【第65回】マディ+ウルフ+ボー+ウォルター/ザ・スーパー・スーパー・ブルース・バンド
子供の頃に読んでいた少年漫画で、胸熱な展開といえば今まで強力なライバルだった相手が仲間になるというシチュエーションである。「キン肉マン」でバッファローマンがミートくんを助けるシーンは激熱だった。「ドラゴンボール」でピッコロたんがサイヤ人を迎え撃つために仲間になったときは、とても心強く感じたものだ。「キャプテン翼」でそれまで翼くんのライバルだった若林源三が翼くんと同じチームになったときは、もうこれ一生負けなくねと思ったものである。このように少年漫画にとって今まで敵として戦っていた相手が仲間になるというのは、王道の胸熱展開なのである。
そんな良く言えば胸熱な、意地悪な言い方をすると子供騙しなことをやったのが、このLP「ザ・スーパー・スーパー・ブルース・バンド」である。スーパーは2回言います。これはチェス・レコードの2枚看板にして、ライバル関係にあった「マディ・ウォーターズ」と「ハウリン・ウルフ」、さらには「ボー・ディドリー」、「リトル・ウォルター」まで加えたセッションLPである。他にも「バディ・ガイ」や「オーティス・スパン」なんかも参加しているという正にスーパー・スーパーなごった煮状態である。
子供の頃であれば、こんなスゴい人達が力を合わせたら、「ビートルズ」だって「ローリング・ストーンズ」だって目じゃないぞ!なんて興奮していただろうと思う。まあ、子供の時分にブルースに興味を持って聴いてるってかなり渋過ぎですけど。ただ私ももういい大人である。どちらかというと悪い予感のほうを感じてしまったのであるが。
当時の周りの大人たちも同じように感じたようで、売り上げはいまひとつだったようである(ライナーノーツより)。評価的にもライナーノーツにでさえ「音楽的に完成度が低いという人がいるかも」的なことが書かれているくらいなのであまり芳しくなさそうだ。
しかしこのLPはお祭り的なものなのだ。チェスの大物ブルースマンが一同に会して演ることに意義がある。プロ野球で言うオールスター戦のような感覚で聴けばそれなりに楽しめるのではないだろうか。と思いつつ聴いてみたのですが、やっぱりダメでした。
いろいな人が好き勝手に演っていてまとまりがなく、ゴチャゴチャってなっている感じがしてしまった。顕著なのがマディ親分の「長距離電話」という曲。バックの演奏が明らかにハウリン兄さんの「モーニン・アット・ミッドナイト」で、これどこに「長距離電話」の要素があるんだろ。ハウリン兄さんにとって、マディ親分の曲を弾くことはプライドが許さなかっのかな。
そして1曲1曲が長めの曲が多い。それもなんかみんな止め時を見失ってダラダラ長くなってしまった感じの長さである。先に止めたほうが負けみたいな空気感でもあったのだろうか。あまりのダラダラした長さのため、私は聴いていて飽きてしまった。
という感じで購入して1〜2回くらいしか聴くこともなかったLPであるが、しかし私はチェス・レコードのファンであるので、ネタ的に持っておいても損はないLPであるとは思っている。だって、ボー・ディドリーの「ディドリー・ダディー」を「ディリ・ディリ・ディリ・ディリ・ダーディ!」なんて陽気に歌うハウリン兄さん、ほかじゃ絶対聴けないもんね。
マジやるかー(マディ・ウォルター)
ブルース共鳴(ハウリン)
もー(ボー)ムリだー
季語はブルース。
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