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花粉症患者だけのオーダーメイドドラッグ
花粉症歴が浅いんです。くしゃみが出るなあ、いよいよそうなのかあ、マスク苦手なんだけどなあ、なんて思ってたら、あれよあれよという間に誰もがマスクをする社会になった。それくらいには最近なんです。
病気のつらさはなった人じゃないと分からない、なんて言われます。でも、むしろ病気はつらさのほうが他人に伝わりやすいと思います。だって、病気で苦しんでる人はみんな大体訴えるから。仮に話せなくても、歪んだ表情だったり荒い呼吸だったり身体のできものだったりで人は訴えます。そして、人間には想像力がある。病気に苦しんでる人ほどでなくても、痛いとか苦しいとか眠れないとか、そういう想像はできるのです。だから、私が花粉症になった時も、割と想像の範囲内と申しますか、「なるほど、こういうことね」と思う余裕はありました。
病気で分からないのはむしろ症状以外なんです。もちろん、そういう情報だってネットで検索すれば出てくるとは思うんです。でも、検索するに至らないんです。だって、知らないから。病気の方は知っているんでしょうけれども、症状のつらさほど伝えようとはしない。結果として、世間に広まりづらくなっている。
私の不勉強だと言えばそれまでなんです。でも、2月のクソ寒い時期から花粉症が起こるなんて知りませんでした。風邪と見分けがつかないじゃん。ようやく思い知りました。ひょっとしたら気づいてなかっただけで、もっと前から花粉症を発症していた可能性もあります。
あと、階段を上っている時にくしゃみが出まくると、思いのほか上りづらいことが分かりました。歩き方もおかしくなる。我ながら、誰かを笑わせようとしてるんじゃないかという歩き方になってました。
それからお薬の処方のされ方です。私、行きつけの病院を訪れた時、医師とこんな会話になりました。
「花粉症なの?」
「そうなんです」
「よかったら処方するけど、どう?」
「お願いします」
すると、医師は手元のパソコンを操作し、私に画面を見せました。ズラッと薬の名前が並んでいる。
「どれか好きなやつ、ある?」
えっ、そういうシステムなんですか。思わずそう言ってしまいそうになりましたが、どうにか耐えました。何だか、オーダーメイドスーツを作る時に「どの生地がいいですか」なんて言っていろんな布を見せてくるような、そんなノリで薬を選ばされる日が来るなんて。
とりあえず、「まだなりたてなんで、よく分かんないんです」と言って、医師の勧める一番軽いやつを処方してもらいました。
花粉症の人ってみんなこんなオーダーメイドドラッグで処方してもらってるんでしょうか。それとも単に私が特殊な事例を引いただけなのでしょうか。そんな判断もできない。私の花粉症マスターへの道は始まったばかりです。