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XR最新動向(XRKaigi参加レポ)

12/12にXRKaigiに行ってきました。私は三度目の参加です。
セッションはアーカイブに期待して、ほぼ聴講していません。展示ブースのレポになります。写真もほぼ撮らなかったので載せてません…。


総括

全体の動向

  • この3年でXRの利用シーンがエンタメ・クリエイターからビジネスに大きくシフトした。

  • XRそのものが成長期から成熟期に入りつつある?未知の可能性にワクワクするフェーズから、社会に落とし込むフェーズに移ってきている。

  • メタバースは下火。MR・空間コンピューティングがメインのトレンド。

デバイスの動向

  • ARデバイスが頑張っている。VRデバイスもビデオパススルー機能搭載が基本で、MR・空間コンピューティング色が強かった。

  • VR・MRデバイスは、解像度が頭打ちのように感じた。あとは、各社がユースケースに合わせて、尖った部分をつくっていく形になりそう。今回新しく体験したデバイスにはスタンドアロンはなさそうだった。

  • ARデバイスの波を感じた。ただ、見やすさも装着感もXRealが頭ひとつ出ている。MiRZAはパートナー企業を募っているだけあり、様々なブースで見かけた。HololensやMagic Leapのような、高機能ARグラスはなくなってしまった…?

  • 3Dディスプレイをちらほら見かけた。展示会によさそう。

システム・ソリューションの動向

  • 新しいユースケースを開拓していくフェーズではなくなったという印象。今あるデバイスの制約が大きいかも。ビジネス・エンタメともに、1からつくりあげるSI・コンサル的な会社も多く見受けられた。

  • ビジネス向けソリューションは、①研修 ②販促・PR ③作業支援 ④設計 +⑤教育・自治体 の5パターンにカテゴライズできそう。これは昨年度から変わらず。メタバース系の取組がかなり減ったように感じた。

  • ビジネス向けはデバイスの制約(実働時間が足りない、スタンドアロンにならない、…)で実用化に至らないことも多いらしい。この制約を乗り越えようとするほどXRに熱量のある事業者がいないのも、実用化に至らない理由の一つ。

  • エンタメ向けは、遊園地やゲームセンタなど、専用の場所での利用を前提とした複数人・体験型VRゲームが多かった。自宅の場合は、気軽に楽しめる、がキーワードのように感じた。

XRKaigiの動向

  • ブース数が減った?サイズの大きいブースが増えた?からか、1日で大体目を通せた。

  • ビジネス向け展示会の色が強くなったように感じた。大きいブースはビジネス向けのものが多かった。クリエイター用のステージが新たに組まれていたが、クリエイター色の強いものはその中で盛り上がってるような印象を受けた。

デバイスの詳細

VR・MRデバイス

MeganeX (Shitrail, Panasonic)
ハンドトラッキングやカメラのないVR専用機。360度動画とVRChatを体験。
特徴は圧倒的軽さ。頭の締めつけも皆無。VRChatに長居することを目的とされて作っているだけある。目の周りのゴムのフィット感はいまいち。
解像度はとても良い。文字がスマホで見た時と同様にパキッと見える。今後VR空間でもフォントに拘りたくなるかも。顔を動かすとレンズ越しで見たような歪みが発生するが、おそらく最終調整で直るとのこと。

XRヘッドマウントディスプレイ (ソニー)
独特なコントローラをもつパススルー対応機。資料の確認?を体験。
特徴は洗練されたコントローラ。3D CADの操作などクリエイター作業を目的とした、SONYらしいコントローラだった。もはやコントローラだけで欲しい。ただし、VR空間内の移動など、目的外での利用はイマイチそう。
ヘッドセットの装着感はQuest3と似た感じ。解像度も良く、VR空間の文字も問題なく見える。ビデオパススルーはQuest3よりちょい良いかな?くらい。

Varjo XR-4 (ELSA)
エンタープライズ向け高品質XR機。車の3Dとヨーロッパの街並みを体験。
特徴は深度センサを使ったオクルージョンとパススルーの綺麗さ。オクルージョンはXR-3と大差なさそう。パススルーでは、視線に合わせてオートフォーカスするカメラを使用していて、近場の文字や遠くの文字もよく読めるが、フォーカス時に映像が揺らぐのが違和感。ただ、酔う感じはない。展示員さんと話すときに毛穴まで見えてデバイスを介していないかのようで感動した。
個人的には、MR表示の車のボディにリアル会場が反射で映り込むのがすごいなと思った…良いカメラを使うとそんなことが出来るんだ…。

ARデバイス

XREAL One, XREAL air2 Ultra (XREAL)
XREAL Oneは、スマホやPCと接続しディスプレイを映すデバイス。Mac miniからの描画デモを体験。個人的には奥行感に感心した。今まで、数メートル先に40インチと言われても、近くに20インチくらいのディスプレイがあるように感じていたが、このデバイスはきちんと奥にあるように感じることができた。画質も装着感も◎。視野角があと数度増えてほしいが、現状でも実生活に欲しいと思える一品。
XREAL air2 Ultraは3Dモデルの描画やハンドトラッキングも行えるデバイス。初音ミクを動かせるデモを体験。視野角、トラッキング精度ともにあと一歩という印象を受けた。眼鏡状のデバイス上にセンサをいろいろ載せるのはサイズ的に限界がありそうだった。

MiRZA (NTTコノキュー)
話題の新デバイス。スマホやPCと接続し表示。表示用のWebアプリも開発しており、デバイス単体で出すというよりはSI事業の一環でデバイスを提供するという形になりそう。展示会向け情報提示デモを体験。
特徴は向いている方向を用いたインタラクション(notアイトラッキング)ができること?簡単なハンドジェスチャーも認識可能とのことだった。明るい背景でもくっきり見え、ぬるぬる動く。視野角はいまいち。かけ方によって線状に映像が途切れる。

ARグラスリファレンスモデル (Cellid)
ARグラスの部品を販売する会社によるリファレンスモデル。見た目の眼鏡らしさを追求したとのことだったが、耳にかけにくい…。顔認識してその人に関連する情報を出すようなデモを体験。ディスプレイ表示ではなく、現実の情報補助がメインのユースケースか?

J8L (Jorjin)
ディスプレイ表示のデモを体験。見え方はXREALに劣るが、視野角が広く、表示が切れている感覚がない。ハンドトラッキング、アイトラッキング、6DoF対応など盛りだくさん。これから来るデバイスかも。耳にかけにくい。

触覚系デバイス

ContactGrove2 (Diver-X)
シルクのような滑らかな手袋+手の甲の筐体でトラッキング・触覚FBができるデバイス。前のバージョンに比べてグローブがかなり薄手で、頑張ればピアノも弾けそう。
手のサイズに合うグローブがなくトラッキング精度がイマイチとなってしまったが、フィードバックも含め十分楽しめるように感じた。通常の手袋のように脱ぐとセンサが引っ張られて壊れてしまうらしい。

空中ハプティクス開発キット HDK-REC192 (Ultraleap)
超音波をつかって空中の手に触覚フィードバックを与えるキット。空中でクリックのジェスチャーをするとフィードバックが来るデモを体験。思ったよりもしっかりフィードバックがあって楽しい。

Touch (3D Systems)
存在は知っていたが今回が初体験だった。ペン先に対して硬さや重さ、滑らかさのフィードバックを与えるいかついデバイス。しっかりフィードバックがあるから楽しい。乱暴な動きをするとフィードバック対象から外れる。歯科治療の現場などで使われているらしい。

3Dディスプレイ

空間再現ディスプレイ (ソニー)
ソフトウェアアップデートにより可能になった、平面の中で一部が立体になるデモと、複数枚並べて使えるデモを横目で体験。前者は平面の部分が普通のディスプレイより見ていて疲れそう。後者は違和感あるが迫力もちゃんとありそう。SONYさんは開発スパンが短くてすごい…。

裸眼 3Dタブレット (Leia Inc.)
Android OS搭載のタブレット。通常のタブレットとしても使えるし、アイトラッキングで3D表示も可能。3Dは綺麗に見える上、2D表示も通常のタブレットと変わらず綺麗で、目が疲れなさそうで良い。

トビデル (Softbank)
スマホで3D表示を可能とする特殊な保護ガラスと専用アプリ。既存の画像や動画も専用アプリで読み込むと3Dに変換してくれる。7000円でこれだけできるのはコスパが良い。が、プロモーションに使えそう。

ホロモデリンク (Gugenka)
デジタルフィギュアやアバターをそばに常においておけるディスプレイ。コンセプトが素敵な。欲しい。

その他デバイス

VRモビリティスーツ NEWVO
足の体重のかけ方によってVR空間内で移動やジャンプができるといった、新しい移動用デバイス。サイズが全く合わずで操作が難しかった…。まだまだ試作機段階なので今後に期待。

Antilatency製品 (ELSA)
超小型6DoFトラッカー。こういうのでVの者は小物をトラッキングしたり、Vカメラを作ったりしている、という初めての知見を得た。この手のトラッカーはスタジオ含め数百万かかってしまうが、これは数十万で始められてスターターに良いとのこと。

mocopi (ソニー)
VRモードのデモあり。太もも拡張バンドを手に入れたのでこのあと使ってみます。

システム・ソリューションの詳細

ビジネス向けシステム・ソリューション

いろいろ展示はあったが、以下の5つに分類できそう。

  • 研修…VR空間での、消防隊の訓練、安全教育、医療分野、製品の組み立てなど。現実で同じ環境を用意するのが困難な場面で使用される。

  • 販促・PR…観光系が多い。メタバースで観光地に興味を持ってもらうところから、現地でAR・MRを用いた案内・体験まで。他には、モデルルーム紹介メタバースやファッション商品のXR展示など。

  • 作業支援…メンテナンス現場で関連するマニュアルを表示する、遠隔のオペレータが印をつけたところが表示されるなど。

  • 設計…CADデータなどを空間に表示し、設計内容の確認やすり合わせを行うようなもの。

  • 教育・自治体…不登校者が集まれる場となるメタバース、電子申請が可能な自治体メタバース。

気になったもの:タイトック (K-relation)
点群データを活用した技術伝承・研修ソリューション。魚の捌き方やケーキのクリームの塗り方などを点群データで取得。XRデバイスで確認することで、奥行方向の理解や複数視点での確認が可能。

エンタメ向けシステム・ソリューション

気になったもの:ほぼ日のアースボール (ほぼ日)
地球儀上にARで情報を付与したり、そこから3Dモデルを表示したりと、昔からよくあるシステムではあるが、地球儀をこれだけ綺麗にマーカー認識できる時代になっていることに驚いた。子供によさそう。

クリエイター作品

テレビの向こう側へ
昨年は体験できず、遂に体験。物理的なテレビ箱にMRで映像を重ね合わせ、それにインタラクションすることでストーリーが進む。MRからVRをシームレスに行き来する、MRの良さを活かした素敵な作品だった。

Dynamic Split Body
ある程度身体(アバター)が分離しても、自分の身体は自分のものと認識できるのでは、という仮説に則ったデモ。腕だけ切り取る、腕を伸ばす、といった部分的な変化は先行事例があるらしく、これは頭から真っ二つにしてしまった。実験結果が楽しみ。

感想(お気持ち強め)

本展示会のビジネス色が強くなってしまったのは残念だった。クリエイターが来る展示会ではなく、ビジネスマンが来る展示会に寄った感じ。XR全体の動向がビジネスに向かっているのでしょうがないじゃんと言われればそうなのだが、だったらXR総合展とまとめちゃって良くない?と思ってしまった(※XR総合展に行ったことがないまま発言しています)。
XRの技術そのものを紹介したり、クリエイターさんをサポートしながら社会実装に結び付けようとしていた、ちょっと王道を逸れたような雰囲気が好きだったのだが…。Moguraの方針にはあった方向を向いているのだと思うが、もっとそういった雰囲気を残した展示会が欲しいなと思った。
ただ、今回クリエイターステージに近づいていないので、こういった感想を抱いているだけな気もする。前情報を調べておくのは大事だと思った。

上記の感想をもったことで、私はXR技術で、クリエイターが新しい自己表現ができるようになったり、新しい世界で新しい自分に出会えるということ、日常が一変するかも!?という感覚が好きだったのだと改めて気づいた。過去に書いた記事も合わせて、自分の嗜好が見えてきたような気がする。

最近XRの動向を追えていないことを痛感した。2年前と比べて、知らないデバイス、知らない会社がたくさんあった…。一方で、Quest3やVision Proが体験済みだったので、この1年で社会的にXRに触れ合える機会が増えたんだろうなと感じた。

お気持ち多めになってしまったが、この場で一括でXRの情報を仕入れることができたのは良かった。セッションのアーカイブも期待しています。

(追記)
セッションは「VTuber×ものづくり」のセッションだけ参加したのですが、とても良かったです。楽しいことをやっていこう…!!


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