【第89回_JWD?⑦】デイブ・ブルーベック・クヮルテット/タイム・アウト
私のようなジャズ初心者には、とても有名な曲、所謂キラーチューンのような存在は、興味を持つきっかけになって非常にありがたいものだ。「この曲を聴きたいからこのLPを聴いてみよ」みたいなね。それはジャズに限らずどんな音楽でもそうなんだけれど、ジャズは数も多いし何を聴いたら良いか迷うからきっかけとしてそれはとてもありがたい。
一方でそのLPを聴いた際に、キラーチューンに意識が行き過ぎて、それ以外の曲のイメージが残り難くなるという側面もある。これはミュージシャンとしても本意ではないような気がする。聴いている私自身もそれは本意ではなく、もっと他の曲に対しても思い入れを込めたいと思っているのだが、あまりに有名な曲であったりするとなかなか難しいものである。
昔「Mr.Children」の「桜井和寿」さんが「深海」というアルバムを制作する際に、コンセプトに合わないからという理由で「Tomorrow never knows」や「シーソーゲーム 」といったヒット曲を収録しなったという話を聞いたことがある。やはりアルバム全体のイメージを大事に考えるとそういう選択肢も生まれてきますよね。ちなみに私はそんな話を聞いちゃったもんだから、桜井さんこだわりの「深海」がミスチルのNo.1アルバムになってしまった。単純な男だねえ。
さて、そんな一点集中型ジャズLPの代表といえば「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/モーニン」(JWD?③参照)である。このLPは「モーニン」がとにかく有名だ。そしてそれと双璧を成すのが「デイブ・ブルーベック・クヮルテット/タイム・アウト」である。どこで聴いたか知らないが、このLPは「テイク・ファイブ」という曲がとても有名だ。「モーニン」もそうだったけれど、この「テイク・ファイブ」も聴いたことがないって人、この世に一人もいないんじゃないかって思う。
明るめの優しい曲が多いこのLPの中で、「テイク・ファイブ」だけが雰囲気的にもちょっと違っていて、渋くてスタイリッシュな曲である。サックスの奏でるメロディーはもちろんのこと、バックのピアノのリズムもスリリングで聴いていてゾクゾクする。ブルーベックさんに怒られちゃうかもだけれど、この曲だけリピートして聴きたくなっちゃう。こういうときはCDのほうが便利よね。この曲はA面の3曲目に収録されているので、リピートして聴くにはレコードだとちょっと面倒。ちなみに「モーニン」はA面の1曲目に収録されているため幾分楽である。
それからこの曲は5/4拍子で作られていて、それが曲名の由来となっているらしい。この曲に限らずこのLPではほとんどが(全部が?)、変拍子で作られているようなので、聴きながら拍数を数えてみたりもしてみたのだけれど、途中でよくわからなくなって諦めてしまった。まあそんなの意識しなくてもそれなりに楽しめたので、別にそんなに気にしなくても良さそうだ。
「テイク・ファイブ」以外の曲で言うと、さっきも言ったとおり、全体的に変拍子で作られているからか、聴いていて優等生的な雰囲気がプンプンする。特に「トルコ風ブルーロンド」なんかは曲の構成とかも複雑そうで、急にテンポが早くなったりして、一筋縄ではいかないぜという感じである。こういうのって音楽理論とか理解している人が聴くと、また違って聴こえたりするのかしら。私は音楽の授業苦手だったからなあ。
そういえば聴いていてなんとなく思ったのだけれど、LP名の「タイム・アウト」って、変拍子で作曲することによる拍子=時間からの脱却みたいな意味なのかな。そうなるとこのLPもコンセプト・アルバムになるのかもしれないね。
デイブ・ジャズ
時間を操る
ベックリだ
ジャズ・ウィー・ダンス?