若者のODはどうしたら止められるか
株式会社OX3代表の真田です。
最近若者のオーバードーズ(OD)が度々ニュースに取り上げられています。オーバードーズとは決められた用量や回数を大きく超えて、本来の目的ではない方法で医薬品を使用することを指します。
一昔前までは覚せい剤や違法薬物などの話題が多かったのに対し、ここ数年で一気にその存在が表に出てくるようになりました。
本日は、薬剤師である僕の観点から、若者のOD問題について考察、意見をまとめていきたいと思います。
若者のオーバードーズはだれの責任?
ODの責任は薬剤師?
記事で若者のODの責任は薬剤師にあるみたいな記事をみたことがあります。確かに医薬品を扱うプロとして、窓口が薬剤師であることは間違いありません。
しかしだからと言って、薬剤師の責任というのはあまりにも暴論すぎる気がするというのが僕の意見です。
ODをする若者は、薬をどうやって手に入れていると思いますか?ドラッグストアや薬局1店舗で何箱も買っていると思いますか?そんなわけはないでしょう。しかも薬もそこまで安いものでもないですし、そう何箱も若者が買い集められるとは思えません。
おそらく何店舗かめぐって買い集めているのか、集団でかき集めている(悪い大人が噛んでいる)のか、そんなところでしょう。
これを薬剤師さんに「止めろ」というのは、さすがに「そんな無茶な」と思います。
ではODは誰の責任なのでしょうか?
ODはODした本人とその周りの人の責任
まず大前提、「オーバードーズはダメなこと(やってはいけないこと)」ということを知らずにやっている人はいないと思います。
そう考えると厳しい言い方をしますが、やってはいけないと分かったうえでやっているのであれば、それはもう本人の責任と言わざるを得ません。
「辛い気持ちから解放されたい」「少しでも紛らわしたい」みたいな気持ちからやってしまうと書いてありますが、正直甘えだと思います。つらい気持ちを抱えたことがない人なんてほとんどいないと思いますし、だからと言ってやってはいけないことをしていい理由にはならないですからね。
と、いうのが正直な本音です。
しかしそうも言っていられないというのが現実でしょう。僕はよく知らないですが、きっとトー横界隈みたいな居場所を求めてきてしまう人は、周囲の環境が生きづらいのかもしれません。
そう考えるとその子を受け入れるまではいかなくても、理解してあげようとしなかった周りの人の責任というのもあるでしょう。
どこまでいったって、最終的に決断するのは本人であり、その本人の意思決定に影響を及ぼすのが周りの環境です。ODに限らず、軽犯罪やいじめ、ドラッグに関しても同じように考えられると思います。
つまり、「誰のせいか」を追求することは、この結論にしかたどり着かないはずなので、特に解決に際して意味をなさないということです。
なので別の観点から、どうしたらこれを減らせるのか?についてい考えていきましょう。
若者のオーバードーズ事件を減らすには?
なぜ市販薬のODが増えたのか
ここ数年で、なぜ市販薬ODというのが増えたのか?これは時代の変化から考えていくのが良いかなと思います。
まずは2015年にスマホの普及率は50%を超えました。つまり多くの人がスマートフォンを当たり前に持つ時代になったわけです。
インターネットへのアクセス手段が、パソコン→スマホに変わっていったということですね。それがどういうことかというと、「簡単に」「たくさんの」情報にアクセスできるようになったということ。
そして、ネット上に見ず知らずの人との「コミュニティ」が簡単に形成されるようになったということです。
その結果、良い情報も悪い情報も簡単に手に入るようになり、良いことも悪いことも共感・肯定してくれるコミュニティに簡単にアクセスできるようになりました。
ODに関しては、悪い情報×悪い共感コミュニティが生んだ産物だと思っています。ODについて広がり、それを肯定してくれるコミュニティに簡単に属することによって一気に広がったのだと思います。
普段過ごしている環境で肯定してもらえていない、受け入れられていない人にとっては、そこは逃げ道になってしまっているのでしょう。
ではそれがわかったところで、どう対策していけばいいのでしょうか。
一種の啓蒙活動は必要
「オーバードーズはダメなこと」ということは知っていても、どれだけやばいことか?について知っている人はそう多くないと思います。
例えばタバコについては、そこらじゅうで真っ黒な肺の画像を見させられて育ってきているため、如何に体に悪いかを知らない人はいないでしょう。ある種「嫌悪感」だったり「不快感」を植え付けることによって、一定効果は上げられるかなと思います。
教育を改革する
一番やるべきだと思っているのが、ネットリテラシーに関する教育と自分で考えるようになるための教育です。今の時代、インターネットにアクセスすることをやめることは不可能ですし、うまく使えば本当に良いものだと思っています。
しかしあまりにも情報を活用する側ではなく、情報に踊らされる側の人間が多すぎる気がします。それは「自分で考える」のではなく、「答えが与えられる」教育が、いまだに学校教育のベースになっているからです。
総合的な探究の時間など、自分で考えるコトをさせるための教科も出てきていますが、まだまだ足りないと思っています。
根本的に解決するためには、やはり自分で考えて判断する力を養わないといけないわけです。そんな簡単なことではないと思いますが、突貫工事の対症療法は意味ないと思っています。そう考えると医療従事者も、もっと知識だけでなく医療に対しての考え方を若者に伝えていけるようにならないといけないなと思うばかりです。
市販薬の販売規制は慎重に
一部対策として、市販薬に対する販売規制までかけるのは、ちょっとやりすぎかなと思います。
例えば未成年の喫煙や飲酒は、簡単に自販機で買えないようにしたり、年齢確認を厳しくしたりといろいろ対策を進めてきており、その結果一定の成果は出ているのかもしれません。
違うところは、未成年のタバコやお酒は法律で禁止されている嗜好品なのに対し、医薬品は法律でも禁止されていないですし、嗜好品ではないことです。
市販薬へ気軽にアクセスできることは、セルフメディケーションの観点からも非常に大切です。まずは薬剤師や登録販売者が意思を持って薬の販売を行い、複数販売に関しては意識を高めて接客するという姿勢から養っていけばよいのかなと。
規制をかけることは簡単ですが、一度かけてしまった規制を緩和するのはそう簡単ではありません。パワープレーではなく、根本的な問題解決を進めていってほしいなと思うばかりです。
最後に
本日はODについて思うこと書いてみました。
初めに薬剤師の責任ではないという話をしましたら、薬に関わっている以上一定の責任は感じて行動しないといけないなと思っています。
5年前にとある中学校にて、「薬学講座」を行い麻薬や未成年飲酒、喫煙の危険性について授業をしたのを思い出しました。
きっと今の世代の子たちには、また違った方法で伝えないといけないんだろうなと思ったのと同時に、いつかそういった教育活動もしていけたらなと感じました。