう惨殺された動物の死体を食べるなんて虚しいことをやめたんだ。
生きていることが人間の幸福であるのだと僕は覚った。
だから幸福である僕は最早、動物を殺す必要がなくなった。

でも僕が、前の僕のように不幸に堕落するとき、また殺し続けて生きるようになるかもしれない。
そうなってから、僕を殺し給え。
殺すに値すると想わないかね。
何の為に、僕は生きてるのかね。
なんで人間が動物を殺してまで生きてゆかねばならないのかね。
人間は何様なのかね。
そう想わないかね。

俺に殺されたくないならば俺を殺したらどうなんだ。
生きている価値がないから、人を殺すんだ。
生きている価値がないから、動物を殺すんだよ。
違うのか。
俺が人を殺すのは、それが俺だからだ。
殺すしか、価値のないことを知ってるからだ。
みんな想ってるよ。家畜も、人を殺す人間も、価値はない。

”生きている”とも想われていない。
それは彼らのなかで、”生きていない”んだ。
そう彼らは真っ黒な目をして家畜たちと人を殺してきた俺という人間を観て、判断する。
”生きてゆく価値はない”
だから殺しても構わない存在なんだ。彼らのなかで俺たちは。

俺たちは彼らのなかで人間でもなければ生きる価値も生きてゆく価値もない。
だから殺され続ける。
彼らはその権利を手にしていると信じていて、殺すことに対して、本当に苦しみ続けることもない。
俺たちは、彼らによって殺され続けることを俺は知っている。
生きて行ってはならない存在なんだ。

生きてゆくことが、決して許されない存在なんだ。
どんなに俺たちがそれでも生きたいと願っても、彼らは俺たちが殺されるべき存在であることを信じている。
俺は確かにたくさんの人を、自分の快楽の為に拷問にかけて殺してきた。
それは生きているうちに解体して殺すという屠殺方法とまったく同じだ。

俺が殺してきた人々は、まるで屠殺される寸前の家畜のような目で俺を見つめ、そして必死に懇願するんだ。
「殺さないでくれ。」と。
でも一度も助けなかった。
何故、”それ”を助けなくてはならないのか、俺にわからないんだ。
何故、彼らは、自分たちは好きなだけ動物を苦しめて殺し続けて来たのに、

自分はそれでも生きてゆくべきで、助けられるべきで、殺されるべき存在ではないと心から信じることができるんだろう。
彼らは自分が生きていることを疑わないのか。
俺は人がわからない。
わかりたくもないんだ。
俺はもう観たくないんだよ。
人間を観たくない。

それでも自分は生きていると信じている人間を観ることに堪えられない。
いなくなってほしいんだ。ただの死体となり、ただの腐った肉になってほしいんだ。
それは彼らが食べてきたものではないか。
自分の食べてきたその死体と腐肉にもう戻って、
そして彼らは家畜となって生まれ変わって来て欲しいんだ。

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