OWCモノローグ)弔い人形 by 桐ヶ谷忍+花緒
(女性向けモノローグ)
なるべく私に似た人形を探すのです。
ほんの少しでも似たところがあれば、それで良いのです。
髪の長さだとか、笑顔の引き攣った醜さだとか、目のうつろさだとか、
ひとつでも私に似ているところがあれば、それで良いのです。
いつも簡単に見つかるのですよ?
人形を買う時は、贈り物用に包装してもらうのですけれど、
どなた宛ですか、のし紙をつけて宛名をお書きしましょうか、なんて
店員に言われることがあって、思わず吹き出しそうになるのですね。
だれ宛でしょうか…?
お人形を買ったら、お家に持って帰って、
銀色に蝶結びされたリボンを解いて、
人形を大切に、大切に抱き上げるのです。
人形の薄っぺらい笑顔に微笑み返したりなんかしてね。
ねえ? あなたに私の名前をあげるわ。
それから、私は人形の髪の毛を私と同じように切りそろえます。
赤すぎる唇を白い絵の具で薄めます。
頬紅を差してあげます。
そして、愛しい人形に〇〇(女優名使う)って
優しく呼びかけてね、
ハサミを振り下ろすんです!
胸に!何度も!何度も!何度も!何度も!何度も、突き刺すのです!
(死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね…!!!!)
私はねえ、
死にはしないと約束してしまったの!
あの人に約束してしまったの!
だからお前、私の代わりに死んでおくれよ!
何がどうあろうと生きなければならない私に代わって
死んでおくれよ!
…
そうして、人形のみだれた黒髪を整えてやり、
元通り、包装箱に納め、
仕上げに真っ赤な絵の具をぶちまけるのです。
それからようよう
私はむせび泣きます。
泣きながら菊の花びらを一枚ずつちぎり
〇〇と名付けられた人形に振りまきます。
ごめんね。
かわいそうなことをしてしまったね。
かわいそうに、かわいそうに。
そして私は〇〇がとてもうらやましい。
庭の奥に深く、深く埋めてあげますよ。
さびしがらなくとも良いよ 。
お前に似た、同じ名前の人形が
そこかしこで眠っているから。
了
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