数年ぶりの花 ・盆栽のこと/その2
フウラン/風蘭
数年ぶりの開花
この鉢植えは、普段は家の北側にある庇の下に置いてある。雨が多く当たらず、直射日光も避けて風通しもそこそこ良い環境なので、ここは快適な様子。
植え替えして根も広がってきたのでよしよしと思っていたら、花芽が出始めていたので喜んでいたところ、開花まで見届けられたのでうれしさもひとしおだ。
フウランとは
名前のとおりランの一種で、「着生種」と呼ばれる樹木の肌や枝の又などにくっついて育つ種類。根は露出していて着生先に絡みつくように伸びるのが特徴で、根の元部分に固い葉が扇のように広がって伸びる。ほぼ見えない茎からは花茎が伸びて、白い花を咲かせる(写真)。
開花時期は6-8月。我が家の株は1-2週間ほど花が続いていて、薫り高い真っ白な花弁がすらりと立ち上がっている様は、酷暑の合間の涼しさを感じさせる。
我が家の株はすべてミズゴケに包んで鉢に収めているが、木や岩などに括り付けて飾ることもできる。着生種の名のごとく根の先が粘着性を持ち、うまく着生できれば吊り下げた木片でも育成ができる。その際は水分補給のためにミズゴケも巻き付けておくと良いそうだ。
他の土植えの山野草に比較して乾燥に強いといえるため、週一程度の浸水かミズゴケの乾燥具合をみての霧吹きで済み、風通しと過度の乾燥に注意すれば屋内でも維持できるようだ。
丈夫な分成長が遅いので、年単位で根の伸び具合や葉の入れ替わりを眺めて楽しむタイプ。我が家に来て数年経ったが、サイズ感はほぼ変わっていない。もともとの寄せ植えを分割して植え替えた程度で、株分けとも言えないくらいの変化しかない。毎年の開花を楽しむか、着生の床を整えたり寄せ植えにしたりと楽しむつもりだ。
風貴蘭とは
「フウラン/風蘭」の他の呼び名に「フウキラン/風貴蘭」がある。これはキクやオモトのように江戸時代に流行した園芸品種の呼び名だ。
葉の柄や、葉の広がり方などの特徴ある株を掛け合わせて独自の品種として確立したものが「銘」をもつこととなる。
銘有りの品種は協会公認では250種ほどあるといい、当たり前ではあるが園芸店でも無銘と銘有では価格に差が出ている。
葉の表面の柄、葉の生える方向や大きさ、花の色や重なり具合などを組み合わせ品種化される。銘は、
このような株があるので、好みに応じて蒐集する楽しさもあるようだ。また寄せ植えにして大きな株にしつらえて鑑賞する楽しさもあるだろう。様々な景色にしつらえることと、成長が遅い分変化しないので完成した状態を長く維持することで置物として安定しているともいえる。
自然であり人工物であるという矛盾は松柏盆栽にも通じるところがあるように思う。
今後は
今のところ病気もなく枯れもしていないが、植物である以上病気もするし虫の害も、乾燥や湿気により枯れてしまう可能性もある。葉の育成もゆっくりな植物なので、大事にそだてていきたい。また寄せ植えや岩やコルク板への着生なども試して、屋内に取りこむなども楽しみを広げていきたい。