OWCモノローグ)おんど by ふじりゅう、花緒 原案:鳥海真奈美
バーのような暗い空間
女、ギターを軽く爪弾いたりしながら
女 わたしはちょうどよさを愛しています。
ちょうどよさ、です。
あなたを好き過ぎることのないわたし
が、あなたにはちょうどよいのです。
熱すぎる音は苦手です。
熱すぎる音は心臓を焦がしてしまいま
す。
わたしの心臓は熱すぎる音にはついていけません。
わたしや、わたしみたいなひとを置いてけぼりにしないでほしいのです。
冷たい音は苦手です。
冷たい、機械のような音を聞くと、わたしの神経は、たすけて、とこえを震わせます。
神経が震えてしまっては、わたしは前にすすめません。
わたしや、わたしみたいなひとを置いてけぼりにしないでほしいのです。
わたしはちょうどよさを愛しています。
ちょうどよさ、です。
あなたを好き過ぎることのないわたしが、わたしにはちょうどいいのです。
わたしは、聞いているか、聞いていないか、わからなくなってしまうような、バックミュージックを愛しているのではありません。
わたしの音を聞いてもらえませんか。
わたしは好きな曲を聴きながら、好きなあなたのことを考えています。
好きな曲は好きすぎることのない好きな曲で、好きなあなたは好き過ぎることのない好きなあなたです。
わたしは今ちょうどいいです。
わたしはちょうどよさを愛しています。
だから過剰なちょうど良さを求めたりしなくなりました。
だから、いまあなたが、わたしの話を聴きながら、聴き終わった後もちょうどいいなら、あなたとわたしは、等しいおんどでちょうどよく響き合っています。
了