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Wishbassにオーダーした話 その1
はじめに
アメリカ合衆国はノースカロライナ州に拠点をおく「Wishbass」という楽器メーカー(?)というか工房をご存じだろうか?
世界は広いもので、Wishbassは2001年の設立以来、根強いカルト的人気を誇り、世界中のベーシストを魅了し続けている。
というのは謳い文句。
実際のところは「買った時点でジャンク品」「リペア前提で買わないとダメ」「瀕死の牛の鳴き声がする」と割と散々な言われようである。
それもその通りで、2023年現在も設立者兼ビルダーの、Steve Wishnevsky氏(以下お爺ちゃん)がほとんどワンオペで製作をしているという、かなりストイックな工房。
そんな愛すべきWishbassとの出会い、そしてオーダーした経緯書き残しておく。日本から愛をこめて。
出会い
2021年の夏、突如として旧Twitter(現X)のタイムラインに現れた。
日本のWishbass愛好家の有名人、kujiraさんという方がオーダーしたマルチスケール11弦ベース「Wishbass #2708 11 string bass “CubismBalaena”」。
my new gear...
— kujira (@balaena01) July 27, 2021
Wishbass #2708 11 string bass
“CubismBalaena”
ノースカロライナ州のSteveおじいさんに製作して頂いた11弦ベースです。
少しずつ仕様と愛すべき点などを追記していますね。 pic.twitter.com/qqYaQr4YEF
その衝撃的なルックス、10弦ギタリストとしての血が騒ぐ妙な感覚、私はすぐさまWishbassについて調べ、気がついたらkujiraさんにコンタクトを取っていた。
非常に気さくな方で、お爺ちゃんの事やWishbassの歴史、Wishbass日本支部のDiscordサーバーへ招待をしてくれた。感謝でしかない。お爺ちゃんのストーカー大ファンの方。
オーダーに至るまで(起)
2023年の夏。半ば似非ミニマリストに転身した私は「一生涯使えるモノが欲しい」という理由で、メインギターや仕事で使う機材以外全て処分し「これでいつでも夜逃げできるな!」と完全に出来上がっていた。
メインの6弦ベースを見ながら「こいつ正直音もルックスも好きじゃないからドナドナするか…でも処分したらベースなくなっちゃう!」などと悶絶しながらデジマートでDingwallを眺めながら悶絶していた。¥400,000は買えねえ。NG-6さあ…。
…ふと考えた。楽器を処分することだけにプライオリティを求めていた自分がいた。楽しんでいない。なんだか全く楽しんでいない。
リセールバリューにだけ重きを置いて楽器をまた懲りずに買おうとしていた。
楽しみを失ったら音楽なんて続けられない。
ベースの音は苦手だったが、業務には現状差し支えがない。
しかしベースを弾く楽しみがない。
…Wishbass!
何故か脳細胞がトップギアになった瞬間だった。
オーダーの始まり(承)
9/28にお爺ちゃんにコンタクトをとってみる。
最近オーダーはやっているのか?このようなベースを作れないか?と。
時差的な事も考え、朝の9時に参考写真を添付しメールを送信した。
なんと30分でメールが返ってきた。
「おっす!これはlobeだね。木材を決めて最初のデポジットを入金してくれたらすぐ作るよ」
早い。スピード感が尋常ではない。
もはや即決で入金!支払わなければ、生き残れない!
…と思ったが、まさかの入金先が記載されていない。
公式サイトにも「PayPalで入金して!」としか記載がない。えーっと…?
聞いてみたら「ワシのPayPalに入金してね」と、いやどこだよ!
なんて思いながらお爺ちゃんのメールアドレスでPayPalアカウントを検索したら普通にあった。マジか。というわけでデポジット入金。
そこから2ヶ月、お爺ちゃんとのゆるいやり取りが幕を開ける。
オーダーの内容(転)
オーダーしたベースは非常にベーシックなもので、Wishbassの基本モデルといってもいい「Lobe」をもとに、4弦フレットレス、ウォルナットボディ、指板はパープルハートで、右部のホーンを参考写真のものより2インチほど長めにとお願いした。もともとLobeのルックスが好きだった私だったが、人生初のフルオーダー、悔いのないように慎重にメールを送る。
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「Okay, thanks(原文ママ)」
緩い。緩すぎて、この時点で翻訳サイトを使わなくても会話ができるようになった。もっとこう「しっかり」していたと思っていたので、ある意味カルチャーショック?みたいなものを受けた。
入金から3週間、連絡が一切来なかったので妙に心配になる。
Wishbass日本支部代表のkujiraさん曰く「お爺ちゃんが忘れないように、定期的に連絡しておいたほうがいいぞ!」との事だった。
ということで連絡してみた。
「兄ちゃんのオーダーどれだっけ…?」
「…あ~あったわ!今ネックを作ってるとこ!明日木材買ってくるぜ」
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矢継ぎ早に返信があった。緩い。
すこしでも心配していた自分が吹き飛んだ瞬間だった。
その後、木材を接合している写真が送られてきた。
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季節は進み11月。
なんだか、形式的なやり取りもあまりおもしろくないなとふと思った。
進捗確認ついでに「お爺ちゃんのところまだ暖かい?日本めっちゃ寒い」なんていうやり取りをメールで送った。
「Winston-Salemはまだ暖かいぜ。ちなみに今ボディとネックの成形が終わったよ。明日から研磨の作業に入る」
いやーなんか急に早くなった。クロックアップしたらしい。
ちなみにその間、在庫品に不思議なラベルが貼ってあるベースを発見した。
お爺ちゃんによると、古いピアノを解体してベース用の木材にしたらしい。
めちゃくちゃなロマンを感じた瞬間だった。
その10日後、大まかな完成図が写真で送られてきた。
ホーンがやばい。殺傷能力が高そう。
ベースは攻撃力こそがすべて、そんなやり取りをkujiraさんとしていた。
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11月28日、とうとう完成した旨の連絡が入る。
From : Steve Wishnevsky。二礼二拍手一礼後、メールを開封。
「うっわ…エロいな…」
思わず声が漏れた。もはや芸術の領域に達していたそのLobeから、神々しい後光がさしているように見えた。残りのデポジットと配送料を入金。
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12月7日、とうとうアメリカから出発した。
届きました…が(結)
12月15日の午後、とうとう我が家に到着した。
有識者によると「粉っぽいし、梱包材が大量に散乱するから風呂場で開封推奨」というありがたいアドバイスを完全に忘れ、クリスマスプレゼントを開けるトイザらスキッズのようにはしゃいで開梱した。
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いざ、わがWishbassよ!いらっしゃい!
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お????
どうした????
そこどうしたよ????
新たな戦いが始まる
はい。USPS恒例の配送事故の被害です。
箱が潰れてたから嫌な予感はしてたけど、ここまできれいに壊すんじゃないよ。さすがに泣いたよ。
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ホリデーシーズンあるあるのぶん投げ配送で箱がべこべコ。
お国柄は違うといえども、さすがに気を遣ってほしい。
というわけで次回、お爺ちゃん直伝の方法でヘッドを接着しますの回。
お楽しみに!
追記:タイトボンドとクランプ買いました。