【第145回】私の青春ミッシェルさん
これを書いている年(2023年)はミュージシャンの訃報が多いなぁなんて思っていたら、12月に入って「チバユウスケ」氏の訃報が飛び込んできた(毎度公開時期の関係で昔の話ですんません)。「坂本龍一」さん、「谷村新司」さん、「櫻井敦司」さん、「KAN」さん、そして「チバユウスケ」氏だ。調べればもっと出てくるかもしれない。チバ氏は結構いろいろなバンドで活動していたけれど、私にとっては「ミッシェル・ガン・エレファント」のチバ氏に尽きる。ミッシェルさんは私の音楽人生で1番聴いたんじゃないかと思う。
当時(大学生でした)の私は「L'Arc~en~Ciel」とか「THE YELLOW MONKEY」みたいな妖艶なバンドをよく聴いていたので、無骨なミッシェルさんのロックは衝撃だった。出会いは「キャンディ・ハウス」で、確か地方の音楽番組のオープニングで流れていたのを聴いたのだと記憶している。いや、エンディングだったかな。まあどっちでも良いや。いや、やっぱりオープニングだったかも。とにかくそこで聴いた「キャンディ・ハウス」のカッコ良さに痺れてしまった。攻撃的なギターから始まって、小気味よいブルース・ハープに気持ちの良いリズム隊、ふてぶてしいボーカル、そしてスーツ姿で戦車に乗っているプロモ。自分にとってはじめての体験だったのだよね。世の中にはこんなにカッコ良い世界が存在するのかと関心した。当時つるんでいた友達に紹介したら皆ミッシェルさんにハマってくれて、あーだこーだ言いながらよく聴いたもんだ。私の青春の音楽ってヤツだね。ミッシェルさんが解散してからは、ほとんどチバ氏を追いかけることはしていなかったけれども、チバ氏の訃報は私にとって結構考えさせられる出来事であった。自分が熱中したものとか憧れていたものも、いつかはなくなってしまうのだな、という当たり前のことを実感したっていうか。
さて、「キャンディ・ハウス」で衝撃を受けた私だけれども、その後すぐにアルバムに飛びついたわけではない。特に「キャンディ・ハウス」の直後に発売された「ハイ・タイム」は興味があったのだけれど、すぐに購入とはいかなかった。欲しくはあったのだけれど、ミッシェルさんを気に入ってくれた友達が購入したので、それを借りて聴いた記憶がある。購入しなかった理由はあまり覚えていないけれど、まあ大学生ですからね、3000円の出費はでかかったんでしょう。そんなわけで、友達に借りて聴いた「ハイ・タイム」でしたが、私の予想をはるかに越えてカッコ良いアルバムだった。全体を通してミッシェルさんの勢いが半端なく、音が鋭く尖っている感じ。特に「sweet MONACO」「シャンデリア」「flash silver bus」の3曲のテンションは凄まじくて、そして「アベフトシ」氏の高速カッティング・ギターには度肝を抜かれた(残念なことにアベ氏も、ずいぶんと前に亡くなってしまっているのだよね)。素人の私には何を演っているのかよくわからないのだけれど、とにかく疾走感があって、聴いていてめちゃくちゃに気持ちが良い。途中のタメとかも絶妙だし、今聴いても全く色褪せない、いまだに興奮しちゃう曲である。それから「bowling machine」。この曲はインストなんだけれど、終始ボーリングをしている音がバックに流れている。本来邪魔にしかならないであろう雑音を演出で利用するなんて、なんという男前な発想だなと関心してしまった。それまでインストってオマケ程度のイメージだったんだけれど、その考えを覆された曲である。
他にもこのアルバムには「リリィ」や「笑うしかない」、「スロー」、それから前述した「キャンディ・ハウス」といったお気に入りの曲がてんこ盛りた。ただ、少々残念なのが「キャンディ・ハウス」がシングルとは異なるバージョンで収録されていること。アルバム・バージョンは少しテンポを落としていて、ブルース・ハープにも鋭さかなくなってしまった。個人的にはシングル・バージョンの軽快さ、鋭さがお好みなのでそこがちと残念。まあシングル・バージョンの「キャンディ・ハウス」は、「RUMBLE」というミッシェルさんのアルバム未収録曲集に収録されているので、そちらで聴くことができる。それから、「Baby,please go home ~ wave'33」、曲が終わった後に、延々としたセッションがあって、それがダルいというのもある。まあ締めの曲であるので、ダルけりゃそのまま終われば良いという話ではある。という感じでこのアルバムの不満点はその2点くらい、ほぼ完璧なアルバムである。当時は友達と「スゴい」を連呼しながら何度も聴いたし、いまだに聴くと興奮してしまう傑作だ。
さて、ここまでかなりの熱量でミッシェルさんを語ってきたけれど、実は私、後期のミッシェルさんってほとんど聴いていないのだよね。具体的なアルバムで言うと「ギア・ブルーズ」までで、それ以降はちょっと肌に合わないような違和感を感じてしまって聴くのをやめてしまった。そんなわけなので、私がこんなことを言うのはとってもおこがましいのだが、「ハイ・タイム」はミッシェルさんの中でも、1、2を争うオススメ・アルバムなので、もしミッシェルさんに興味があったら、是非「ハイ・タイム」をいかがでしょうか。ちなみにもう一つのオススメ・アルバムは「ギア・ブルーズ」だ。こっちは聴きやすさと渋さが同居した、これまた傑作アルバムなので、こっちから入っても全然楽しめると思う。まあ、個人的には初期のミッシェルさんはどれから入っても間違いないと思うけれどね。
最後に、チバユウスケ氏の御冥福をお祈りいたします。たくさんの青春をありがとうございました。
俺達に
ロックの生き様
見せるじゃん(ミッシェル・ガン)
季語はミッシェル・ガン。