ことの始まり ・薬草酒のこと/その1
開高健氏のエッセイ集を二冊読んだ。
『瓶の中の』
『魚の水(ニョクマム)はおいしい』
読書は思わぬ変革をもたらす。この読書体験から、香りだけでも無理だったパクチーを食べ切れたのだ。苦手意識の最たるものが食わず嫌いだが、それをチャレンジへと向かわせ、ついには克服させ、次の挑戦へ目を向けさせるという連鎖の根本に、開高健氏のエッセイがあった。
ここまでなら「厨」か「書庫」向けの話だが、これはお酒の話となる。
数年前までの自分は、強いハーブが苦手だった。
シナモン、クローブ、パクチー、セリ。アニス系統の、カンゾウ、フェンネル、スターアニス、ハッカク。
青紫蘇も得意ではなかったし、ミント系フレーバーも一時期タブレットを持ち歩くなどしたが、舌に残り続けるのが嫌で止めた。スパイスといえばトウガラシかニンニク、ショウガは冷奴か生姜焼きくらいでほとんど使わなかった。
そんな中、「ビターズ」という種類のお酒と出会った。
最初の銘柄は「イェーガーマイスター」。56種類のボタニカル、薬草で造られたお酒であり、それだけの数の味や香りが複雑に溶け込んでいる。草根木皮に花や実も含む様々なエッセンスが溶け込んだお酒だ。
「リキュール」というジャンルはカクテルの素材としていろいろな果実やフレーバーのものがあることは知ってはいたし、その一種に主に薬草を合わせて作られるものがあることも知っていた。そのため、薬草系のリキュールは苦手意識が働き避けていた傾向にあった。
そんな中、薬草酒としても有名な「イェーガーマイスター」を紹介され、試してみたところ、一瞬で好きになってしまった。
上に記載した苦手な強いハーブが含まれており、Wikiでは、「アニス、フェンネル、シナモン、ミント」の記載が見られる。
存在を感じる程度で嫌な感じは無く複雑な甘味と苦味と表現できない何か。特に冷凍したものをビールをチェイサーにして飲むことが好きになった。
薬草系リキュールとビターズは、これまでのお酒遍歴に新しい1ページどころか新たな一冊が加わったほどの衝撃だった。
その後、「アンゴスチュラビターズ」をビールに垂らす飲み方、「ウニクム」を初めとした茶褐色のリキュールや国産カンパリの「スカーレット」の飲み比べ。果ては果物や薬草茶(いずれまとめる)を焼酎に浸漬した自家製薬草酒にまで手を広げてしまった。
こうしてハーブという存在への抵抗が薄れていった結果、文頭のパクチー克服の話に帰結する。味と香りの苦手感は、思わぬ出会いで好感触に変化し、趣味嗜好の範疇に納まるでに変化するものなのだな、という重大な体験だった。
今後は、薬草や漢方、世界のスパイスとお酒について見分を広げチャレンジを進めることとなりそうだ。
薬草酒やリキュールについては、この表題で以後掲載する予定。よろしければご一読ください。