独自トークンの売買について
仮想通貨メディアOWLCOINへのユーザー投稿機能を実装するにあたり、独自トークンを発行し、コンテンツを投稿してくれたユーザーへ付与する形を検討していたのですが、そもそも独自トークンの発行や売買って法的にOKなんだっけ?という議論になったので、その内容をまとめておきます。
※以下の文章は、他社の記事等を参考にした弊社内の意見であり、法的な裏付けをとっていない点にご注意下さい。
■目的
・OWLコイン(独自トークン)を発行し、記事を書いてくれたユーザーに報酬として配布
・ユーザーは自由にOWLコインをその他のコインとトレードできるようにしたい(インセンティブを与えたい)
■論点
・独自のトークンを発行し、他の通貨と売買できるようにするのは、仮想通貨交換業の免許が必要なのか?
・VALUは、サービス内で独自トークンを売買可能だが、なぜ免許なしでOKなのか?
・マイクリプトヒーローは、サービス外で独自トークン(NFT)を売買可能だが、なぜ免許なしでOKなのか?
■結論(ざっくりです)
・対象となるトークンが「仮想通貨」とみなされるかどうかが一番のポイント
・マイクリでは、代替性がない(Non-fungible)ことから、仮想通貨に該当しないと判断している
・VALUでは、不特定を対象に提供していないことから、仮想通貨に該当しないと判断している
なので、OWLCOINが独自トークンを発行して利用する場合、
・OWLコインを発行し、それを0.1ETHなどでユーザーへ販売するのはOK
・ユーザーが、保有するOWLコインを他のユーザーにETHなどで売買するのはグレー
ー最低でも、VALUと同じく、会員登録制にして弊社が発行・売買をコントロールできる形にしておく必要
・OWLコインを他の通貨と自由に取引可能にするには、取引所に上場する必要あり
ー自社で仮想通貨交換業の免許を取得 or IEO(Initial Exchange Offering)で、交換業の免許をもつ他者取引所に委託して販売してもらう必要
・一方で、CryptoKittiesのように、OWLコインをNon-fungibleトークンのような形で導入すれば、他の通貨と売買することも問題ない
ーどのようなNFTとするかは工夫の余地あり
■そもそも仮想通貨の定義とは?
法律上では、下記2つの定義がなされており、どちらかに該当するものは仮想通貨とよばれる
1号仮想通貨
1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、
2. 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、
3. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
2号仮想通貨
1. 不特定の者を相手方としてビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であって
2. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
幻冬舎さんの記事を引用させていただくと、不特定の者に対して行為を行っているかどうかがポイントとなるようです。
法律上の「仮想通貨」該当性のポイントは、
●「不特定の者に対して」使用できる
●「不特定の者を相手方として」購入及び売却を行うことができる
●「不特定の者を相手方として」ビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる
とあるように、「不特定の者」というのがポイントになります。この「不特定の者」というのは、金融庁ガイドラインでは以下のような要素を考慮するとされています。
●発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか
●「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする
●発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか
つまり、特定の発行者がいて、その発行者が認めた範囲内で使用できる場合には「仮想通貨」には該当しないのです。
なので、発行者が管理をしており、発行したトークンが「不特定の者」を対象していなければ、仮想通貨に該当しなくなるため、交換業の免許も不要となるようでした。
VALUの場合には、下記のロジックで仮想通貨に該当しないと判断しているようです。
・VALUは会員登録したユーザーしか利用できないため、不特定多数が対象ではない
・VALUがトークンの発行・売買をコントロールしている
・VALUサービス内でできるのは、独自トークンとビットコインの交換のみ(ビットコインの購入は外部で行う)
ただし、幻冬舎さんの記事にも書かれていましたが、VALUは誰でも会員登録可能であるため、この点が不特定多数と見なされてしまうと、金融庁からつっこまれる可能性もあるようです。
■マイクリについて(ブロックチェーンゲームにおける独自トークンの利用)
こちらについては、創法律事務所が公開されている素晴らしいレポートを参考にさせていただきました。こちらのレポートをもとに弊社内で議論した結果、下記のロジックでいいのではないか?という話になりました。
・発行するトークンが「仮想通貨」とみなされれば、当然交換業の免許が必要
・マイクリ内で発行されるトークン(信長とか、ライト兄弟とか)は、 それぞれが個別の商品であり代替性がない(Non-fungible)ため、通貨とはみなされない
・そのため、外部のマーケットでEtherで売買したとしても、それは仮想通貨の売買には当たらない
・ゲーム内通貨であるGUMは代替性があるため、これをその他の通貨と売買可能とすることは交換業の免許が必要(なのでやってない)
また別の論点として、そもそもゲームのアセットを売買してよいのか?それはRMT(リアルマネートレード)ではないのか?という話もありましたが、それについては、Coincheckの和田さんとツイートで見解を示されていました。