アオドが、旅立ったよ。

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7月27日の朝にゴミを捨てに行ったときにマンションの階段の上で、突っ伏していたので、彼(彼女)を僕は拾って家に持ち帰った。

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7月27日am9:45 人参の塔にしがみついているアオド。

あとで甲虫目コガネムシ科の草食昆虫であるアオドウガネであることを知ったので、名を「アオド」と名付けた。

これまで、何度とコガネムシ科の成虫をマンションの下の植木の場所や近所の公園に逃しに行ったことがある。

だのに何故か、この朝に限って、僕は彼(彼女)を我家に持ち帰ってきた、のは何故かと、考えていた。

僕は確かに昆虫は好きだが、これまで家に持ち帰って飼った者はあまりいなかった。

ほとんどが買った野菜についていた蛾の幼虫である。

アオド

am11:36 僕の手にしがみついているアオド

アオドは、僕が初めて飼ったコガネムシ科の昆虫であった。

僕は、アオドを拾って家で飼うことにした理由を考えていたが、一つは、叶わぬ苦しい片想いをしていて一段と寂しかったのと、僕がかつて仄かに恋心を寄せていた三浦春馬が、僕の愛する詩人、中原中也と同じ三十歳で此の世を去ったことが、少しく関係しているんぢゃないか、と想った。

いつもより、寂しくてたまらなかったので、僕はきっとアオドを家に持ち帰って、同居することにした。

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am11:37 カメラ目線?のアオド

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pm12:39 樹皮パウダーとアガベシロップを混ぜたコットンにしがみついて食しているアオド

ある生き物を、飼って、じっくりと観察してみて初めてわかることがある。

それはとても愛らしく、けなげでしょうがない生命であるということを。

こんなにちいさな生き物なのに、アオドは大変きれい好きで、しょっちゅう身繕いして、器用に6本の脚でからだをきれいにしていた。

アオドを、外へ逃してやることのほうが彼(彼女)にとって、幸福なことなのだと、想う自分を殺すかのようにして、僕はアオドをちいさな容れ物に閉じ込めて、この、たった12日間を、アオドと共に暮らした。

アオドは、昨夜、8月7日の夜に姿を見せなかった。

毎晩、夜行性である彼は潜っていた土のなかから出てきて、メロンやバナナに齧りついて食べていたのに、昨夜は一度も、アオドは出てこなかった。

僕は心配だったけれども、いつものようにお酒を飲んで布団に倒れ込んで眠った。

それで今朝、虫カゴのなかをよく探してみると、植えた植物の根元に、頭を突っ伏してケツだけ見せているアオドの姿を発見した。

僕はアオドを掴んで、生きているかどうか確認した。すると彼(彼女)は、僕の指に弱々しくも、脚でしがみついたので、僕はホッとした。

狭いケースのなかに、たくさんの植物を植えすぎて、潜り込めなくなったのか、腐葉土の量が少なかったからか、湿度が高すぎたのか、いや何よりも、エアコンが壊れてしまって、この暑さによって死にかけているのか、寿命なのか、と僕は思案して、歩いて20分かそこらのDAISOに赴いてもう少し通気性の良い虫カゴを買ってこようかと悩んだ。

外気温は33度、夕方になってからにしようか…と考えながら、顔を洗って歯を磨いて、アオドを見た。

アオドを手に載せた。彼(彼女)はもう、動かなかった。

新しいメロンの上に載せても、ころんとひっくり返った。

僕に最後に触れられるのを、アオドは待っていたのだろうかと、想った。

アオドは、ひとりで旅立った。

時間が経って、僕はひとりで泣いていたが、DAISOに行ってちいさな小箱を買ってきて、近所のスーパーで花を買ってきて、その棺のなかに、アオドを入れて弔った。

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アオドの棺をパソコンデスクの右の棚に置いても、つい虫カゴを置いていた部屋の左の角に何度と目を遣ってしまう。

アオドの魂は、いま何処にいるのだろう?

寂しいよ…アオド。もっと永く、一緒に暮らしたかったんだよ。








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