【第134回】入門じゃないイエモン
2024年1月5日、私のnoteのアイコンにも使っている実家の飼い猫「ポッポ」さんが亡くなった。2023年の大晦日の日に実家に戻ると、親から「もうポッポちゃんダメだわ、あんた来るの間に合って良かったよ」と告げられ、様子をみると目や鼻から茶色い液体を流して、グッタリと寝ているだけの状況である。一切食べなくなって、おしっこもトイレでできなくなっているらしい。これは素人目にも長くはないなという印象であった。治療についてはもう23歳の超おばあちゃん猫だったこともあり、以前から家族とはできるだけ自然に任せようという話はしていた。それなりに覚悟もしていた。それでも弱っていくポッポさんをみていると、後悔は残したくないなという想いもあり、できる事は少しでもしてあげようと考えた。とりあえず年明けの1/4までは会社も休みだったので、それまではできるだけだけ一緒にいることにした。少しでも何か口にできるものはないかと、老猫用の食べやすそうな餌を買ってきたら、少しではあるけれど手から直接食べてくれた。日に日に身体は冷たくなっていって、毎晩今夜が山なのかなと思った。夜寝ていても気になってすぐに目が覚めてしまい、何度も生存確認をしにいった。そのうち餌を口にしなくなり、水も摂らなくなった。それでもポッポさんは生きていて、フラフラしながらも必死になってトイレに何度も何度も向かおうとしていた。結局私が居れる最終日1/4の夜になってもポッポさんは生きていた。さよならをするのはとても辛かったけれど、ポッポさんにたくさんのありがとうを言って私は自分の家に戻った。実家からポッポさんが亡くなったとの連絡があったのは2日後(1/6)の朝、前日の夜に息を引き取ったということだ。私が家に帰った次の日の夜に亡くなっている。
23歳のおばあちゃん猫だったということを考えると、大往生と言って良い、幸せな猫生であったと思う。最後に一緒にいる時間もたくさん取れたし、最後に手から直接餌を口にしてくれた。「ありがとう」を伝えて「さよなら」もできたし、多分だけどポッポさんの辛かった期間も一週間程度と、比較的短かったんじゃないかと思う。理想的な終わり方だったんだと、自分に言い聞かせて納得しようとはするけれど、やっぱり悲しいもんは悲しいし、辛いもんは辛い。23年というと、私の社会人生活のほぼすべての時間を一緒にいたわけで、今までの私の人生で1番身近な存在との別れになった。後悔とかそういうのは無いんだけれど、やっぱり納得することなんて到底無理なのだよね。
そんなときに「THE YELLOW MONKEY」の名盤「SICKS」をふと思い出して、聴いてみたら今の自分の気持ちと重なって、大号泣してしまった。「SICKS」は容赦なく現実を突きつけてくる。食事も水分も摂らなくなって、それでも生きているポッポさんをみて「どこまでも続く生命力」を感じたし、それでも確実に「長いグルーヴに終わりを告げ」ようとしていることを肌で感じた。気晴らしに散歩をしたけれど、そのときの空は「無責任」に青かったし、そしてポッポさんが亡くなったときは確かに「ロックンロールに希望なんて」ないなと思ったし。自分に言い聞かせてなんとか納得しようとしたけれど、やっぱり納得して「笑いながら死ぬことなんて」できないんだなと涙してしまった。「SICKS」は聴くタイミングと場所には気をつけなくてはならない(私は電車の中で聴いて、涙が止まらなくなってとても恥ずかしかった。周りからしたら「どうした、おっさん」という感じであったと思う)。ちなみにポッポさんは、父がよく行く公園に埋めできたということだ。ちょっと距離があるので暖かくなったら、花でも飾りに行こうと思う。「決して豪華」じゃない花を。
というわけで、ほとんどポッポさんの話になってしまったが、少しだけイエモンさんの「SICKS」の話もしたいと思う。今回改めて聴いてみたけれど、やっぱり重量感のある濃厚なアルバムである。このアルバムはリアルタイムでもずいぶん聴いたけれど、聴き応えのある曲が多く収録されていて、心揺さぶられる曲も多く、聴くのには若干体力を使う。その分従来のイエモンさんの作品に比べると、ややとっつきにくいのかもしれないなとも思う。確かこのアルバムが発売されるときのインタビューで、イエモンさんも同じような発言をしていた記憶がある。特に「天国旅行」なんかは心がざわついて聴くのが途中でしんどくなるほどだ。そんなこともあるので、少し気を抜いてもらおうという狙いなのか、「薬局へ行こうよ」というおふざけな曲もあったりする。かと言って浮いてる感じもなく、曲の繋がりもかなり意識して作られているので、バランスやコンセプトをかなり練って作られたんじゃないかという感じがする。まあ前々からイエモンさんは、結構コンセプトとか大事にしている気はしていたけれども。
私はイエモンさんのアルバムの中で、この「SICKS」が1番好きなアルバムだ。ただ1曲1曲が長かったり、雰囲気がかなり暗めなこともあって、入門編としてはあまりオススメしていない。入門編としては明るくて楽曲も素晴しい「smile」をオススメしている。まあそうはいっても、私は「SICKS」以降のイエモンさんはあまり聴いていないのだけれど。なんか「SICKS」の完成度がスゴすぎて、イエモンさんはここで頂点かなと思ってしまい、情熱を失ってしまったのだ。実際はどうだったのかしらないのだけれども。
イエモンの
入門編には
向かないもん
季語はイエモン。
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