老人と夫(3)
以前、夫がご近所さん(村を仕切ってると思われる人物)に御隠居様の事を聞いた事がある。
その人は御隠居様を、村のトラブルメーカーだと言った。
その言葉を聞いていたので、御隠居様に会った時、構えてたのだが、それは間違いだと知った。
御隠居様は、心を開いていない人には、ものの言い方がつっけんどんで高飛車だ。上部だけの付き合いなのだから、そうなるのも頷ける。
今回、夫が誠心誠意に御隠居様に接していた事もあって、御隠居様は夫には心を開いた。
家族も身寄りも居ない御隠居様は、きっと夫を心の拠り所にしたんだと思う。
ずっと家に一人。猫は居るけど話し相手にはならない。車も無い、免許も取り上げられて、気晴らしに出掛けることも出来無い。身体はだんだん弱っていく…
だから、夫や私が御隠居様の家に行くと、嬉しそうに昔の事や奥様の事を話し続けるのだ。
若くして奥様と知り合った事、仕事はロンドンの大学でエンジニアをしていた事。バイクが好きで、よくツーリングに行ってた事。コーヒーにベイリーズを入れて飲むのが好きな事、などなど。
いろんな話を、目をキラキラさせて話す御隠居様を無下にできようか、いや出来まい!
もし自分が、御隠居様と同じだったら…と思うと、泣きたくなる。いや、泣く。寂しすぎる。
そんな訳で、夫と私は御隠居様の買い物や用事をサポートしている。
介護サポートが受けられるようになっても、ちょこちょこと様子は見に行こうと、夫とは話している。
こうして知り合ったのも、何かのご縁。
御隠居様には、少しでも楽しい思い出が出来たなら嬉しく思う。
しかし御隠居様、買い物リストが特殊すぎやしませんか?(苦笑)
何故なら、同じものを3つ4つ買ってきてくれと頼まれるからだ。
入れ歯のない御隠居様は、ちゃんとしたご飯を食べず、コーヒーに砂糖三杯入れて、ベイリーズ(アイルランドのお酒)を入れて飲むのが好きらしく。
先週、2本買ったのに、また今週も2本頼まれた。
アル中にだけはならないで欲しい(真顔)
そんなこんなで、御隠居様と夫と私の交友は続くのであった。(終)