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三角柱型ハンドバッグ

こんばんは!
本日はやっと納品した三角柱型のハンドバッグの記事になります。
足かけ2カ月程掛かりました(汗
デザインの変更や内張が中々決まらなかったりと、結構な難産ではあったのですが、相談しながら進められたので、困ったり問題は出ませんでした。
とはいえ、今回は昔からの知り合いの方だったので良いですが、そうでない場合はもっと相談も作業も手際よくやらないといけないですね。
これに慣れてはいけない・・。

私自身、飛び飛びで2カ月製作してたので、振り返りも兼ねて記事にしていきたいと思います!

初期相談~デザインまで

このバッグは元々、依頼者の方が数十年前(30年程前じゃないでしょうか)に購入されたヴィトンのバッグと同じ形のバッグが欲しいという事で依頼を頂いたものでした。
写真だとサイズ感がわかりづらいのですが、実はセカンドバッグレベルの大きさです。
なので、構造もシンプルで、とても作りやすいです。
ただ、中身も小さく、底板もないので芯材も使えません。その点では、革質をかなり選ぶと思います。2mm以上のソフト加工してないタンニン鞣しの革なんかが向くと思います。
メモ的に描いた設計図ですが、何と部品点数はこれだけで作れます。
(※実際には内革と表革に寸法差がありますし、細々調整してるので、これ通りでは作れませんので、ご注意下さい!)

シルエットがとても重要な上に、部品点数が少なくて全てが目立つので、しっかりと一つ一つ作る必要があるな・・・と最初の時点で何となく思っていました。
なので、実はカービングの模様を少し派手にする事で荒が目立たないようにした方がいいな、と画策していたのですが、ご希望の柄があり、ドングリの葉(レッドオークの葉)との事でした。
以前の記事でもまとめたので、詳しくは割愛しますが、このデザインにかなり難航しました。

どんぐりの葉というのは昔からある柄で(私はどんぐりの葉とは知らなかった)結構今どきのカービングからするとデフォルメがかなり強い柄なんです。かつ、少しアニメチックorトゥーン調というのでしょうか、そういう柄なのです。
(※自分で彫ったものが無いので参考画像が無く、わかりづらいと思うので、気になる方は調べて頂けると….)
これはこれで非常に味があるので、私はとても好きなのですが、何せ参考にと渡されたバッグはヴィトンなので・・・正直な所、

「え、これであってるの!?(汗」

というのが本音で、自分の持ってるイメージとお相手の想像してるものが違い過ぎるんじゃないかと、お渡しするまでずーっと不安でした。

どっちが上で下で、という話ではなく、ハイブランドのバッグと、可愛らしい雑貨屋に置かれているようなバッグ、位の違いがあるので・・・。
結果、それは杞憂だったのですが、今まで依頼された物の中でも群を抜いてデザインに困ったような気がします(笑

結局悩みに悩んだ末

実際に作りました!
「あかん、これ悩んでてもラチ空かない!」ってなったのがよく表れてますね。4カ所全部で違う染色の仕方をしてる辺りが・・・。

デザイン本稿~製作

取り掛かるまでに大変ではありましたが、実際に本デザインに取り掛かります。物が確定すれば結構すぐ書けました。



一応、左・中央・右、と全て微妙に違うのですが、そこはそれデジタルなのでラフ画を反転して修正して、線画はこれで終わりです。

で、イメージしやすいかなと思い着色しました。
デジタル絵はこの辺りがとても調整しやすいのが良いところですね。

こちらのデザイン画と提出していたカービングのサンプルをにらめっこして相談した所、派手になり過ぎると思うので、表革は全部ウォルナット色にしましょうという事になりました。
どちらも、手間はかかりますが、本当にやってよかった。やってなかったらきっと想像とは違う物になっていたと思うので(涙汗

余談にはなりますが、この頃(といっても2カ月前ですが)からデザイン画に染色とカービングの陰影をアバウトにですが着色するようになりました。
しかし、お客様の望む物をいくらしっかりヒアリングしてデザインしても、頭の中をのぞけるわけでは無いのでイメージが間違ってしまう事もあります。
今回の件でそれを痛感したので、少しでも自分のイメージが相手に伝わるように、と思い着色を始めたのですが・・・、これが思ったより自分にとっても良い事が一杯ありました。

・バックグラウンドの配置がおかしいかどうかわかりやすい
・当たり前ですが、全体の色のバランスが修正しやすい
・陰影の濃淡がどこに集中してるかわかりやすい
・金具の色が決めやすい

着色するのに1時間位かかるのですが、それを踏まえても非常にメリットが大きいです。
デジタルで線画だけを描いておられる方がいらっしゃれば、是非お試し下さい!


さて、本筋に戻りますが、持ち手部、金具、デザインと方向性は全て決まりましたので、カービングに移りました。

カービング~表革完成

準備に沢山時間を掛けたので、カービングに取り掛かる時の「やるぞー」具合は非常に高かったです!
今まで余り彫った事のない、フィギュアカービング・・?の柄なので新鮮でした。

完全リアル調ではないとはいえ、いつも彫っているシェリダンスタイルとは違い、絵を描くのにとても似ていました。
葉のねじれ具合や重なり具合を考える事に集中できますし、模様とは違うのでカットも指の赴くままという感じでしょうか。


正円なんかも気にしなくていいので、下書きも良い意味でアバウトです。
慎重になぞり過ぎると逆に変になりますし、カットも強弱が出ないですからね。
兎に角スイスイ手が進んで、今回は楽しくなりそうだー!

と・・・思っていたんですが、ベベラ打ち(輪郭の彫り)が・・・
控え目に言って地獄でした。
12時間位掛かったんじゃないでしょうか、只管輪郭を強調させていくんですが、幅3mmの狭いベベラしか使えない上に方向がコロコロ変わるので、400x400の革を狭い机の上でクルクル回しながらコンコン叩き続けました。
間違いなく今までの作業の中で一番きつかった、精神的に(汗
何故、レッドオークがリアル調に彫られないか、その理由がわかりました。

しかも、ベベラ打ちが余り目立たない・・・カットの強弱が消えて、この時点では寧ろ地味になったまでありますからね。
か像の左側はベベラ打ちした後、右側はまだしていないですね。
この作業を続けて、フィニッシュカットしたものが下の画像の左側になります。

←済カット   未カット→

ここまで来てやっと立体感が出たかなぁという気がしますね。
ちょっと元気が出てきたのか、この辺りの写真は数枚ありました。

物凄くきつい思いをしましたし、結構立体感あるように打てたので、これ全部染めちゃうのかぁ・・・と思いながら打ってた記憶があります(笑
結果、染めたらそれはそれでいい具合になったので、良い経験でしたね。
ただ、同じものを作ってくれと言われたらちょっと考えさせてもらうと思いますね!作業賃的な意味で・・。

さてお次は染色です。結構こちらも戦々恐々しながらしました。
面積が広い事と、カービング部とそれ以外の部分にかなり色の差が出てしまうんじゃないかという不安がありました。
染色で不具合が出やすくなる、というのはカービングの悪い処ですね。
ハードルを上げている要因でもあると思います。

さて・・・

あっ・・・予想通りベベラ部分に入りづらい。
相当にムラがあるように見えると思いますが、これでも3時間位細かく小筆で塗った結果です。


近めで見るとそんなに悪くは無いのですが、面積が広いですし、全部染めてるだけにやはり目立ちますね。
オイル染料を使っているので、これ以上色が入る気配が無いので、この後の加脂工程で・・・

お・・・?ちょっと落ち着いた・・・?
後はアンティークでベベラ部にスミ入れすれば・・・?

(上)アンティック後
  (下)アンティック前

結構落ち着いた!良い具合に!
染色は本当に怖いんですよね。怖いというか、納得できた事が無いですが。
でも、こういう全染色だとアンティックのムラが目立たないので、そこは良いところですね。
近くで見ると悪くないのですが、遠目だとどう見えるようになるのかがやっぱり不安ではありますね。

縫製~完成とあとがき

さて、その先は縫製作業なのですが、取っ手部を作る事と、後は只管縫う作業だけでした。
後、作業所をその間に移したので、そのバタバタもあって細かく記録していませんでした(汗

しかし、縫製自体は本当にシンプルでした。
持ち手芯に13mmのロープ芯を使って、1.5mmの革を巻いて作っています。
元々のヴィトンのバッグはプラスチック芯&2mmの革だと思うのですが、物凄く硬くなってしまっていました。
最初に書いた通り、シルエットが一番大事なバッグなので、それを崩さない為だとは思うのですが、流石に硬すぎますね。
革同士が当たるとカチカチ鳴りますからね(汗

そうそう、途中で持ち手の付け根を4つ作らないといけないところ2つしか作って無くて絶望するというワンシーンがありました。
流石に馬鹿すぎてホロホロ泣きながら作りました。


こんな小さな部品ですが、ヌメ革>加脂>耐水加工 ってすると2日以上置かないと行けなくて作業時間的に馬鹿にならないです。

これと取っ手を縫い合わせて・・・
ファスナーを付けて、エンドを付けて・・・
コバ処理をして・・・

で完成です!



内側


全体図


取っ手とファスナーのナチュアル&ベージュ色が良い具合に目立って、全体的には落ち着いた雰囲気になった気がします!
一番派手なカービング部分をずって見ているから感覚がおかしくなっているだけという可能性もありますが(笑

今、これはかなり目立つように光を当てていますが、真上からの光だとこんな感じになります。

陰影だけでカービングが成り立っているので、二面性がありますね。
カービングの良い所はこういう所で、派手は派手なのですが、見る度に違う表情があるんです。
細かく見るととても精巧に彫られていますし、一人でニマニマ出来ますよ!
後、持ってる人間は凹凸も感じるからなおさらですねー。

大分長い記事になったので、短く締めますが、結果、とても良い勉強と教訓を得た作品だったなと思います。(いつも言ってる気が・・・)
デザインも、自分だったら作らないものですし、染色も多分選ばないものなので、創作物の幅が広がったような気がします。
後はバッグ自体もですね。
私は基本的には小物がメインなので、バッグはこれでまだ2つ目です。
以前作ったセカンドバッグに引き続き、大物を何とか作りきれたことは大きな自信になりました。

それでは、今回の記事はこの辺りで失礼します。
長い文を読んで下さって、有難うございました!

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