【第56回】J・B・ルノアー/ア・メモアー・フォー・ルノアー
なんか私、外国の人に道を聞かれることが多いんじゃないかと感じている。地味な生活をしているのに(クラブ遊びとか派手なことはしていません)、今までの人生(40年余り)で10回以上は聞かれている気がする。英語が喋れるような知的な人に見えてしまっているのだろうか(実際は全然喋れません)。外国の人に言いたいのですが、私はあなた方の期待には応えられませんよ。
今でもよく覚えているのは、駅構内を歩いていて定期券を買う場所を聞かれたときのことだ。なんとなく聞かれていることを理解して、とりあえず「トゥゲザーしようぜ」と定期券を買う場所に連れていくと、今度は申込書の書き方がわからないと言う。仕方なく「ネーム、ユア・ネーム」と言う感じで片言の英語で教えてあげたのだが、利用駅の区間を聞いたところ「カタクリコ、カタクリコ」と言っている。カタクリコ?片栗粉?片栗粉ってなんじゃ?しばらく悩んでいたらそれを見ていた駅員さんが「片倉町(横浜市営地下鉄の駅名)のことじゃないですかねぇ〜」と一言。カタクラチョウ、、、片倉町!それだ!ナイスだ駅員さん!、、、、、と言うかあんたが対応しろ〜!!とツッコミを入れそうになった甘酸っぱい思い出。
このLP「J・B・ルノアー/ア・メモアー・フォー・ルノアー」を購入したときも、レコード店を出たとこで「エクスキューズ・ミー」と声をかけられた。おもむろに地図(レコード・ショップ巡りガイドみたいなもの)を見せてきて、ここのレコード・ショップに行きたいのだが的な事を聞いてきた。知っているレコード・ショップではあったのだが、結構遠かったので流石にトゥゲザーする気にはなれず、「ディス・ロード、ヴェリー・ストレート、ファーラウェイ」みたいな情けなくなる英語で教えてあげた。そしてお互いグッド・サインを出し合うという訳のわからない挨拶をして別れたのだが、あの外国の人、私の言っていることを理解していたのだろうか。
とても前置きが長くなってしまったが、そんなわけで今回は「J・B・ルノアー/ア・メモアー・フォー・ルノアー」である。ルノアさんが不気味(なぜか片目をつむっている写真)に映るこのLPは、ルノアさんの1951-1956の間に録音されたベスト編集盤2枚組である。
この人はハイ・トーン・ボイスが有名な方で、実際聴いてみると確かに女の人が歌っているかのような歌声である。特徴的な歌声なのだけれど、特に1枚目で聴けるのだが、とてもオーソドックスなシカゴ・ブルースをやっていると思う。渋いスロー・ブルースにルノアさんのハイ・ピッチ・トーンが絡んできてとてもカッコよい。かたや2枚目では軽快なブルースが多く収録されていて、嫌いではないのだが、個人的には1枚目の渋さにシビレているので1枚目ばかり聴いている感じだ。ただ同じ雰囲気の曲も多かったりするので、キュッと1枚にまとめても面白いかもななんて思ったりもしている。
後ブルースにしては珍しく(と思う)社会風刺的なことも歌ったりしているらしい。それで気になって歌詞も合わせて聴いてみたのだけれど、Aメロを2回歌ってオチのBメロを歌う、というパターンの曲がとても多いことに気がついた。これも確かブルースのオーソドックスなパターンだった気がする。やはり演ってることはとてもオーソドックスなブルースなのかなと思い、そこがまたこの人のカッコいいところだなと思う。
最後に帯について少し。「ブルース界のJB」とあるのだが、(他に何のJBがあるのかは不明、ジェームズ・ブラウンかな?)、JBと聞くとどうしてもJD(=女子大生)やJK(=女子高生)を思い浮かべてしまって困る。JBについて少し考えてみたが、JB(=女子赤ん坊)に考えが行き着いてしまい、これは行くとこまで行ってしまったなと思う。
ブルースで
社会をぶった
斬るのだー(ルノアー)
季語はブルース。