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医師の長時間労働による自殺について思うこと

株式会社OX3代表の真田です。本日ショッキングなニュースが入ってきたので、今日はそのことについて書いていきたいと思います。

神戸市の甲南医療センターに勤める26歳の医師が、昨年5月に自殺してしまったニュース。
自殺するまでの3ヶ月間休日がなく、時間外労働は月207時間に上るという。

同じ世代の医療従事者がこういったことになってしまったことに、非常に残念に思うとともに、どうしたらこういった事象が発生しなくなるのか?自分なりに考えてみたのでまとめてみる。

病院は加害者なのか?

病院の言い分はこうだ。「病院にいた時間全てが労働時間ではなく、『自己研鑽』の時間も含まれている。学会発表も当院からの指示ではなく、当院が指示した範囲での業務量は適切だった」

ここでの論点は労働の定義と指示の範囲かなと思っている。

まず自己研鑽の時間は労働に入るか?
個人的には入らないと思っている。自己が研鑽されることで患者様に対する病院からの提供価値は間接的に上がるかもしれないが、直接的恩恵を得ているのはその個人。あくまで目的は自己のスキルを高めることなので、これは業務外として病院の言い分もわかる。

あくまで雇用関係にある以上、従業員は雇用主に対して提供した価値に対する報酬を得るべきだと思っているので、やはり指示起点になるだろう。

ただし、ここで2つの論点が出てくる。
①学会発表は自己研鑽か?病院のPRにはならないか?
②暗黙の了解は指示に当たるのか?拒否権は存在するのか?

①に関しては、正直かなり微妙なところではあるが、個人的には院からの指示でなければ「自己研鑽」と定義し、賃金が発生しないとしてもいいのかなと思っています。

ただ問題は②で、おそらく院内では「若手は学会に出すものだ」「学会は毎年○人は出さないといけない、前回は△△さんが出したから…」みたいな言葉が発せられていたり、それに付帯した雰囲気みたいなのが形成されている可能性はかなり高いと思う。

実際に大学病院に勤めている知り合いに話を聞いたが、拒否権はあるものの、その権利を行使できない雰囲気は確かにあるとのこと。

僕は前職、対高校向けにDX支援をしていたが、その際の「部活」にすごく構造としては近い気がした。実際部活を働きがいに教師をやっている人もいれば、無理やりやらされている人もいる。手当なんてあってないようなものだ。

学会に関しては、おそらく拒否権がある分部活と比べたら幾分かマシな気がするが、暗黙のルールによって潰されている拒否権は、あってないようなものだと思う。それを拒否できるほど人間は強くないのだから。
だからといって暗黙のルール=指示とするのも、あまりに暴論な気もするので難しい。

正直この観点に関してだけいうと、「拒否権はあるわけだから、人によっては断れる」「暗黙のルールを断れない人だっている」
みたいな当人の性格に依存した会話になってしまうので、客観的事実だけで話すと、拒否権があるなら自己研鑽(学会発表)は労働にカウントしないで概ね同意である。

※重ねてにはなるが、院側が言っていた可能性はあるため、真実は当人たちしかわからないですし、指示していたとしたらいただけない

誰が悪いのか?

では誰が悪いのかというと、それでもやっぱり病院側である、というのが僕の意見です。

なぜなら従業員をマネジメントする義務が、病院側にはあるはずだから。

まず大前提として、ずっと言い続けているが、人間は環境には勝てないと思っている。

同じ労働条件だったとしても、
・常日頃から意見が言いやすく、相談しやすい環境
・相談しなくても声をかけてくれる人間関係
・人的資本を守るための制度設計ができている
(例えば定期的なストレスチェック、適切な労働管理システム、エスカレーションシステムなど)
が整っている職場と、そうでない職場ではおそらく精神的な負担は大きく変わっているはず。

だから精神論で個人に期待するのではなく、構造的にそれが起こらなくすることが大切で、それをやる必要があるのが、雇用主であり会社であると思っています。

100%ではないにしろ、そして直接的な指示をしていないにせよ、全体の事件を客観的に捉えると、やはり院側の責任の方が大きいと思う。
病院や薬局その他医療機関には、今回のニュースを機に、本質的な制度設計から見直してほしいと思いました。

最後に

おそらく今回の被害者の方も、就職する際にある程度忙しくなることは想定していたはず。
でも人間は自分のことをあまりにも知らなさすぎるため、想定していた自分と現実の自分のギャップに押しつぶされてしまうことも容易にあります。

個人としてできることとしては、やはり「自分を知ること」。
行動傾向をあらかじめ理解し、何か起こった際の自分の行動をあらかじめ決めておくこと。

そして自分が一番輝ける環境に身をおくことが大切。
確かに学会でたくさん発表して評価されている著名な先輩方はカッコよく映るかもしれません。でもあなたはあなた自身が一番輝ける場で、貢献していただければどれが一番だと思います。

会社としては、もちろん労働力もタダではないので難しい部分もあるとは思いますが、小手先だけの対応はしないで欲しい。
やってることは痛くなったらとりあえずNSAIDsみたいなもんですよ、常に対症療法しかしないみたいな笑

それじゃダメですよね。
今回の報道を機に、少しでも業界が働きやすい方向に向かってくれたらいいなと思いますし、より良い業界にするために僕も尽力したいと思います!

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